変態とドS狩人
「テメェちゃんと探してんだろうな!」
奈落の下では犬のように地面を這い蹲るゴールドと、無限に湧き出してくる昆虫魔族に弾幕を浴びせるハルトが奮闘していた。
「さっ探してるざますよ! ミーだって早く見つけて脱出したいざぁます!」
地を這う男の声は既に涙声だ。
「ちっ…もう一階層下か?」
既に数えきれ無い程の巨大な蜂たちが死屍累々と奈落の底に落ちて行っている。
ハルトは凄まじい速度でグリップの弾奏から三個目の小さなカプセルを取り出すと、銃に備え付けられた赤い水晶体の上の蓋を開き、それを中に押し込んだ。
赤い水晶体が一瞬で青く染まり、再び向かって来る敵に向かって弾幕を浴びせる。
「変態! もう一階層降りるぞ! っんな事してたら日が暮れちまう!」
「ええっ? もう一階層下ざますか?」
既に変態呼ばわりされて否定もしなくなったゴールドは下に続く足場の悪い階段に涙を呑んだ。
「あの…十億超えたら分割でいいざますか?」
「っざけんな! 分割になるのは百を越えてからだ!」
「百っ…百まで分割は無しざますか? ミーも必死で頑張ってるざますのにっ!」
「テメェが払うっつったんだろ! 玉ついてんなら一度口にした事は守りやがれ!」
「だっ誰も払わないなんて言ってないざましょぉがぁ!」
「っんだとテメェ…」
銃を撃ちながらも激しい言い合いを交わすハルトの言葉が不意に止まった。
「分割………」
「しっ! …待て!」
尚も食い下がろうとしないゴールドの声を制止するとハルトは銃を下した。
「え?」
見ると今まで執拗に湧いて出て着ていた昆虫魔族たちが攻撃の手を止め、撤退していく姿が見える。羽音も銃声も、悲鳴も止んだこの場所はさっきとは打って変わっての不気味な静寂に包み込まれていた。
「て、撤退したざぁますか! ざまあみろざぁますね。ふぉっふぉっ」
いきなり強気になったゴールドはすっくと立ち上がると胸を張った。しかし、ハルトはじっと止まったまま、何かに耳を傾けていた。そして……
「くそ。殺しすぎたか」
その呟きに「へ?」と首を捻る事数秒、静かな静寂の中、遠くから重く不気味な羽音が徐々に近付いて来た。今まで戦っていた昆虫魔族たちの羽音よりも、ずっと重い響きにハルトはこの場で初めて大剣を構える。
「なん…ざますか?」
「……女王だ」
その言葉と同時にハルトの横蹴りがゴールドの腹に炸裂し、彼の体は勢いよく隣の壁に激突した。
「ノオォン! 何ざますか! いくら分割とは言えちゃんと払うと…」
腹を押さえたゴールドは自分のコートを見るなり「おぉ?」と声を上げた。ど派手なコートの裾がいつの間にか真っ二つに断ち切られている。
「なっなんっなんなんなんっ何ざま………」
ハルトの視線が上を向いていた。その視線の先に先ほどの昆虫魔族とは比べ物にならない程の魔族が居る。




