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24.特別編 悪夢が続く TS(男→女)注意!

あああ、投稿時間ミスで推敲前のやつがでちゃいました。

 スマートフォンがブルブル震え、アラーム音が鳴り響く。もう少し寝ていたいと寝返りを打つ竜二だったが、三度ほど寝返りを打ったところでようやく起き上がる。

 スマートフォンのアラーム音を止めようと手を伸ばすも、スマートフォンでなく、掴んだのは......


 うさぎのぬいぐるみだった。


「うあああああああ」


 竜二の声ではない、凛とした少女の絶叫が部屋に鳴り響く。

 まだか!まだ夢が覚めてないのか。竜二は頭を抱えうなだれてしまった。ちょうど、うさぎのぬいぐるみと目が合いさらに陰鬱な気分になるが、うさぎの口から何か出ていることに気が付く。


<今日はよろしくね! もうすぐそっちに行くから入口でね イチゴ>


 うさぎのぬいぐるみは通信装置なわけで、不気味なことに口から紙が出てくる。どうやら今日はイチゴと遊ぶ約束をしていたらしい。

 リベールの交友関係不明、というか全て不明の状況でおそらく友人だろうイチゴと接触することは非常に不味い、不味いのだがもう向かってるなら止めようがないのだ。

 どうしたものかと思案する竜二であったが、今更どうしようもないことにすぐ気が付く。

 昨日から着替えも風呂にも入ってないので、黒のレースが付いたワンピースの格好のままだ。着替えをするのも精神力を消費するので、そのまま一階に降りることにした。


 急いで階段を降りると、すでに待っていたおそらくイチゴに声を掛けられる。


「リベールさん!今日はありがとう!」


 何のことか不明だが......


「いや、気にしないでよいさ」


 竜二はリベールらしき口調で答える。イチゴの姿はどこかで見たことがある。星のマークが入った黒の魔女帽子に、黒のミニスカート。黒のレースが付いたハイソックスに、薄紫のマント。

 そう、ドラゴンバスターで会ったこともある魔女帽子だった。プレイヤー名も確かイチゴだ。

 ドラゴンバスターのイチゴと、ここにいるイチゴの関連性はおそらくないのだろうが、見た目が全く同じなのは気になるところではある。竜二は思案を巡らすも、これ以上考えても仕方ないと中断する。


「リベールさん、武器忘れてるよ」


 ダメな子ねーと、イチゴは少しタレ目な瞳を片方閉じて指を口につける。


 武器とな、なんか倒しに行くのかー!竜二は頭を抱えたくなるが、平静を装い、取って来るとだけイチゴに告げた。


 武器は部屋のファンシーな衣装ケース状の家具の中に入っていた。一番目立つ位置に立て掛けてあったのは、漆黒の両手斧だった。おそらくこれは、常闇の斧でドラゴンバスターオンラインでも竜二はリベールに装備させている。ならば、ベルセルクのスキルも使えるかもしれないと心の隅に置いておく竜二だった。


「待たせてすまない、イチゴ」


「ううん、今日は姉さんのためにありがとう」


「いや、協力できることなら。君の姉にも世話になってるからな」


 竜二は平静を装いつつも、内心は心臓がバクバクである。適当に合わせているが、リベールがイチゴの姉に世話になったかは不明だ。


「姉さんの服着てくれてるものね。あたしの家具も使ってくれてるし」


 イチゴの姉が作ったという、リベールが着ているワンピースに目線をやるイチゴ。

 ふむ、ゲーム内と同じであれは、イチゴの姉に当たる人物はメイリンと推測できるが、一言いいたい。


リベール!あのピンクを気に入って使っていたのか!


 竜二は心の中で一人突っ込みを思わずしてしまった。普段のリベールは、どうもあのピンクやら憎きうさぎを気に入ってる様子だ。

 こういうところだけは、ゲーム内の竜二が操るリベールと違うのか。いい加減心が折れそうだ。ため息をつく竜二であったが、イチゴに気づかれる訳にはいかない。

 普段のリベールを装わないと、不審に思われる。どんな罰ゲームなんだ、これは。


「いつも有り難く使わせてもらっているよ」


 竜二はピンクのことで、ハラワタが煮えくり返りそうになるのをグッと堪え大人の対応で乗り切る。


「ありがとう、リベールさん。じゃあそろそろ行こう!」


「了解した」


「リベールさん」


 イチゴが手を差し出してくるので、竜二は不思議そうにイチゴの手を見ると、イチゴから手を握ってきて抱き寄せられた。


「大丈夫、あの時ちゃんと位置登録してるから!」


 竜二がイチゴの手の前で止まってしまったことを何やら勘違いしたイチゴは、少し恥ずかしいそうに竜二に向けてそう言ったのだった。

 何があの時か竜二には全く分からないのだが。


 イチゴの転移魔法で移動した先は、一面のススキだった。空には満月が出ている。何故移動すると夜なのかと突っ込みたいことは山ほどある竜二だったが、満月に映える一面のススキに心を奪われる。この景色は、日本にいては見ることの叶わないものだ。


「リベールさん、急いで......」


 囁くようにイチゴは、リベールに促すと手を取り彼女を引っ張っていく。

 イチゴが焦る気持ちも竜二には分かる。この場所はゲーム内と同じであるならば、「王狼の渓谷」だ。この美しい景色とは裏腹にここは「雷神の王狼」の縄張り。いつ侵入者に襲いかかるか分からない危険地域......

 無言で頷き、竜二もイチゴに手を引かれながら後ろに続く。


 渓谷を音を立てぬよう静かに、しかしできる限り急いで抜けると、終端は崖になっていた。竜二とイチゴは顔を見合わせて頷きあうと、崖を登り始める。この崖の上には確か......竜二はあるアイテムがここにあったと思い出しているが、何だったのか思い出せない。

 ようやく崖を登りきった二人は、目的のアイテムを捜索する。何だったかここにあるアイテムは......もう少しで思い出せそうな竜二の目に、ぼんやりと光る白の花が目に入る。

 白の花は4つの花びらを持ち、中央が薄く黄緑がかっている。雌しべが長く2本中央から突き出ていて、ぼんやりと薄青く光っているのだった。


 そうだ。ここにあるのは、月見草だ。この月見草は、夜になると薄青に光り、とても美しいとアイテムの説明欄にもあった。月見草は、ガーデニングで育てることができないため、バザーでの人気商品の一つになっている。

 これを加工することで、服にもインテリアにも利用することができる。確か色の種類が三色あったはずだ。

 ようやく竜二は月見草のことを思い出せた。


「白を見つけたぞ。イチゴ」


 奴が来るかもしれないので、小声でイチゴに告げる。


「あたしはピンクを見つけたわ」


 イチゴが手に持つ月見草を竜二に向ける。


「あと黄色かな?」


「うん」


 二人が、残り一つ黄色の月見草を探しはじめたその時、凄まじい咆哮が二人の耳を貫く。


 見つかったか!


 この咆哮は聞き覚えがある。これは「雷神の王狼」の咆哮だ。まだ距離はありそうだが、「雷神の王狼」の咆哮は腹に響く。これがゲームとの違い。リアルの「雷神の王狼」はゲームとは比較にならないほど存在感があり、離れていても相当な圧迫感を竜二に与える。

 中身がリベールなら、迷わず「雷神の王狼」へと向かうだろう。しかし、今の中身は竜二だ。咆哮を聞いただけでも足がすくみ、手が震えてくる。


「イチゴ、見つかったか?」


「ううん、まだ......」


 冷や汗を流しながらも、さがすことを中断しないイチゴに、竜二は覚悟を決めるしかなかった。イチゴが黄色の月見草を見つけるまでにもし奴が来たら粘れるだけ粘ろう。


「イチゴ、もし奴が来たら食い止める。転移魔法の準備だけは頼む」


 竜二はイチゴに告げると、背中の常闇の斧を抜き放ち、警戒態勢を取るのだった。ただ、足の震えが止まらない。そらそうだ。竜二はリベールではない。おそらくリベールならば「雷神の王狼」を倒すことは容易なのだろう。

 いつ竜二は元に戻れるかは分からない。ただ、ここで逃げてはリベールに戻った後にリベールが困る事になるだろう。イチゴは完全にリベールを信頼している様子で、冷や汗をかきながらも「雷神の王狼」へは全く警戒していない。

 咆哮が聞こえた時点でイチゴに逃げる提案もできた竜二であったが、「雷神の王狼」への恐怖のため、そんな簡単な選択肢も思い浮かばなかった。


 一つ恐怖心を消す可能性がある。竜二はそれに掛けることにした。それは......


「バーサーク」!


 リベールの体が強く緑に光り、ボンヤリとした湯気が上がり始める。バーサークの効果か精神が高揚し、恐怖心が薄れていく......と同時に竜二の意識も遠のいていく......


 竜二の意識が途切れる直前に見た光景は、視界に「雷神の王狼」が入ったところまでだった。



 竜二の意識が途切れ、リベールの意識が覚醒する。リベールは何故ここにいるのか分からなかった。しかし、自分は「バーサーク」状態であり、体が薄く緑に光っている。どんな状況か不明であるが、生粋の戦士であるリベールの直感は告げている。

 今は危機だ。危機に対処しろと。


 リベールは、常闇の斧を上段に振りかぶり、「雷神の王狼」と一気に距離を詰める......リベールに不安は全くない。「雷神の王狼」なら何度も倒している。そう独白しリベールは、「雷神の王狼」へ斬りかかったのだった。

これにて悪夢編終了です。ある意味、落ないほのぼの会でした。

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