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episode7 デフィネ熱
朝起きて、庭の家庭菜園の手入れと周辺調査を終え、
俺は少女の様子をみてみることにした。
少女はまだ起きる気配がなく、額には大汗を浮かべ
苦しそうな表情をしている。
「デフィネ熱か…」
デフィネ熱は北方の国で流行っている感染症で、
森に生息する虫型の魔物に咬まれることで
引き起こされる。虫は咬む際に体液を注入し、
魔力の流れを乱す。
俺は自分の部屋に戻り、薬箱を取り出す。
デフィネ熱の治療法は確立していて、レビン草の
エキスを投与することで毒素を無効化できる。
俺は薬箱の中から目的の小瓶を取り出す。
「ミーリム貝の粉末も混ぜとくか。」
俺は数年前の研究で、ミーリム貝はレビン草の効果を増幅し、薬の吸収を早めることを突き止めていた。
少女が寝ている部屋に戻ると、俺は小瓶に念じかける。
すると、数秒もたたない内に小瓶から紫の霧が発生し、
少女を包み始めた。
「これでよしと」
数時間もすれば回復するだろう。俺は少女が目を覚ますまで
横で居眠りをすることにした。