9話 教会へ?
続き投稿致します。
・・・夜、自室にて
「・・・と、なるんだけど分かった?」
「サッパリ分からん。どうせ、雄と雌が居るだけじゃろ?ヤリタイ様にやればいいんじゃ。」
指で輪っかを作って付き通すジェスチャーは止めろ。消されるだろ!!
部屋には、タマと2人で今後の事について話しをしていた。
当然、タマには一回外に出て貰ってから二階の部屋まで来て貰った。
何故かって?
それは、両親が家に居る時の暗黙のルールだからだ。
話を戻そう。
どうやら、看護師・アンドレ さんが拾ってくれた物は、
タマから貰ったオーパーツと同じ。だけど違う・・・。
うーーーん。説明が難しいんだよね・・・。
僕も良く分からない事があるから細かい話は今回は割愛して簡単に説明する。
タマが僕達の世界で具現化できるほどの霊力を得た。
以上。らしい・・・詳しくは分からないんだけど。
僕の霊力も大分増加された・・・らしいけど、実感が全く無い・・・。
優斗は、自身の手の平と甲をヒラヒラとひっくり返してみて見るが特に変化は無かった。
あえて何かあったと言うならば、病院や墓地などその類の場所に行くと途端に不愉快な気分になる様になった。
霊感が高くなった位で、姿が見える訳でも無い・・・。非常に微妙だ・・・。
タマ曰く、僕の今現在の状態だと霊力の制御までは出来ていないらしい。
実際、聖域には昨日から入った訳だし訓練もこれから受ける予定だ。
っと、話が大分脱線してしまったが元に戻そう。
結局の所、タマ曰く。
「わしの事を呼び出すだけの霊力を手に入れたのだ。誇りに思うが良いぞ。わはははは。」
だ、そうで、腰に手を当てて何故かドヤ顔で嬉しそうにそう言っていた。
『そ、そうだね・・・』
「ん?それが、手に入れた宝玉か。ちょっと貸してみろ。」
タマは、僕に近寄って来て手に入れた2つ目の玉をしげしげと見てきた。
って、顔が随分近いぞタマ。
顔を玉から放しても僕の顔の近くに来るタマ。
完全に僕をからかっているに違いない。
しかし、それも玉の状態を見てからは一変した。
「むむっ。かなり守護者の力が弱っておるな・・・。
優斗、これは一度ワシが預かっても良いだろうか?」
『・・・いいよ。』
「しかし、こう言うのが手に入ると分かった以上、
霊力の制御の鍛錬は行わなくてはいかんな。」
『まだ何も教わっていない・・・(ボソッ)』
「ん?何か言ったか?
いつもの耳じゃないからのう。お主がわっちと添い寝したいと言っておっても聞こえぬな。」
くくくっ。初奴よのう優斗。やはりお主も雄じゃのう。
などと半分は冗談だが脳殺しながら悩ましい目で優斗を見るタマ。
しかし、当の優斗は・・・
まずい。睨まれた。やっぱり聞こえていたのかな・・・・
内心ビクビクしていた。
『い、いえ何も。』
「む?・・・そうか、仕方がないな。
それなら楽しみにしておれ!!特訓は、スペシャルコースで準備してやるわい。」
と、言うことで今後は、聖域に行って霊力の制御を覚える訓練をする事になるらしい・・・
って言うか、スペシャルコースってなんだ?いつそんな言葉を覚えたんだか・・・。
って、やっぱり相当不機嫌だ!!これは、さっさと寝るに限るな・・・。
話もひと段落したしタマも不機嫌なので、とっとと寝ようと思っていた優斗。
ふとんの中に入るとタマが、
「のお、主よ。」
『ん。何?』
「そういえば、昼間はなしておった。ガッコウとは?なんじゃ?」
『あぁ・・・。まぁ、勉学に励む所・・、といった所でしょうか。』
「ふむ、ベンガクとは知識を蓄える様な事を言うのか?」
『そうですね。その認識で大凡は合ってますね・・・。』
「ほほう。そうか、そうか。」
『?』
タマからめずらしく質問が出てきた。
過去に似たようなところに行った事があるのだろうか?
学校に興味を示したようで、質問の最中も何かを企んでいるかのような、
怪しく笑うタマが妙に気になったが・・・。まぁいいか。
それより、今日一日その巫女姿で生活していたな・・・。
完全に僕は、巫女萌えだと思われただろうか・・・と、別の所も気になった。
今度からは、僕のお古など着させるようにしよう。そうしよう!!
そんな僕の視線に気がついたのか、
「くふ。主よ、どうした?
やっぱり。わしと添い遂げたいのか?」
クネクネ動いてるタマは、僕を【明らかに】からかってるようにしか見えない
『ははは、じゃあ僕は寝ますね。明日から学校だし。』
「あっ、こら待て。」
乾いた笑みをこぼしつつ布団にサッサと"フェードイン"する。
すると、よっぽど疲れていたのだろう流石に直ぐにに眠気に襲われた。
そして、薄れゆく意志の中で "ゆらゆら"と、揺らめく何かの夢を見ていた。
そして、僕に誰かに話しかけられる夢を見た。
目の前の女の子の手を握って、俺は何かを言っていた。
だけど・・・。全然、相手の顔が見えない・・・。
でも、その子は涙を流しながら頭を振っている。
そして、俺の元から走って離れていく・・・。
『・・・・・・・・!!!』
俺は・・・俺は・・ただ、ただ立ち尽くすだけだった・・・
-優斗の退院から1ヶ月後のある日
朝日が眩しくて、眠りが浅くなる。
目を擦り欠伸と伸びをしながらゆっくり起きると既に日は昇っており明るい。
「主?おはよう。」
『おわっ!!』
"ヒョコ"っと、タマが僕の顔を覗き込んできた。
ちょっと、悲しそうな顔をして・・・。
『な、何かあったのか?タマ。』
僕が心配そうにしていると、
「うっそ。ひっかっかった。」
『・・・・・。』
「おおい、主や。どうした?」
『・・・・。』
「なんじゃ。どうせ、ワタシの顔じゃ物足りんって言うんじゃろ・・・」
違う違うんだ。笑うタマに不覚にも、
かわいい・・・・。って思ってしまったんだ。
優斗は照れていたのだ。顔も赤かったかもしれない。
そんないつもと違う態度を見たタマは、次の瞬間には、"ニヤリ"タマの口角が上がっている。
「からかうとかわいいのう。主や。」
からかわれていた・・・全然かわいくない・・・。
むくっと起きて、サクッと仕度をする。
「あっ、ちょっと待て・・主。ぬしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
『おはよう。』
リビングに下りて両親に挨拶する。
すると・・・
「また、タマちゃんと喧嘩?ダメよ。女の子は優しくしてあげないと。」
このやり取りがここのところ、ほぼ毎日の出来事だ・・・。
「おじさーん。おばさーん。おはよう~。」
「おぉ、タマちゃんおはよう。」
「タマちゃん。おはよ~。優君に苛められたの?」
「そうなのじゃ。ワタシが起こしてやったのに、ぶ~垂れて部屋を飛び出しおった。」
「優。それは、よく無いな。タマちゃん随分前から来てくれてるんだぞ。」
『ふ~ん。』
それ、知ってます。
何せ、僕の部屋から出勤しているからね。
それにほぼ、365日/24時間 僕と一緒ですから・・・。
でも、とうさん達もタマの存在にずいぶん慣れてきたみたい。
と、言ってもかあさんは最初から慣れてた感じだったが・・・。
因みに名前は当然別名を考えた。あだ名でタマちゃんと呼んでるので、
遜色無さそうな名前と言う事で【タマミ】という事にしておいた。
何そのダサい名前と言われそうだが、仮の名だからね。
しかもタマも気に行ってくれてるから良いんです。
まぁ。しかし我が家でほぼ僕の彼女枠に収まっているタマ、
かあさんはいつも楽しそうだった。
そんな、タマが(公に)表れるようになって実に1ヶ月がたった。
これまでの事を含めてザッとおさらいすると、
これまでの間、日中は学校へと登校し、
下校した後は出来るだけずっとタマから修行を受けて過ごしていた。
習っていた内容は、霊力の使い方と制御方法だ。
最近は、修練のお陰か病院など負の力が溜まり易い場所に
近づいてもそれほど不快に感じる事は無くなった。
そして、そのせいなのか分からないが、
霊力が使えるようになった時と同時に【同じ夢】を良く見るようになった。
内容は何と言うか、とある人物の記憶に近いのか、
具体的な夢を見るようになった。
そして、1カ月前に現れた、
モザイクの変な連中も何もして来ていない。
タマによると大人しいのではなく
虎視眈々とこちらの隙を狙っているという事らしい。
何でも、僕が持っている【宇宙が見えるビー玉】(オーパーツと命名)は、
1つは、タマの物でもう1つは奴の物だったらしく結構
重要なアイテムらしく意地でも取り返したいらしい。
「何故?置いていったのか・・・不思議なやつじゃのう。」
『置いて行ったというより。落したというのが正しいのでは?』
「ふむ。正確には、そうじゃろうな。しかし何故?取りに来ない?」
『た、確かに。気になります。』
常時携帯している位大事な物であれば、
すぐにでも取りに来そうなものだけど?確かにゆっくりなのは、非常に気になる。
しかし、今回の霊力が極段に上がったのは、
タマに貰ったオーパーツと病院で拾ったオーパーツの影響が強い事が分った。
しかも、タマ曰く【オーパーツ】はこの世界に幾つか存在しているので、
今後はそれらの調査も視野に入れて活動する必要がありそうだ。
タマと2人情報交換をしていると、後ろの方から気配を感じる。
「優斗さん。おはようございます。」
ふわっとした声が聞こえてきて、後ろを振り返るとそこには笑顔のゆいさんが立っていた。
『おはよう。ゆいさん。』
笑顔で返す。
ゆいさんも家での生活に慣れてきたようだ、我が家の両親ともとても仲がいい。
が、実はタマとはあんまり仲が良くない。一度も2人が話をしているのは見た事がない。
ゆいさんが下りてくるとタマが無言のプレッシャを放ちリビングがたちまちアイスリンクの様に凍り付いていく。
瞬く間に居心地の悪さが広がっていく。ちなみに両親はすでにリビングに居ない。
『お茶を持っ「ここに置いておくね。」』
母さん・・・。こう言う時だけ仕事が早いよ・・・・。
僕をここから出させないつもりなのだろう。
キッチンの方を見ると父さんと母さんがこっちを覗いて笑っている。
『ゆいさん。今日は、よろしくね。』
この空気を壊そうと何とかがんばる。
声を掛けられたゆいは、ほくほくした笑顔になり。逆にタマは目を丸くして固まるっている。
今日は、待ちに待った教会内に訪問する日なのに、行く前からこれで果たして大丈夫なのだろうか?
優斗はたまらずため息を漏らすとタマとゆいの2人から睨まれる結果となった。
優斗は、バツの悪そうに眼を逸らすと今日行く場所のおさらいをする事にした。
――エーワンゲリウム教会
【福音】を冠する教会らしい。
ゆいさんの祖父さんが誘致し外国からこの地にやって来たらしいが、
町の中心街に教会があるのも観光都市の街づくりを参考に行った結果らしい。
長谷川のおじさんと司教が旧知の仲という事も観光というキーワードからだろう。
お陰で今回の見学が実現した訳だけど、ゆいさんが見たいと言った時点であらかたOKだったらしい。
道案内の予定だったので、中には入るつもりが無かったのだけど、
司教さんが是非と言うので参加する事になった。
まぁ、ゆいさんの祖父さんが何か後世に残す情報が無いかと思ったのも本音だけど。
まっ、情報の整理はこんなものだろう・・・
タマを含めみんなで朝食を取った後、各人準備を整える。
30分後にリビングに集合のスケジュールを建てて、自室に戻る優斗とゆい。
タマにはリビングに待機させることも忘れない。
下手に僕についてきて他の皆から白い目で見られない様にするためだ。
そもそも、意識が繋がっている2人にはテレパシーの様な事も出来るので、
四六時中一緒にいる必要性は全くないし、
情報共有だとしても聖域に行けさえすれば直接話し合える。
だが、優斗は知らない。
タマの行動は優斗を狙う女性陣の間から少しでも優位に立つようにという努力の賜物であるのだ。
自室で着替えをしている優斗は1人頭を捻るばかりで、本当に救いようがない。
着替えてリビングに戻ってきた僕は、
長谷川おじさんに入り口で渡してといわれた【手紙】を準備しているとタマが近づいてきた。
「なんじゃろう?その、書簡から懐かしい感じを受ける。」
教会の人と会えるようにおじさんが用意してくれたもので、
どうやら司教の直筆の手紙らしいが・・・。
まじまじと手紙を見るタマからは、
懐かしいという感覚と何でだという懐疑的な感情が色濃く映りその目がいつもより妖しく光っていた。
優斗は、手紙に集中しているタマを横目に何かオーパーツの類でも感じたのかと、ただタマを見守っていた。
リビングの入り口付近から2人を見ていたゆいは、
2人が恋愛話をしているように見えたので完全に出て行くタイミングを見失っていた。
その後、優斗が気配に気づきゆいも無事誤解だと分るのだが、
それは約束の時間から優に30分は過ぎてからの事である。因みにタマは知っていたようで、
鼻をフフンと鳴らしてご満悦だった。
余談だが、今回優華だけが参加する事になり。
前回の反省があるため少し早く待ち合わせ場所に向っており。
草薙勢が遅れた分だけ待たされる羽目になった事は言うまでも無い。
教会へ行くメンバーは、【僕、ゆいさん、タマ、優華】の4人で行くことになっていた。
奈菜は、長谷川家に最近来た親戚の人の世話が忙しいようで、
この1ヵ月は学校でもあまり話しが出来ていない。
(忙しいとはいえ、最近付き合い悪いんだよね~。)
優斗は何故かイライラしていた。
それが恋だとは言わないが、彼女に対しての何らかの感情があることは確かであろうが・・・
それが、優斗には気が付かない。
そして、タマが無駄に地球の温度を数度下げた事を・・・。
また、ゆいが"きゃあきゃあ"騒いでいた意味を・・・・。優斗は全く知らない。
しかし、急にゆいさんが呟く
「教会へ行くのは、初めてと仰ってましたが本日はよろしいのですか?」
『え?あぁ、両親があまり教会に行きたがらないので、
そのまま僕も行かない環境になってます。』
何となく優斗の放つ空気を察していたゆいは、さり気に話掛けて空気を変える。
タマは、特に何も言わなかった。
気がつくと待ち合わせ付近に着いている。
「遅いのよ!!この朴念仁!!あたしと待ち合わせする時は、
1時間前に待ってなさいよ!!」
どんよりとした目付きで、待ち合わせ付近から近寄ってくる優華。
約束の時間は、ゆうに1時間近く過ぎている。
『ごっ、ごめん。ごめん。』
当然、1時間も待たされれば誰だって普通不機嫌になる。
が、1時間前に待っていろという意味は分からない。
そして、ずっと待っていてくれた優華に確かに申し訳ない気持ちになるが、
何も外で待っていなくてもいいのにとも思ったが、
せっかくの気持ちに水を差すので黙っておく。
「お腹へった。」
『え?』
「お腹減ったー。」
「ふむ。優斗、優華が待っていた埋め合わせは必要じゃと思うのだ。
はんばーがーとやらがあるじゃろ?優華よ、そういうもので済ませるでも良いのか?」
「うん。別にいいよ。」
『はぁ。分かったよ・・・。』
「ごち~。」
「ごちそうさまじゃ。」
「ご、ごちそうさまです。」
『えっ?』
元々、町の中心部に立っているため多少寄り道してもそうは遠くないので、
少し食べ歩きしながらなら向かう事にするが、
全員分おごるとはだれも言っていなかったはずだが!?
「むふふ。やはり、はんばーがーはうまいのう。」
「ねー。」
ジャンクフードを口いっぱいほおばるタマと優華、ゆいさんは控えめながら食べている。
教会の向かいの公園で食べているのだが、たまに外で食べるのも悪くない。
なかなか良い感じにお腹もいっぱいになったので、目の前の目的地に足を進める。
『じゃあ。そろそろ行こうか。』
「は~い。」、「うむ。」、「は、はい。」
今度こそ目の前の教会を目指し歩き出した。
お読みいただきましてありがとうございます。