episode5 復興開始
俺はジェシカの案内を受けながら、村とその周辺を見て回ることにした。
「ひどい状況だな…。」
ラヌゼルタ村の産業は農業だったようだが、畑は雑草だらけ
農機具は盗賊に解体されたのかバラバラになっている。
また、果樹は枯れ果て生気を失っていた。
「アルの手下が盗賊みたいなやつが多くて、
作物ができる度に奪っていくんだよ。」
悪代官どころかゴロツキだったようだ。救いようがない。
「果樹はまだ命は尽きてないな。コレを撒いてみよう。」
俺は懐から小瓶を取り出した。フタを開け、中の液体に念を込める。数秒経つと、液体がみるみる薄青色のミストに変わり果樹にまとわりついていく。
「これは…」
ジェシカが驚きの表情を浮かべる。果樹はかつての
姿を取り戻し生き生きと新芽を出し始めたのだ。
「緑化の秘薬だよ。元々は砂漠の緑化に開発された
モノなんだが、枯れた植物にも使える。」
ついでに成長促進の魔法もかける。これで明日には実がなっているはずだ。
「キミ、いやリベールは本当に偉大な魔法使いだったんだな。」
一切の虚飾を感じさせない純粋な尊敬の念。どこか
懐かしく気恥ずかしい。
「つ、次に行こう。橋が崩落してるんだよな?」
「そうなんだ。それで、旅人が1人も来ないんだよ。」
「案内してくれ。」
俺とジェシカは村の外に掛かった橋に向かった。
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橋はバーゼインとの国境になっているフェレス川に
かかっていたらしい。
「バーゼインとの交易・交通の主要路だったんだけど、
魔物に壊されてしまったんだ。」
橋の前には大きな足跡が付いている。大きさは50cmほどで相当大きな魔物である事が伺える。
「ゴーレムだな。」
ゴーレムは大型の魔物である。自律して動かず、
所有者の命令によって動く。意図的に壊された事が
うかがえた。
「ゴーレム?そんなの見たことないよ。」
「間違いない。ただ、術者の意図が読めないな。
とりあえずゴーレムの攻撃に耐えれる橋を作ろう。」
そういうと俺は当たりを見回した。
少し離れたところに大きな岩があった。
「ジェシカちょっと下がってて」
そういうと俺は懐から杖を取り出し、岩に向ける。
「えっ…嘘でしょ!?」
岩は一瞬で姿を変え、ゴーレムに変わった。
こっちに向かってゆったりと歩いてくる。
ジリジリと後退りをするジェシカを尻目に
俺はゴーレムを操り、橋へ向かわせた。
「アダプション!」
橋についたゴーレムは俺の声に応じ、橋に変わった。
ついでに魔除と硬度向上を施す。
「これでオッケーだ。」
ジェシカは驚きすぎて疲れたのか、もはや呆れた
ような表情になっていた。