4話 何だか記憶に薄い謎の悪夢を見ました。
続き投稿致します。
ゆいさんのトンデモ発言のせいで、時間は完全に止まってから数十秒。
みんなの時計の針が徐々に時間を刻み始める。
僕は、皆の表情を確認していた。
やっぱり、皆固まってるよね・・・。
ゆいさんの勘違いと言うか言い間違えなのだが、後々を考えると非常に始末が悪いのが面倒だ。
特に、一番初めに目に入った石像と化している奈菜はこの部屋では一番の異彩を放っている。
しっかりとした説明をしないと勝手に暴走してしまう事だろう。
こちらからでは表情が分からないけど、きっと彼女のためにも見てはいけないんだと思う。
ま、まぁ。
ゆいさんがあんな発言をすること自体みんなが想像したキャラと違ったのだろうが、
落ち着いて考えれば言い間違えたとしか考えられ何だよね。
続いて見たのは、ゆいさんで顔を押さえながら”イヤイヤ”ってしてるけど・・・
・・・放っておこう。ここでフォロ入れたら更に面倒な事になりそうだし、ね?長谷川のおじさん!!
先ほどから”バシバシ”肩を叩くの止めてくれません?
「ギャハハハハ。優斗やるなぁ~。」
そんなに酔ってもいない筈なのに、このテンション?
しかも何処がそんなにつぼったのか?これが、わからない。
笑いすぎて泣いてるし・・・・。
「はぅ。」
急に復活したゆいさんに
『「うお!!」』
おじさんと二人で”ビクッ”ってなってしまった。
「で?優斗、実際はどうなんだ?おぉ~?」
『おじさん・・・。』
どっかのチンピラみたくなってきた。
チラッと全体を見渡すとかあさんとおばさんはチラッチラこっちを見ながらキャアキャア言っている。
おじさんは若干ウザイチンピラ化、奈菜は石化しはじめてる。
とうさんは・・・・。 な、泣いてる。ありゃ~、完全に誤解してる系だね。
ゆいさんは、上目づかいでこちらをチラチラみていました。
たぶん助けを求めているんだろうな・・・。
何だか目眩がしてきた・・・・
話を振られているゆいさんが何か不安そうにこっちを見ていたので、取りあえずおじさんを引き剥がすことに・・・。
「優斗~。無視・・・スンナ・・ヨ~。」
『あのね。そんな短期間でそんな事になる訳ないでしょうが、常識的に・・・』
「え~。かわいい子じゃん。付き合っちゃえよ。」
おじさんの一言にゆいさんが目を見開いている。
完全に困ってるだろ・・・これ・・・どうすんの?
ゆいさんが、何だかプルプルしてたので、頭をなでなでして
大丈夫ですよ。アピールしてみる。
何だか、妹みたいに思うようになってきたからね。
「お!優斗~ 大人の対応じゃ~ん。」
僕が、頭を撫でた事が面白かったのかチンピラおじさんが絡んでくる。
『うるせい。酔っ払い!!出来れば、早く向こうに帰ってとうさんの相手をしてほしいんだけど・・・て、無いてんじゃん。』
とうさんを見ると普通に泣いている。おじさんも遊んでる場合じゃないと思ったのか、さすがに頷いてくれた。そんなにガチ泣きだったのか・・・
『大丈夫?ごめんね。話題に飢えてる人たちだから・・・。』
ゆいさんに声を掛けると下を向いたまま頷いてくれた。
「優斗。だめじゃーん。」
おじさんが、席に戻りながら絡んでくる。
何か忘れていた・・・。
あっ、忘れてた!!
「おじさん・・・。それより、この石どうすんの?」
完全に石化した奈菜像が出来上がっていた。
おじさんからは返答は返ってこない。と言うか徐々にこの場から離れていった。
どうやら今、奈菜を復活させるのは非常に危険なようだ。とにかくおじさんは完全にスルーを決め込むらしい。
ちっ。こっちに任せようとしているな・・・。その後、石像をどうしようかと考えたけど。
まぁ、いいか。その方が何かと静かだし・・・。 と、言う事でしばらく放置する事にした。
石化した奈菜と行方不明の優華と面倒な二人が動かないので、復活してきたゆいさんとどこを回るのか打ち合わせをする事にした。
『ゆいさんはどこを回ってみたいとかあるんですか?』
「いえ。特に決まった場所はないんですが、祖父の関わった場所は見て回りたいです。」
『なるほど、その場所の把握から始めますか・・・。』
「はい・・・。」
「神前様の縁の場所ねぇ~。教会と丘の上の公園が一番かな?」
『お、おじさん。』
離れていったと思っていたおじさんが急に話しに参加して来た。
心臓に悪いから普通にしててよ・・・。
長谷川のおじさんは非常にめんどうな酔っ払いながらも結構重要なヒントをくれた。
『教会と、あの公園が・・・。』
ふむ・・・。
この町は、居住区、行政区、商業区、工業区と用途で区画整理された珍しい形のモデルケースを採用している。
教会を中心に北に見えるのが海で、南が山となっており。大きく分けて、4つのエリアで区分けされている。
大まかではあるが教会を中心に西が商業区画、北が工業区画、南が住居区画で、西が行政区と振り分けられている。
工業と言ってもクリーンエネルギー産業化をこの国で一番最初に進めている事でモデルケースの町としても側面を持っており。
観光産業と共存できる工業区として売り出している。
商業区も長谷川のおじさんのお陰で大分グローバル化されており。今では国内では【1~2位】を争う商業力となっている。
居住区には、八百屋や魚屋など食料品以外は基本的に開業できない仕組みになっている。
また、行政区は、市役所・警察、図書館などが中心で建っている。
そして、居住区から隣町へ続く山のトンネル方面へ進むと町全体体が見渡せる公園がある。
特に何も無いのが逆に良いのだろうか、公園から見る町の全景は素晴らしいとしか言えない。
地元の皆にも大変愛されている公園なのでこの町には無くてはならない物だ。
今回の目標となる公園もそこを指している。
『あの、公園がねぇ・・・』
「あ、あの。私、丘の上の公園・・・・、行ってみたいです。」
ゆいさんが何か思ったのか、急にテンションが上がってきていた。
「ふむ。それは妙案かもしれない、教会には事前に話を通さないといきなりは相手をしてくれないだろうし。」
『前もって予約しておいて、他のところを先に回る・・・って事?』
「そうだな。教会は何かと忙しいからな。
よし。それなら、予約は俺が取っておこう。日程が決まり次第追って連絡するよ。」
おじさんが笑顔で段取りしてくれた。
おじさん。仕事早くて良いんだけど、笑顔が安っぽい・・・全部台無しだよ!!
嫌に歯が綺麗なおじさんを尻目にゆいさんに向きなおす。
『ゆいさんもそれで良い?』
「はい。」
いちいち、いい笑顔で返されるとこっちもうれしくなる。
『じゃぁ、明日は公園に行くことにしよう。』
段取りも決まったことで、明日を待つだけだなっと思った瞬間。
「私・もい、行・・・くか・・らね。」
『お、おわ。
生き返った・・・。』
石像化していた奈菜が”ピキピキ”音を立てながら優斗達の会話に参加してきた。
「あ、あんた・・たち二人だ・と何が・・・起こる・・か分か・らない・・。
からつ、・・・ついていく・・わ。」
「よろしくお願いします!!」
ゾンビみたいにクネクネしている奈菜にキラキラした目でお願いするゆいさん。
その眩しすぎる瞳に奈菜がまるで、聖水をくらった悪魔みたいに弱ってる。
「おお・・おおお・・・ぉぉ・・ぉ」
何だか変な声ををあげてるしこのまま、溶けて消えそうだ・・・。
ということで、明日は長谷川家の娘2人とゆいさんと4人で、丘の上の公園に行くことにした。
その後は、何とか生き返った奈菜を交えて明日の予定などたてて行き夜は更けていくのであった・・・。
ゆいさんが来た一日目はこうして幕を閉じたのであった。
初日から長いよ・・・。
あれ? そういえば、あの【問題児】はどこいった・・・・?
一方その頃、あの【問題児】は・・・
あの後、少したって明日も早いので、そろそろお開きにするかっという雰囲気になった時。
「あれ?そう言えば優華は?」
おじさんが言い出した。
おいおい。娘の存在忘れてたのかよ・・・
みんな、優斗の部屋で漫画でも読んでるんじゃないの?って事で納得していたらしい。
そこで、迎えに行ってみたら僕の部屋には優華も何もいなくって、
おじさんが「あれ? もしかして帰っちゃった。」と、言うような事を言っていたので、
長谷川家の面々は自宅に戻っていった。
ところが・・・5分もしないうちに部屋に戻ったゆいさんが後片付けする僕達の所に戻ってきて、
「優華ちゃん、いました。」
と、報告が入る。ゆいさんとかあさんと僕が見に行ったら。
「うーーーん。もう食べらんないよー。ムニャムニャ・・・」
ちゃっかり、ゆいさんのベットで寝てました。
しかも、これがまた揺さぶっても顔をつねっても起きないので、布団を剥ぎ取って追い出そうとしたら
「折角寝ているので、このままここで寝かせてあげましょう。」
ゆいさんが気を使ってくれたので、僕はこう答える事にした。
『それなら。ゆいさんは、僕の部屋を使って。』
「い、いえ。ソファーをお借りできれば、そこで寝ますよ。」
『お客様の言い分は聞きません。』
きっぱりお断りをする。
お客様を初日からソファーで寝かせる訳にいかないし、両親の部屋はとうさんの仕事部屋にも
なっている半分物置みたいなもので、とても客間としては使えない。
消去法で、僕の部屋を使ってもらうのが手っ取り早いのだ。
押し問答も何度か繰り返すうちにゆいさんが折れてくれた。
「そこまで、仰ってくださるのでしたら・・。お言葉に甘えます。」
『自分の部屋だと思って使ってもらっていいよ。』
優華がゆいさんの部屋、ゆいさんが僕の部屋、僕がリビングと部屋を変えることにした。
っと、ここまでが昨晩の出来事
そこで、朝起きたら優華に説教してあげようと思う。
・・・その夜
僕は夢を見た。
いったい何の夢だろう。と、思ったがそもそも夢にいったいもぜんたいも無い。
しかし、その夢は色々と無視の出来ない興味深い夢だったし何故か疑似体験している様な変なリアル感もあった。
だから、僕はその夢に身をゆだねる事にした・・・・
小さい男の子と女の子がどこかホテルの様な煌びやかな広い広場で一緒に遊んでいる。
「まって~」
「ははは、こっちまでおいで~」
男の子が女の子に対して何かしでかしたのだろう。女の子が男の子を必死に追いかけ回している。
大人達はそれを特に気にしたふうでは無く、寧ろあまり関わらない様にみんな齷齪働いている所を見ると
子供達はここにいる人達より上に位置する場所(すなわちクライアントの子供など)に位置する子供達でこれからここで何かしら催しがあるのだろうと推測出来た。
夢だからかもしれないのだけど、その夢の中の男の子の身なりはこの会場にいる誰よりもかなり良い格好をしていた。
見た目の年は、5~6歳位にしか見え無いのに何とも羨ましい限りだった。
それと比べると女の子はまぁ良くある普通のドレスといった所だろう上流家庭でないがそこそこのお譲さんといった感じだった。
「これから、何があるの?」女の子がたずねる。
「僕の誕生会と挨拶だよ。」男の子が答える。
「ふーん。そうなの?」女の子は、興味が薄そうだ。
「きみは、参加してくれないの?」男の子は、女の子を気に入ったのか若干悲しそうだ。
「わかんない。お父さんどこかに行っちゃったから・・・。」キョロキョロ誰かを探している。
「えー、いいよ。参加してよ。もうすぐ、友達も来ると思うから・・・」粘る男の子。
そのようなやり取りを繰り返している所に。
『僕も入れて~』
続けて男の子と女の子と同じくらいの年の男の子が参加する事になった。
(しかも、僕の意識は彼とリンクしているみたい。)
見た感じは、大きい男の子と同じ格好だ。
どうやら、大きい男の子とは近い関係のようだった。
「「いいよ~。」」
二人の了承を得て、輪の中に入る。
さて、何の遊びをしようかと相談していたら。
「ぼっちゃん、海斗ぼっちゃん。どこですか???」僕たちの後ろから声がする。
「やばい。草薙さんだ・・。」
『おかあさんとおとうさん来たのかな~』
「きっと、そうだろうな。あぁ~、もっと遊びたかったのに」
「海斗ぼっちゃん。探しましたよ。お父様たちがお付になりましたので、ご準備を・・・っと、こちらのお嬢様は?」
「しらない。でも、友達になったんだ。」
「左様ですか、迷子??、ご来賓のお客様??お嬢様、少しよろしいですか?」
草薙さんと呼ばれた青年が手を差し出してくる。
恥ずかしいのか女の子が僕の後ろに隠れ、”海斗”と呼ばれた男の子が前に立ちふさがる。
草薙さんが苦笑いしている。そんなやり取りをしていたら。
「海斗、・・斗」
女性の声が聞こえる。
『あ、おかあさんの声だ。』、「こっちだよ~。」
大声を出すとすぐに女性とその近くの男性が駆け寄ってくる。
「そろそろ、準備しましょうか?」
女性が笑顔を向けてくる。
「あら?かわいいお嬢さんね。こんにちは」
女の子にも笑顔を向ける。
次の瞬間
(もうじき・・・花火が・・・上がるぞ・・・)
”キン!!!”耳の奥から金属が擦れてはじきあった様な音が聞こえたと思ったら。
建物の中で花火が上がるイメージが沸いてくる。
確実にこの部屋と同じ配置、大人が三人、子供が三人、向こうから近寄ってくる何かが白く光ると花火が上がる。
そんな、イメージが一瞬頭に思い描かれる。
”うふふふふ”可笑しくって、急に笑い出す僕に草薙さんが
「??? どうなさいました?」
聞いてきたので、イメージの顛末を教えたら。青い顔になって辺りを見回す。
少し、離れたところからすごい剣幕で近寄ってくる男性・・・
白く光るフロアー・・・・。
”ドゴーーンン”
お腹の上に感じたそれは、先ほどの夢が正に起こった事態なのでは無いかと錯覚させられる。
「優斗おっきろーーーーーー。」
”ドゴーーンン”
『おぶっふ。』
息が完全に一瞬止まった。
『げほげほげほ、おえ。ゆ、優華~~~~~~~~~~~~~~』
烈火の如く怒った優斗は
「きゃぁ~~~~。」
”キャッキャ、キャッキャ”うれしそうに逃げ惑う優華を
『オレサマ、オマエ、マ、ル、カ、ジ、リ』
逃げる優華に追いつくと拳骨を両サイドの頭につけて”グリグリ”してあげた。
「あ、ああ、あああああ。」
悩ましい声を上げる優華の前に
「お、おはようございます。」
ゆいさんが立っていた。
グリグリから逃げた優華がすかさずゆいさんの後ろに逃げる。
「うわぁぁあん。ゆいさんおねえちゃん。優斗がいじめるぅぅ~。」
ゆいさんの後ろで【あっかベー】しながらこっちを見ている優華がうそ泣きを始めた。
『ほ、ほぅ。』
闘気を纏いこぶしを鳴らす僕に
「まぁまぁ。」
ゆいさんがなだめる。
頬を膨らませながらこちらを咎める彼女に何故か逆らえない・・・。
くっ、覚えてろよ。
心の声が漏れていたのか、ゆいさんが苦笑いし、優華が【あっかんべー】してくる。
べ、別に く、くやしくなんか無いんだからね!!
アイツ、ああ言う態度を取るのなら、後でこっそりお仕置きしよう。
うん。そうしよう。
そう、心に決めた優斗であった。
朝から"バタバタ"とするのはもうご近所の間では当たり前の光景である事はあらかじめ断っておく。
ご近所さんの間で、姉と妹のどちらと結婚するのかトトカルチョされている位だ。
あくまで、本人たちの、【知らない所】でであるが・・・
話を戻そう。
優斗は、ゆいさんが下に降りてきている事を確認し自室で着替える。
何だか・・・。部屋が前より綺麗になっている気がする・・・。
ゆいさんが掃除してくれたのだろうか、そんなに汚かったイメージは無かったが?
など考えながらリビングに下りるとすでに朝食の準備が出来ていた。
話によると今日はゆいさんが手伝ってくれたそうだ・・・。
かあさんも出かけるそうで、「後はよろしく。」と、だけ言って出て行った。
とうさんはすでに仕事に出ていた。
優華は、帰ったようだ。
ゆいさんの話によると、一旦家に帰るそうで奈菜と後から合流するとの事だった。
食卓からいい匂いがする。
-ズズズッ。
目の前で湯気を立てる味噌汁を啜ると
「ど、どうでしょう?」
ゆいさんが聞いてきた。
『う、旨い。』
ゆいさんは安堵したようだったが、本当に旨い。
僕がゆいさんの料理に舌鼓を打っているといると隣の家から大きな声が聞こえて来る。
「あんた!!いったい何しでかしてるのよ!!」
僕がお仕置きする前に雷様が一発ブチかましたようだ。
「ご、ごめんなさーーーい。」
どうやら反省と言うか、絶対に凹んでいるはずなのでフォローでもしてあげるか・・・
優斗は、身支度を整えながらそんなような事を考えているのであった。
お読みいただきましてありがとうございます。