6話 箱庭の友達 前編
続き投稿致します。
"パンッ"
タマが拍手で打つと庭にある池がまるでスクリーン投影される。
そして、映し出された所に映し出された映像には・・・
な、なんと・・・。
僕が聖域に来る前の姿が映し出された。
何たる不思議・・・。
僕は映し出される画面にくぎ付けになる。
・・・・過去の映像・・・・
"ドンッ"
『あ、すいません。』
(???はて?勘違いか?ゆいさんも特に反応してなかったしな。)
『あ、あれ?』
「ゆ、優斗さん。大丈夫ですか!?」
『・・・。』
僕は、次の瞬間 "カックン"と、その場で倒れてしまった。
どうやら僕はここで気を失ったらしい。
それに合わせて池の画面もブラックアウトする。
うおぉおい!?大事な場面が良く見えないってどういう事?
しかし、内容は続いているらしくゆいさんの声だけ聞こえて来る。
「もう少し、がんばって。」
-ズリズリ・・・・
何だか引きずられている様な気がする・・・。
ゆいさんが引きずってるのか?
「とにかく、ここで休ませないと・・・。
ごめんなさい。私の膝枕で申し訳ありません。」
映像がブラックアウトしていてどんな状態なのか・・・全然、見えない。
―――――――ザザッ、ザー
スクリーンが砂嵐の様に何も映らなくなった。
『ちょ、ちょっと。タマ!? 急に見えなくなっちゃいましたよ?』
池を〇ザイルダンスする様に色々な角度から見るが、スクリーンは2度と動く事は無かった。
「知らん!!動かんのじゃ。」
って、言うわりに直す気すら無いですよね?
僕がタマを見ると不機嫌な顔をして腕組しているタマが、明後日の方を見ながら腕組している。
しかも、若干面白く無さそうな顔をしている。
「ちっ・・・。あんな小娘がどこが良いんじゃ?」
タマは、爪を噛みながら"ブツブツ"と呟きながら一人の世界に入っていた。
ちなみに帰る方法は・・・しらない。
『あ、あの?タマ?』
「なんじゃい?」
『そろそろ。戻りたいんですが?』
「なんじゃ。わっちよりあの小娘の方が良いんじゃろ?」
『は?』
「お前。あの女の所に帰るんじゃろ!!」
『え?
いや、戻らないと警察とか呼ばれて面倒くさくなると思ってですけど・・・』
「本当か?嘘じゃろ?」
『えっと・・・。まず、【あの女】って誰の事でしょう?』
タマがしつこく女、女って言うんだけど・・・
誰の事を言ってるのか分からない?
それより、早く帰らないと救急車とか警察とか呼ばれちゃうんじゃない・・・それ結構恥ずかしいよね。
「・・・。」
『・・・。』
「・・・ほ、本当か?」
『はい。警察とか救急車とか呼ばれたくないだけです。』
上目づかいで僕を見るタマ。
つい先ほどまで能面みたいな顔だったのがウソみたいに今は少し上機嫌だった。
帰り方は簡単だった。「そこの池に飛び込めば帰れるよ。」と、あっさり教えてくれた。
なんと単純な・・・
と、言う事で池の前までやってくる。
社の上からタマがこちらを覗きこんでいた。
「優斗・・また、来るんじゃぞ・・・。」
『えぇ。また、来ますよ。』
「・・・るよ・・・。」
『え?何です?』
「何でもないわ。はよ行け!!」
寂しそうに笑うタマは不謹慎だけど、ドキッっとしてしまう。
あの寂しい笑顔・・・・、いや勘違いかな。
何か思い出し掛けたが今はそんな時間は無い。
僕は、意を決して飛び降りる。
タマに笑顔で手を振りながら・・・。
・・・・・・。
・・・。
<プププー、ブオー、ザワザワザワ>
池に飛び込んだと思ったらすぐに耳に慌しい音がたくさん聞こえてくる。
『う、うーん。』
「あっ。気が付きました?」
目を覚ますと僕はまだ、膝枕して貰っていた。
『うーーーん。ここは・・・』
「よ、よかった・・・。」
ぽたぽた、頬につめたい何か当たる。
(?)
ぼやぼやする目を擦りながら目を開ける。
すると、半泣き状態のゆいさんが僕に抱きついてきていた。
(うぉ?)
覆いかぶさるように抱きついてくるゆいさん。
そういえば膝枕して貰っていたのでした・・・。
安心させるように頭を撫でる。出来るだけ優しく・・。
(やれやれ、別にたいしたこと無かったんだけどね。)
タマの事を思い出しながら、心配掛けてしまった事を申し訳なく感じてしまう。
抱きしめゆいさんをなだめていると、丁度反対側から物凄い視線を感じる。
その、強い視線の方に目を向けると・・・ものっすごくどす黒いオーラを噴出した塊がこちらを見ていた。
その姿に一瞬"ビクッ!!"っとなったが、どうしようもない・・・。
ゆいさんは全く離れる気配が無かったからだ。
その後、泣き続けるゆいさんと、黒いモンスターに成りかかっていた奈菜をなだめていたため。
公園に行く事は出来ず家路に着いた。
・・・何だか、疲れたな。
・・・夕方
『ふぃ~。』
ため息をついて窓を見ている。
今日も夕日が眩しいぜ!!
あの後、優華とも合流したのだけどゆいさんと奈菜の事を見るなり。本日の出来事を説明させられた。
その大本の理由が、僕が急に倒れた事であるのだが、説明が難しい。
(神様に呼ばれてましたって言ったら川の近くまで行ったと勘違いされてしまうだろう。)と、言うことで何も言わずに黙っていると・・・
何でか分かりませんが、病院へGo!ですよ・・・。
僕が倒れた話を父さん達にしたら、念のため検査入院はしたほうが良いという事になった。
僕は大丈夫だと主張したのだが、当然却下された。
実際、大丈夫なんですけどね・・・。
まぁ、最終的にゆいさんが
「優斗さんに何かあったら、心配です!!」
これを涙目で睨まれては何も言えない。
だって、こんなにかわいい妹に言われたらねぇ。
って、いつから妹になったんだか・・・
でも、何だか分からないけど、妹なんだよなぁ・・・
と、言う事で僕の検査入院が確定し今、病室で夕日をじっくり堪能していた。
病院に着くとよほど暇だったのか、直ぐに診察してくれた。
更に頼んでいないのに、スペシャルコースで検査してくれるらしい・・・何と言う無駄なサービスだ。
そして、診察が終わり早い時間から病院のベットの上転がされているのだけど・・・。
正直、暇で暇で仕方が無いので今日の出来事を半数してみる。
上着のポケットの中に入っている石を取り出す。
石を覗いて見る中に何かが写っているようだけど薄暗く今はまだ見えないようだ。
なんで、こんなに珍しいモノを僕に持たせてくれたんだろう?
本来ならゆいさんが持つべきものなのだろう。
しかし、タマの所へ行くにはこの石が必要なのではと推測している僕は、もう暫く持っていよう。と、心に決めた。
ふーむ。オーパーツとでも呼ぶか・・・
優斗は、オーパーツを眺めながらタマの事を考えていた。
しかし、タマにはどこかで会った事があるような・・・?
でも、確実に声は聞いた事がある気がするんだよね・・・?
オーパーツを手にして、ゆいの時と似た様な、違う様な感覚をぼんやり感じていた。
"ボー"っと考え事をしていた所で声を掛けられる。
「き、きれいな石だね・・。」
声を掛けられて "ビクッ"と、なった。
「あ、ご、ごめん。」
声がした方を見ると・・・。
体調の悪そうな少年がベット越しにこっちを見ていた。
どうやら、僕の手に持っていた石が珍しいようだった。
『い、いや。急だったんでビックリしただけです。あっ、僕、草薙優斗って言います。』
ベットに腰掛けて隣の彼に声を掛ける。
「あっ。僕は、鉄 裕樹です。ごめんね。急に声をかけちゃって・・。」
ベットから無理に体を起こそうとする彼を静止し僕が彼に近寄り握手を交わす。
その後、僕は裕樹君と色々な話をした。
彼は、難病に侵されていたそうで長いこと外に出れなかったという事を聞いた。
なので、僕の話は色々面白いらしい。私生活の事、旅行した事、友人と話した事、何でも刺激になるらしい。
今まで、隣に人が来なかったのか聞いてみると、「同じくらいの年の人が来たのは初めてだよ。」と、返答が返ってきた。
どうやら、長期入院患者専用の病室に居たらしく最近こちらの病棟に移ってきたんだとか・・・
「あっ、ごめんごめん。僕の話しするとどうしても暗くなっちゃうんだよね。」
終始笑顔の裕樹君に年を聞いてみると「今年、二十歳だね。」と、返答が帰ってきた。
年下にしか見えないのに年上だって事にビックリする。
(ち、中学生かと思った・・・。)
「中学生だと思ったでしょ?」
『!!』
「あはは。良いんだよ。今の病気を発症してから一度も外に出てないから・・・。」
屈託なく笑う彼に何故か心が温かくなるのを感じる。
話せる内容は何でも話してあげようと思う優斗であった。
・・・深夜夜も更けて
裕樹と遅くまで話をしていた。
今通っている学校の事、町の工事の事、新しく始まったテレビの事などなど。正直、ジャンルは問わない。
裕樹は、これまでネットやテレビで知識は得ていたためニュースやエンタメなどは比較的詳しかった。
どちらかと言うと情報と言うよりは、海の匂い、草木の匂い。人の反応など、他人と時間を共有する事こそ、
彼の求めているところであった。
謙虚に話す裕樹。実際、彼にはユーモアがあり、知的で悪戯好きだった。
そして、感性が豊かだった。優斗も他愛もない話ばかりしていて全く飽きないのは恐らく初めてであった。
途中、看護師の見回りの旅に何度も叱られたが、看護師さんがいなくなればまた話をし続けていた。
きっと、看護師さんも分かっていたのだろう。裕樹が本当に嬉しそうに話をしていた事を・・・
だから、皆どこか嬉しそうに叱っていく。
2人が"ハッ"と、気が付いた時にはすでに全フロアーも消灯されていた。
ちょうど、話に一区切りついたのでトイレ休憩を入れる事にした。
『ちょっと、トイレに行ってくるよ。』
優斗は、ベットから立ち上がりトイレへと向う。
「いってらっしゃい。」
裕樹もすでに気を使ったりしていない。
今や昔からの親友だったのではないかと思う位、仲良くなっている。
あぁ、久しぶりに楽しいな・・・。
裕樹にとって気さくに話をしてくれるだけでもうれしかった。
個別の部屋しかいたことが無かった裕樹は人とここまで長く関わる事自体初めてなので、
ワクワクと心が高揚しているのが分かった。
自分の残り時間が少なくなって来た事で・・・
初めて聞き入れてもらった他の人との相部屋。
その相手が優斗である事にこれほどまで神に感謝したことは無かった。
帰ってきたら次は何を話そうかと言葉を考える。
そうした考えを持った事すら楽しいと思える幸せの時間だった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・・ちょっと、帰ってくるのが遅いなぁ?
考え事をしていたから中々気がつかなかったが、時計の針は有に30分は経っている。
もう少し経って帰ってこないようなら念のためナースコールを押そうと手を伸ばしていた。
裕樹が優斗を気づかっていた少し前、優斗はトイレを済ませ部屋に戻ろうとしていたが、
強い眠気に襲われて、その場でフラフラとよろける。
-キーーーン
耳の奥で何か音が響いたような感覚を受ける。
これは、昼間に駅の近くで感じた感覚と似ているが、昼間のそれと比べて不愉快な感覚が強い。
意識が保てなくて、目の前の視界が霞んで今にも崩れ落ちそうになる。
何とか気合で意識を保って洗面台まで進む。
顔でも洗って意識を戻そうとしたためである。
ふと、鏡を見た瞬間・・・
そこには何かが立っていた!
僕の後ろに立っている存在。
まるでこの世界に表現する方法が無いからなのか、ステルスでは無いがモザイクに掛かったような感じで
はっきり理解出来ない。
『だ・・・・れ・・・?』
一見、精神的に追い込む系のホラー映画の様な感じともとれるが、
優斗にはそれが亡霊の類で無い事が何故か分かった。
そして、そいつの狙いが僕のポケットに入っているオーパーツが狙いである事も何故か分かった。
まぁ、単純な勘ではあるが
だれか呼ぼうと声に出そうとするが、
洗面所に突っ伏するように僕の意識も切れてしまった。
・・・
気がつくと、タマの御前の洞窟に居た。
(あ、あれ?また来ちゃったの!?)
直ぐに理解が追いつかなかった。
タマは急な来訪者に気がついたのか、
<なんじゃ、お主。また、来たのか?>
頭の中に話しかけてくる。
何となく身の危険を感じたので、
急いでタマの御前まで足を急ぐ事にした。
タマの御所に赴き先ほどの覚えている限りの内容を説明する。
「ふむ。少しばかり危ういな・・・。」
僕の説明の間、じっと目を閉じて静かに話を聞いていたタマが全てを聞き、
一呼吸置いた後に静かに語りだした答えだった。
優斗の考えと言うか勘に近いのであろうかとっさに感じた感覚は合っていた。
タマの見解とは少し違ってたのだが・・・
しかし、改めてタマから宣告されると意味の厚みが変わってくる。
「そもそもがじゃな・・・
普通に物騒な話しじゃがお主は気にならんのか?」
ちょっとしか付き合いが無いが、理解したことがある。
タマが僕を"お主"と呼んでいる時は機嫌が悪い。
『い、いや~。幽霊とかあんまり信じないので、
見間違いかな~。程度しか思ってませんでした。』
「はぁ~、肝が据わっておるのか、
何も考えておらんのか。いささか心配じゃな・・・。」
呆れた顔で僕を見つめるタマ・・・・結構、顔近いですよ。
僕と顔が近い事に気が付いたのか、勢いよく離れて行ったタマは
仕切り直していた。
「ふ、ふん。まぁ良いわ。
問題というのは、お前の霊力が相当高まっておる。
仮説じゃが、今話に合った者に接触した事によって、
力が解放されたのかもしれん・・・。」
僕は、思いっきり疑問符の付いた顔をしていると、タマは苦笑いし説明してくれた。
「確かにお前が初めてこの場所に来たときはわしが招待したんじゃが、
今回に関しては無意識かもしれないが、自らの力でやってきた・・・。」
『へ?』
優斗は、突然の出来事でいまいち理解が追いつかない。
"パンパン"
優斗の事はほおっておいて、池に向かい拍手を打つタマ。
それと、同時に池のスクリーンに映し出される現在の映像。
『えーっと、どういう状況なのでしょう・・・』
確かにモザイクのかかった様な得体の知れない何かが、
優斗の周りをグルグルと回っている様子が映し出されている。
その様子を伺っていると、胸元に入っているオーパーツが輝いている事が見えたので、
恐らくその力のおかげで僕自身に手を出すことが出来ないようだった。
「一応、昼間に加護を授けたつもりじゃったが・・・こんなに早く嗅ぎ付けるとは。」
タマの表情は硬い。
「なるべく急ぐ必要が出てきたな・・・。」
目の前の猫耳美少女から、白いオーラが吹き出る。
「ふん!!」
"パンッ"
タマが手に持つ扇子を自分の手に打ち付ける。
すると、白いオーラが火の玉のように飛び出し、
池越しに画面に映った。敵に向かって襲い掛かっていた。
「ちぃ!!」
「む!?こ、こいつは?」
タマが飛ばした火の玉はモザイクがかった敵を焼いたが、
倒すまでには至らない。
むしろ、タマは別の何かに気づいたようで火の玉を途中で消してしまった。
怯んだ敵は、もう一度僕の体を探ろうとしたようだったが、
遠くから看護師さんの声が聞こえる。
「草薙さ~ん!、草薙さ~ん!!」
「ちっ!!」
どうやら、モザイク敵はこれ以上無理強いはせず、逃げていった様だ。
僕は色々聞かないといけない様だ・・・
タマに話しかけようとしたが、先に言葉をかけられてしまう。
「取りあえず上手く行ったようじゃな・・・。
少し考えたいことがあるため今日はもう帰るんじゃ。」
そう一言、呟くとタマは社の奥に消えて行った。
僕は、1人池のほとりまで元の場所へと帰っていく。
どうやら、次回は色々聞く事がありそうだ。
裕樹も心配していると思うしとにかく帰ろう。
『ありがとうございました。また来ます。』
誰もいない社に向かって、頭を下げて聖域を後にした。
お読みいただきましてありがとうございます。