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episode1 田舎スローライフ


「着いたか」


旅の目的地、ラヌゼルタ村に到着した。

小高い丘から見下ろすと村全体が良く見える。

そこはのどかな農村だった。

なだらかなイグレシア山とアグネシア海の間に位置し、

集落の中央には清流が流れている。

となりのバーゼインとのちょうど国境近辺だ。


「まさに隠遁っていう感じだ。」


のどかな雰囲気に満足しつつ、

俺は当面の住処を探すことにした。


村の規模は小さい。

そして、なぜかツタに覆われた空き家だらけだった。


「ごめんください」


トントンと村役人らしき建物の扉をノックする。


「……?」


返事がない。諦めて立ち去ろうとすると…


「村役人ならいないよ」


声の方へ振り返ると、

歳は20ぐらいの女性が立っていた。

肩ぐらいまで伸ばした髪、透き通った瞳、怪訝そうにひそめられた眉。

ほんのり桜色に色づいた唇。

背は高く体型はスラっとしなやかだ。

バラのように華やかな美人である。

王都風の化粧と服装をすればもっと映えるだろう。


「な、なによ?」

「あっ…。ごめんごめん。」


じろじろ見てしまったせいで不審に思われたようだ。

気を取り直して質問する。


「村役人はどこに行ったんだ?」

「だから、もういないんだ。どっか行ってしまったの。」

「どっかって…」


ずいぶんとルーズなことだ。

普通は村ごとに王都から役人が派遣されているはずである。


「困ったな…。」


役人がいないと、家探しや村の案内も頼めない。


「キミは何の用でこの村に来たの?」

「簡単に言うと王宮からほっぽりだされて傷心なので

この村に隠遁しに来たんだ。」


俺がそう言うと、

女性はますます不審そうな顔をする。

まあこんな田舎にふらっとやって来て、

さらに王宮から追い出されたって

いうんだから無理もないだろう。


「怪しいやつだなあ…

なんか王宮の者だったって証拠はあるのか?」

「簡単な魔法なら使えるが」


空に手をかざし、強く念じる。


acquaアックアCadereカデーレ!」


その瞬間、辺りを黒雲が覆い、

大粒の雨が降り出した。


「わ、わ、わ!」


たまらず女性が俺がいる建物のひさしに入ってきた。

雨はしばらく降った後、徐々に弱まって止んだ。

空からは黒雲は消え去り何事もなかったかのように晴れ渡っている。

と、女性がキラキラした瞳で俺を見てくる。


「すごいな!魔法使いだったのか!」


なんだかよくわからないが信用されたようだ。

純粋というのもいいもんだなと俺は実感したのであった。





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