目覚めたら半裸
「キャロルさん!キャロルさーん」
名前を呼ぶ少女の声にキャロルは眠りから覚醒した。すでに日は高く昇り、冬の澄んだ青空が窓越しに広がっている。
目の前には可愛らしい笑みを浮かべたレニの顔がある。
「あれ?私ベッドで寝たっけ?」
大きな欠伸をしながらボサボサの髪をかき上げ、キャロルはサイドテーブルに置かれた時計に目を移した。既に午前十一時を越えている。
昨晩レニ(厳密に言うとハルト)の狩りに付き合った後、あのバイクと呼ばれる鋼鉄の騎馬でそのまま紹介場に直行したのを覚えている。
しかし、そこからの記憶が少々曖昧だ。
「えっとぉ…あのまま紹介場に換金に行ってぇ…」
換金手続きに行く前に…レニのもう一つの人格であるハルトから賞金金額を聞いて…
「あれ?」
そこからの記憶が途切れている。
「あれ?レニ、私、いつベッドに入った?」
レニは目を丸めると「覚えていないんですか?」とキャロルに顔を寄せた。
「キャロルさん金額聞いたらいきなり倒れちゃったんですよ!もぉ、レニすっごく心配で…」
「あ…」
「ハルトは死にはしないって言ってましたけど、大丈夫ですか?倒れた時に頭とか打ったりしてませんか?」
レニが心配そうにキャロルの後頭部を覗き込んだ。
「えっ?…あっいや、大丈夫よ。ちょっと…とんでもない金額が簡単に出てきたから…」
後頭部を摩るレニの柔らかい手を掴むとキャロルは少女の華奢な腕に目を落とした。
そっとさすってみるが、とても華奢でほっそりと頼りない。
(やっぱり全然感触が違う。レニはハルトで…ハルトはレニで…)
「あ、あの、キャロルさん?どうしました?」
(声色を男に似せても、この声質であんな低い声が出る?顔だって全然…)
「キャロル…さん?」
はっとしてキャロルは急いでレニから離れた。
「やだ!ごめんごめん。何でもないのよ」
顔を傾げながらレニはポンッと手を叩いた。
「キャロルさん。ひょっとしてハルト探してたんですか?」
「えっ?」
「ハルト出します?」
その言葉にキャロルはぶんぶんと首を横に振った。
「いやっいいわよ!出さないで!レニのままでいて!…というかレニがいい!」
この愛らしい少女が、あのいけ好かない狩人だとは全く思えない。
「…というか、レニ…あなた、自覚…あるのね」
「じかく?」
自覚があるようで無いと言った所だろうか。
「ううん。ごめん何でもないわ」
「そうですか?それじゃご飯食べましょうか。もうお昼ですよ」
ニッコリと微笑みながら明るく言い放つとレニはキッチンの方に消えていった。
「あまり触れない方がいいのかしら…」
そう呟きながら、ベッドから一歩足を踏み出したキャロルは、自分の姿を見て悲鳴を上げた。
「レニ!レニレニレニ!」
「はぁーい。何ですか?」
「私、倒れた後…」
「ハルトが運んだんです。もお、置いてくとか言ってるから諭すのに苦労したんですよ」
(そうして運んでまた服を脱がされた………と)
毒を浴びたわけでもないのに再び服を脱がされたらしく、彼女は見事に半裸だった。しかし、ハルトはレニで、レニはハルトで…考えれば考えるほど反応に困る。
「それより早く洋服着ないと風邪ひいちゃいますよ?」
「えっ!あ、ああ、はい。そうね。はいはい。そうよね」
相手が男だったら激しく攻め立てる所だが、レニは同性でとびきりのいい子だ。そんな娘を攻めるわけにはいかずに、キャロルは部屋に戻ると服を着てキッチンのテーブルについた。