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神前家の後継者【休止中】  作者: 縁側の主
序章 ~お主は後継者に選ばれた!!~
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5話 謎の美女

続き投稿致します。

 

 今、ゆいさんと一緒に奈菜達を待っている最中である。

 待ち合わせ場所は本日の目的地である【丘の上の公園】とは真反対側でこの町の駅である。



 何で、そんな無駄な事をしているのか?と、思う人もいると思う。

 ぶっちゃけた話をしますと、奈菜達と公園に行く予定の話をした時に遡る。 




「因みに、ゆいさんに公園の案内をするのは良いんだけど。あの坂道をどうやって連れて行くの?」


『うん? 歩いていく予定だったけど?』


「え?あの坂を?」


『うん。色々案内したいしね。何で?』



 僕が明日のプランを思い描きながら奈菜に話すと、

 奈菜は顔に手を当てて呆れた様子をしていた。



「更に色々連れまわすつもりだったの・・・?」


『うん・・・・?』


 奈菜から明らかな不機嫌なオーラが出てき始めて僕は警戒してしまう。




「お、お二人ともケンカはおやめください。私はどの様な手段でもかまいませんので・・・。」


「か、ま、い、ま、す。どんだけ遠いと思ってんの?駅前からバスに乗っていきなさい。

 と、言うか行くわよ。はぁ~。優斗1人だとゆいちゃんを殺しちゃうわ・・・。」




 と、言う感じで・・・。


 全ては、あの日の打ち合わせの最中の話で決まった。

 まぁ、奈菜の話を聞いた直後は、僕も同じ意見になったんだけどねだった。


 そう、目的の公園まで徒歩はもっとも自転車で行くにしても数時間は掛かる。

 車なんぞ持っていなので、奈菜からはかなりのお説教を受けた。

 まぁ、ちょっと考えれば普通のなんてこと無い事だったんだけどね。


 さすがに気が利いてないなと反省していた。



『ゆいさん。昨日は、すいません。』


「い、いえ。全然かまいません。むしろ気を使ってくれたのだと思います。

 あ、あの、お心遣いも新鮮でしたので・・・。その・・・。」


『ま、まぁ。ゆいさんがそう言うのであれば、特に何もしないけど・・・。』


「えぇ、気にはしてませんので・・・。」



 "にぱぁ"と微笑みかけらる・・・。


 頬が厚くなる感じがあるが何だろう"ホッ"とする感じがある。

 妹を見るような、子供を見ているような・・・ゆいさんの笑顔を見ると何故かほっこりとする自分がいる。



 むぅ、何故だか分らない。それに同い年の女の子に妹とはなんて失礼な。

 とりあえず、守りたいその笑顔 ってことにしておくか・・・。



 しっかし、本日の天気と来たら・・・。


 外は、カラっとしてなかった・・・雨が降りそうに見えたが、降らない・・・。

 どんより曇っている。なんとも中途半端な天気だった。


 中途半端な湿度がじっとりとしていて汗が妙に滴る。


 これは、歩きじゃなくて正解だったね。


 今更ながらに奈菜に感謝していた。


 でも、この天気だと公園に付く前に一雨降られちゃうかも・・・。

 そう、空模様を確認しながら


 そういえば、2人とも遅いな・・・


 実は、約束の時間を等に過ぎている。



 時間指定してきたわりに一向に姿を見せない姉妹を少し隠れて懲らしめようか・・・。



 と、いう事で・・・

 暑いしただ待ってるのも馬鹿らしいので、近くの喫茶店で待つことにしよう。


 そうしよう。と、いう事で、早速行動開始だ。



『ゆいさん。』


「はい?」


『ちょっと、喫茶店にでも涼みに行こうか?』


「は、はい?え?あの、お2人はよろしいのですか?」


『せっかくなので、お茶でも飲んで待ってようかと思ったんです。』


「急な敬語に悪意を感じます・・・。」


 ゆいさん。僕は決してウソはついてない。

 ちょっと懲らし・・・おっと、涼もうと思ってるだけだから。


 近くに喫茶店がないのか探すことにした。




 ・・・おっ! 有った有った。


 道の反対側に喫茶店があるのが見える。



『ゆいさん。あそこに喫茶店があるので、そこに行こうか。』


「あのー。優斗さん?」


『なんでしょう?』


「喫茶店って、なんでしょう?」


『え?』


 流石は、お嬢様。

 喫茶店を知らないとは・・・


 一瞬、気を失いそうだったが下々の生活を知ってもらうのも良いかもしれない。



『喫茶店という・・・』


 折角なので、喫茶店の説明をしながらお店に向かう事にした。




 ・・・・時間は少し遡り、とある場所の出来事



 私は、戻った者の報告に耳を傾ける。



「猪・・・・・が、数台通って・・・いました。」


「ふむ。やはり・・・そうか・・」


 報告者が頭をたれたままあげる事もせず報告していると相手の方も大地を揺るがすかのような、

 頭に直接響くような低くうなるように声を発する


 報告者は、私の肉親で妹だ。


 それと比べて報告を受けている方は、ゆうに3mはあろう大きな体で西洋の修道士のようなローブを着ている。

 小さい丸メガネがチャミングなのだが、一般と違うのは耳があること位だろう・・・。


 え?耳なら誰でもあるだろうって・・・。


 正確には、耳の位置・・・。

 横ではなく上に聳え(そび)立つ2本の耳。


 そう、報告を受けている人は正確には人では無い・・・。

 人の話をする狼なのだ、この世の中にこんなファンタジーがあっても良いのだろうか?


 そう、私も最初はそう感じた。


 しかし、今は大変尊敬している。

 なんと、彼は神様なのだ!賢狼【犬神】と呼ばれ。

 この世に伝わる12神の1人だそうだ。

 神話の話は長いので割愛するがとにかく偉い神様だと言う事は間違いない。


 なにより私たちに対しても、何かと目にかけてくれている。

 とても優しい叔父なのだ、それだけで尊敬に値する。



「ふむ。あの恩知らずにはいずれ何らかのツケは払わせよう・・・。」


 犬神様は、あごの下を擦りながら。低くうなった。

 せっかく作戦に作戦を重ねて来たのに最後の最後に部下に足を引っ張られた。

 そんな印象を受ける。


 報告している・・・は、ガタガタと振るえている。

 まぁ、そうだろう彼女はまだ犬神様に慣れていない。



「叔父様。」


「うん?」


「そちらの方は追々対処するとして、神前家の方はいかがいたしましょう?」


「ふむ。そちらも困ったのう、あの方(・・・)が、そろそろ接触を試みる筈じゃて。」



 あごの下を撫でながら思考にふける犬神様まるで、

 その行動がこちらにとって得なのか不徳なのか値踏みしているような・・・。


 おとうさんからは、何かあれば犬神様にお伺いを立てるようにと言われている。

 ちなみにお母さんは居ない。こんな時でも通常の生活を続けている。


 いや、こんな時だからこそ普通に過ごさなければいけないのだろう。

 その態度を見ているだけで、自分が未熟だと理解してしまう。



「・・・・・・。」


「・・・・・・。」


「・・・・・・。」



 沈黙が時間だけを消費する。

 ふっと、時計に目をやると・・・・。



(優斗。ごめん完全に遅刻だわ。)


 時計の時間は、約束の時間を30分は過ぎていた。




 ・・・時は戻る。



「なるほど。それは、楽しみです。」


『お口に合えばいいんですけどね・・・。』


 何かすごい期待をしている様にしか見えないゆいさんに一抹の不安を覚える。



 庶民の味で良いのだろうか?


 僕は、煽りすぎた事への罪悪感を感じながら駅のロータリーを抜けて喫茶店に向って歩き出す。


『それでは、行きましょうか。』


 ゆいさんを誘い歩き出した矢先・・・



 "ドンッ"



 誰かにぶつかったようだ。



『あ、すいません。』



 当たった気がするほうへ向き直しても誰も居なかった。




(???・・・はて?勘違いか?ゆいさんも特に反応してなかったしな。)



 頭をかきつつも喫茶店へと再度足を進める。が、2、3歩歩くとどうにも足元がふらついてくる。




『あ、あれ?』




 "グニャㇼ"足が縺れる。


「・・斗・・・さん!?」



 突然、意識が薄れていく・・・・



 -ドシンッ



「・・・・斗・・・・・ん!!?」



 ・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・


 ・・・・


 ・・・




 ヒヤッと、する何かが顔に掛り飛び起きるように目を覚ます。


『う、うーん。』


 目を覚ますと薄暗い洞窟の中に居た。



『どこだここ?』


 状況の変化が早すぎて、頭の処理が追いついてない。

 完全に置いて行かれている頭で"ホゲー"っとなっていると急に頭の中に声が聞こえる。




<何時まで、そこにおるつもりじゃ。とって食うたりせんからこっちこい。>


『だれ?』



 "ボッ、ボッ、ボッ"


 声が途絶えると洞窟内に青いろうそくが灯る。


『え"?』


 正直まだ、状況が飲み込めない。しかし、



 い、行くしかないのか・・・。



 何とも納得のいかない感じだけどこのままここに居るのも意味がないと思い。

 声のするほうへ少しずつ歩いていくことにした。



 洞窟の中を進むと開けた所にたどり着く



 おぉ~、す、すごい。



 洞窟の開けた場所は、どこまで上があるのか分らない天井から滝が落ちてきている。

 上のほうにはうっすらと雲もあり。落ちた水は六方星の形に放射状に分かれて流れている。

 そんな池の真ん中に違和感の無い神社が建っていた。




<わっちを待たせるでない。はよう(やしろ)にこい。>



 この幻想的な世界に浸っていたら。明らかに不機嫌な声が頭にこだまする。

 社の方を見ると明らかに怒っている(?)様な赤いオーラが吹き出ている・・・。




『お、お邪魔しまーす・・・。』



 もう少し幻想的な世界を見ていたい気がするのだけどこれ以上は何だかよろしくない気がして、

 僕は恐る恐る社に入ることにする。


 しかし、中は中で別の幻想的な雰囲気だった。



 ほわぁ~



 神所とも言うべきか、柱に使っている【紅漆喰】、壁も漆喰なんだろうけど随所に

 よく分からない七色に光る石が埋め込まれている。


 キョロキョロ見渡してると



<ずいぶんとのんびりとしたのが来たもんじゃのぉ>


 呆れた声で頭に話しかけてくる。



<いや、器が大きいのか?すでにここの場所を楽しんでおるしな・・・。>


 勝手に驚かれている。

 いやしかし、この建築物は世界遺産になっても可笑しくない位の国宝級の神殿だと思う。


 こんな建物があったのだと、内心ほれぼれしながら詮索したい気持ちを抑えつつ奥に進む。


 一番奥の部屋に着く・・・真っ暗な部屋だ・・・。

 僕がその部屋に着いたのが分ったのか、青白い光が部屋の中心に集まっていく・・・。


 それまた、幻想的な出来事だった。

 光が収束していき一瞬"ピカッ"光ったと思ったら・・・



 目の前にすだれがある部屋に連れてこられた。




「ずいぶんと待たせてくれたのう。」




 すだれの奥に人影が見える。

 どうやらその奥に居る人物(?)が話しかけてくるようだ。

 声色から察すると妙齢の女性だろうと推測出来るのだけど、良く判らない。



『す、すみません。あまりに幻想的なつくりだったので、見入ってしまいました。』


「はぁぁ~。こんなにのんびりしたわっぱで大丈夫なんじゃろうか・・・。」



 思いっきりため息を付かれてる・・・。



「まぁ、召還してここまで来たのがぬしであるからな。

わっちとしては力のある者のみが頼りじゃ。して、ぬし名は?神前の血の者であろう?」


『い、いえ。草薙優斗と申します・・・。か、神前さんはゆいという女の子ですが・・・。』


「は?」


『え?』


 は?って、言われても困るんですけど・・・とは、思ってませんよ。




 ・・・・ブツブツ・・・・・ブツブツ・・・ブツブツ・・・・



 何だか、ブツブツ呟いてる声が聞こえる。

 意を決して質問してみる。



『あ、あの~。』


 ・・・・ブツブツ・・・・・ブツブツ・・・ブツブツ・・・・



『あの~。』


 ・・・・ブツブツ・・・・・ブツブツ・・・ブツブツ・・・・



(・・・・・。)




『あのー!!!色々教えていただきたいのですが!!』



 意を決して声を出したのだが・・・思いのほか、大声になってしまった。




 ―――――フギャァアアアアアア


 涙目の美女から発せられる。



「なんじゃ、ぬし そなた滅されたいのか・・・?」


 目の前の美女から放たれた冷たい視線が、僕の背中がゾクゾクさせる。

 決してMでは無い。・・・普通にこわいのだ。



『い、いえ。すいません。き、緊張して声が大きくなってしまいました。』



「・・・ふむ。まぁ、いいじゃろう。わっちも大人げ無かったわい。

 でも、もう一回やったら頭からかじるぞ。・・・して、なんじゃ?教えてほしい事とは?」



 素直に謝ると張り詰めていた空気が緩和する。


 何だよちゃんと聞いてたのか・・・

 それならば、待ってれば良かった・・・。



『は、はい。え、えーと、ここは何処ですか?』



「ほう・・・。わっちの事よりここの場所が気になるのか?」



 すだれを挟んだ奥からでも判る。

 口角が怪しくつり上がっているのが・・・。



『す、すいません。興味がない訳ではないんですが。』


「よい。お主から戸惑いは感じておるが恐怖はまったく感じておらん。」



 恐怖は感じてるんですが・・・

 許容範囲と言う事だろうか、質問を続ける。

 案外ざっくりと教えてくれたのに、内容がディープで戸惑ってしまう。



「ふむ。今おるこの中が神石の中であり。聖域である。」


『え?』


「わっちが、俗世で言わんとする【神】を字す者じゃ。」


『え?』


「主がここに呼ばれたということは、わっちの行う神行を手伝ってもうことになる。」


『え?』


「主よ・・。さっきから"え?"しか返事が無いが、なんじゃ?自分から聞いておいて興味がないのか?」



 正直話が大きすぎて理解出来ていないだけなのですが・・・

 目の前に居るのが神様らしい・・・。で、その神様に住処に呼ばれて、仕事を手伝え・・・と・・・。




 ・・・・・。(フリーズ中)



 固まっていたら、頬に衝撃を感じた。



 "パチーン"



 頬を叩かれていた。 が、驚いたのはそっちじゃなかった。

 すだれの奥に居たであろう人物 いや、神様か?に頬を叩かれたようだ。



 その姿・・・。神様にこんな事言うのは失礼、いや 恐れ多いのだが・・・。




 美しい・・・。

 普通に美人がそこに居た・・・。

 し、しかも、猫耳だ・・・。しかも、尻尾もある・・・。

 ということは、猫の神様なのか???あれ?

 尻尾いっぱいある気が・・・って、4本!?



「な、なんじゃ。わっちを食うかの如くなめ回しおって。」


 何故か顔を赤らめ何故か胸元を隠しながらこちらを見てくる。



『え?・・・えぇ・・・・』


「むふぅ。いい顔じゃな。」



 どうやら。からかわれていたようだ。



『え、えーと・・・、』


「タマだ。」


『え?は、はい?』


「タマと呼べ。なんじゃ、わっちの呼び方じゃないのか?」


『そ、そうです。え、えーと、タマ様?』


「タマだけでよい。」


『・・・・。』


 神様相手にタメ口もどうなのかと考えたが、何となくそう呼ばないと何にもしてくれない雰囲気もかもし出している。



『え、えーっと。タ、タマ』


「むふぅ~。なんじゃ~?」



 ためしに呼んでみたら、妙にくねくねしながら甘い声を出してくる。




『い、いまさらなんですが、タマは・・・』


「ふむ。」


『ね、猫を模した神様なのですか?』


「ふむ。なんじゃか、他人行儀なのは鼻につくがそのうち慣れるじゃろう。

 まぁ、そうじゃのう。見た目通りじゃな。問題があるのか?」


『い、いえ。何となく中途半端になるといやだったもので・・・。』


「そうじゃな。名乗っておらんかったからのう。」


『で、僕は何を手伝うことになるのですか?』


「おぉ、そうじゃ。そうじゃ。忘れておったわい。」



 何だか調子の狂う神様のようだ猫だから・・・?

 まぁ、僕で遊んでる節はあるしこれも演技かも・・・



「ふむ。たまに遊びに来い。今はそれでいい。」


『え?』


 期待値が高そうな話から只の友達みたいな話になって呆けてしまった。

 やっぱりこの人僕をからかってるだけだ・・・。



「むふふ。なんじゃ、不機嫌じゃのう。神の声で期待したか?」


『・・・。』


「たわけ。主は何の力も持っておらぬじゃろ、そんな者がわしの力になれるとでも?」



 見透かされていた。

 確かにそうだ、今初めて呼ばれた僕は何が出来るのか?

 自惚れるとはこういう事を言うのか・・・。



「くふ。いい顔じゃ、あのジジィも粋なことしおるのぉ。」


「まぁ、優斗や。徐々にじゃ。徐々に・・・」


『はい。タマ。』


「むふぅ。いいのう、わっちの心が踊りそうじゃ。」



 タマに諭されて、フォローされて、からかわれて・・・。

 テンションの違いに何だか疲れる・・・。

 饒舌な時のかあさんに似ているな。


 ゲンナリしながら一番の質問をしてみる。



『ちょくちょく、寄らせていただく事にするとして、どの様に行き来すれば良いですか?』



 そう、"帰り方と来方"だ。一生いる訳にいかないし、帰らせて貰って二度と来ないのも

 失礼だというものだ。と、思っていたら大事なことに気がついた・・・。



 今、何時だろう?



「ふむ。そう・・・」


『タマ!』


「なんじゃ。わしが話しておるのに・・・」


『すいません。至急聞きたいのですが・・・。ここに来て時間はどの位経過しているのですか?』



 一番の懸念だった。



 迂闊だった・・・。



 小説だのゲームと言った"サブカルチャー"では、お約束に数年とか時間の経過が早い。

 しかも、外の世界に僕がいる保障も無い。

 戻って、100年後とか、あり得ない。そんな事なら一生ここの方が良くなる。

 知り合いが全員死んでるとか生きてる自身が無い。


 どうなっているのか、知りたいような知りたくないような・・・。

 不安で顔面が蒼白になっていると思う。



 しかも、タマは神妙な面持ちだ・・・。



 "あぁ。"っと本能で悟る。

 これはきっとダメなパターンだ。

 何年経っているのか知らないけど、時間が経ってるパターンだ。


 明らかに落胆していると・・・。



「くくく。あーははは、ひぃーひぃ。」



 タマはお腹を抱えて笑い出した。

 若干、"イラッ"としたことは言うまでも無い。

 こっちとしては、勝手に呼ばれた身。有限の時間を気にして何が悪いんだ?っと、

 タマに向って叫びたくなるが、叫びそうになるが・・・。



 タマが

 "パン"っと、拍手を打った。



 猫に猫だましを食らった気分だ・・・。

 急な拍手に"ビクッ"っとなって一瞬たじろいだ。


 しかし、タマは"スッ"っと僕の後ろを指差した。

 恐る恐る振り返る。

 襖がスィーっと自動で開くと外の池が青白い光を放っている。


 自然と足が池のほうに進む、それと同時に池の中で水面が波立つ



 ――――モヤァ~


 古いテレビの砂嵐のような乱雑な映像の後、ゆいさんが見えた。



 おぉ、ゆいさん。無事だったか。


 安堵したのもつかの間、何故か僕が膝枕してもらっている。



 なん・・・だと・・・。



「くふ。今の現世じゃ。」



 耳元で息を吹きかけながら話かけてくタマ。い、何時の間に・・・。



『うぉぉぉぉおおおおおお!?』



 びっくりしたのと耳元がくすぐったいのが合わさって横っ飛びして耳を擦る。

 タマが口元に袖を当てて声を出さずに笑っている。



「主は、かわいいのう。」


『タマ、か、からかわないでください。』



 恥ずかしいから離れたものの、実際はうれしかったのは内緒ね。



「む。な、なんじゃと」



 池の映像を見て、みるみる顔色が変わる。



「おい、なんじゃ。あの女は?」


『あぁ、あれが先ほど申し上げました、"神前 ゆい"さんですよ。』


「い、いや。そうではない、あの女が行っておる事じゃ。」


『???・・・。あ!』



 そういえば、膝枕してもらっていた事を忘れていた。

 タマを見たら何だか、ガクガク震えている。



「ふん。」



 "ブンッ"っと手を上空で振ると映像が徐々に過去に戻っていく。

 ギュルゥルっと音が鳴りそうな速度で、僕が聖域に入る前まで

 時間が戻っていく、巻き戻し画面みたい・・・。


お読みいただきましてありがとうございます。

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