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#1


【岩男:イワオトコ】



 岩は硬く、ゴツゴツしていた。草木は疎ら。鳥は近寄らず、羽の無い虫が時たま彼の腿を這った。彼のゴツゴツした太腿を、己が開拓した道のように這って歩いた。


 孤独だった。孤独が彼の一生だった。孤独という理解者以外に、友達は居なかった。彼は夜、月を眺めた。月は彼の、言わば初恋の相手だった。手の届かない存在だった。たまに、流れ星が月に衝突して弾けることがあった。数年に一度という出来事。それを毎晩、彼は、心待ちにしながら夜空を見上げていた。


 彼は実際のところ、全くの孤独というわけではなかった。たまに、崖の側面に生えるキノコを取りに、人間が登って来ることがあるのだ。キノコは数十年かけて成長する、希少な種類だった。人間はそれを取り、生活のために売った。売られたキノコは卸業者を通じて小売店や高級なレストランに卸され、様々な人間の腹に収まった。

彼はそんな、キノコたちの末路を悲しく思った。何十年と少しずつ、たくましく育つ様を見守ってきたそのキノコが、金と油と胃液に塗れるというのは気持ちの良いことではなかった。

なので時折、人間が崖を昇ってくると、彼は悲しみの混じった叫び声を発した。

「オオオォォォォォ……」

 それで引き返す人間も居たが、ほとんどは不審気な顔をして、辺りを見回して、そのままキノコ狩りを続けた。彼は、そんなことにも慣れっこだった。正面を見据え、夜を待ち。月と星の衝突を思い描いた。


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