冷酷宰相の娘ですが、父の悪政を理由に婚約破棄されました ~全部論破したら皇太子に気に入られたようです~
「ジーナ・クリシス!そなたとの婚約は破棄させてもらう!宰相たるそなたの父、グレイアム・クリシスの悪政、もう見て見ぬ振りは出来ぬ!」
国立アカデミーの卒業パーティー。私の婚約者であるこの国の第二王子、カシアン・ドラグレア殿下は会場の真ん中で言い放ちました。意気揚々としたその声に、私の腸は煮えくり返りそうです。
(私のエスコートをボイコットしたと思ったら、何を言い出すの)
カシアン殿下の代わりに私をエスコートしてくれたのは父であるグレイアム・クリシス侯爵。この国の宰相であり、先ほど殿下が見て見ぬ振りが出来ない悪政をしていると言い放った相手です。
(お父様を皆の前で侮辱するなんて···!)
私の震える手を、お父様が優しく握り返してくださいました。
ちらりと私に視線を送り、殿下を鋭い視線で射抜きます。殿下が恐怖心からか一歩下がりました。見ただけですよ?
「お父様、ここはわたくしが聞きます」
「しかし、ジーナ。震えているじゃないか。私に任せなさい」
私を心配してくれているお父様に、私はにっこり微笑って首を振りました。
「いいえ。お父様。これは怒りで震えているのです。怖い訳ではありません。わたくしに言わせてください」
私がお願いすると、お父様は少し下がりました。お父様は私には甘く、たいていの事は聞いてくださるのです。
「カシアン殿下、どういうことでしょうか?このような公の場で、発言の責任は取っていただきます」
「どうもこうもない!言ったとおりだ。そなたとの婚約を破棄し、クリシス宰相の悪行をここで暴く!」
自信に溢れたカシアンの横にいるのは、先日お父様が国政会議で責め立てたアスラ伯爵家の次男。国庫の着服疑惑のあるラッセル子爵家の長男。
「――はぁ」
ため息も出ます。
盛大にため息をついたものですから、カシアン殿下の気に障ったようです。
「ジーナ・クリシス!何だその態度は!横柄に振る舞えるのも今日までだぞ」
全く。いつ私が横柄に振る舞ったと言うのです。貴方じゃあるまいし。
「お父様、殿下との婚約は破棄してしまっても構いませんね」
確認を取ろうとお父様の顔を見ると、こめかみに青筋が浮き上がっていました。娘の私でも少し恐ろしいです。
宰相でありながら、鍛え抜かれた大きな体躯。漆黒の髪に、顔に大きな火傷の跡があるので、顔の半分を覆う黒い仮面を付けているのです。更には吊り上がった鋭い金色の瞳。
――そう。恐らく一連の原因は、お父様のこの恐ろしい顔なのでしょう。
「カシアン殿下、婚約破棄は受け入れましょう。こうなってしまっては、とても貴方との婚約を続ける気になりません」
「な、何だと?違う!そなたが私を婚約破棄するのではない!私が、そなたとの婚約を破棄するのだ!そなたの家族が原因で!魔王の様な形相で私を睨んでいる、そなたの父!"貴族殺し"たる異名を持つ冷酷無比なクリシス宰相が!」
その異名を知っていながら、お父様に歯向かおうとするとは。
ここはアカデミー。子供の場です。お父様が出るまでもありません。チラリとお父様に視線を送ると、私を見返し軽く頷きました。それだけで充分です。
(私に任せてくださるのね)
私はお父様の娘。叡智のクリシスの一人娘です。伊達にアカデミーを首席で卒業する訳ではありません。――受けてたちましょう。
私は宣戦布告を受ける合図として、カーテシーを取りました。殿下に伝わったかは分かりませんが。
「それでは殿下、皆の前で暴いていただきましょう。わたくしの父の、悪行とやらを」
私の堂々たる振る舞いに、カシアン殿下は少し狼狽えましたが、腐っても第二王子。すぐにふんぞり返りました。
「はっ!えらそうに!今読み上げてやる!おい!」
『おい』と呼ばれて、書類を持って前に出たのがアスラ伯爵家次男、コンラッド・アスラ。
後ろにアスラ伯爵の姿が見えます。
(まさか、国政会議では発言権がなくなったから、息子を利用して?この場でなら断罪出来るとでも思っているの?)
流石に呆れます。
お父様が後ろに控えているクリシス家の侍従に視線を送りました。侍従が一礼して下がったのを見ると、カシアン殿下に呼ばれて出て来た令息達の家門の確認に行ったのでしょう。
コンラッド・アスラが書類を見ながら口を開きました。
「最近の宮廷の決定は、あまりに宰相閣下の独断が過ぎると聞きます。王命を盾に好き勝手に政治を動かしているのでは?」
(そのくらい紙を見ずに言いなさいよ)
「具体的はどの件です?」
「これです。閣下がラッセル子爵領へ送った命令書。
王命と言われたようですが、これには陛下の署名も、印章もない」
(ラッセル子爵領?これはここで言っていいのかしら?)
ちらりとお父様を確認すると、頷くので良いのでしょう。ラッセル子爵家はとばっちりだわ。まさか仲間だと思っていたアスラ伯爵家にこの件を持ち出されるとはね。
「王の名を騙り命令を出すなど……これは国家反逆に等しいのでは?」
(お、大げさね)
「待ってください。ラッセル子爵領の件は、王家への納税をごまかしていたからでしょう?数年に渡り帳簿が合わなかったと聞いています。お父様の慈悲で陛下に伝える前に送った書状だと言うのに、そのような言い方をされては心外です」
周囲がざわめいた。カシアン殿下の後ろに立つ、ラッセル家の長男の顔が青ざめていく。
カシアンは虚を突かれたように呻く。
「な、なに?おい、代われ!」
『代われ』と言われて出て来たのがアーサー・ミリアム伯爵令息。
(あら?ミリアム伯爵家と言えば······)
無骨で大きな体躯。騎士の家門だ。確かミリアム伯爵自体は引退しているが、長男が新たに王室騎士団の団長になったはず。
ピシリと背筋を伸ばしてアーサー・ミリアムは口を開いた。
「宰相閣下が軍の予算を縮小したおかげで、兵力が削られております!閣下は国防を軽視しておられるのか?それとももしや軍部に周る資金を着服しておられるのでは?」
「お父様は軍の予算を縮小されてはおりません。縮小したのは今まで軍の資金を横領していたミリアム家の俸給です」
彼の近くにミリアム伯爵がいないことから、これはアーサー・ミリアムが独自に動いた事かしら。大方、家での父と兄の会話を聞いて推測したという所かしら?実直な彼らしいけれど···。
アーサー・ミリアムはそれ以上何も言いませんでした。しばらくすると顔を赤くして、こちらに向かって頭を下げました。
(恥じる事が出来るだけ、彼は見所があるわね)
「ッ?他には誰かいないか!?」
カシアン殿下は周りを見渡しましたが、誰も前に出てくる者はいません。
(あら···たった二組だけでしたの?)
「おい?パーティー前にはあんなに居たじゃないか?誰でもいい!何かあるだろう!」
周りに喚くカシアン殿下を見て、私は心から思いました。
(婚約破棄は正解でしたわね)
「殿下?終わりでよろしいでしょうか」
「い、いや。待て。私が直々に告発してやる」
「殿下が?」
何を言い出すのでしょう。ここまで来ると好奇心が湧いてきます。
カシアン殿下は仁王立ちになり、人差し指をお父様に向けて叫ぶように言いました。
「私は見たぞ!クリシス宰相!貴様は兄上の側近に賄賂を渡していただろう!側近だけではなく、兄上の護衛騎士にもだ」
「賄賂···ですか」
私が絶句したような声を出すと、カシアン殿下は胸を張って更に言いました。
「そうだ!俸給の期日ではない日に、兄上の私室でこそこそと!」
「王太子殿下の側近と近衛騎士でしたら、先月のワイバーン討伐の報奨金では?最近まで殿下と共に隣国へ行かれていましたので、正式な受け渡しの日に不在だったのでしょう」
「な、なに?うぐ。それにしても宰相の貴族への独断の処罰が多すぎる!横暴だと私にも不満の声が届くほどに!」
(カシアン殿下に不満を言っても仕方ないでしょう。貴方に行くくらい、他の官僚貴族達からは見放された人達なんだわ)
「横暴ではありません。お父様は精査されて処罰しております。何をもって独断だと言うのですか」
いい加減早く終わらせたくなって来ました。
この断罪劇、いえこの茶番の落としどころは何処かしら?陛下は卒業パーティーには出席されないと聞いています。たしか王太子殿下がもう少ししたら来られるはずよね。殿下に責任を取ってもらおうかしら。
私がいらいらと前に出ると、カシアン殿下が口を開きました。
「何をもってだと?宰相のその顔だ!悪事を働いていないはずがない!」
カシアン殿下の言葉は会場中に響き渡りました。王族特有のよく通る声質。私の中でプチリと何かが切れました。
「何を言い出すかと思えば····お父様のお顔?確かにお父様のお顔は恐ろしいかもしれません。魔王のようであり、地顔が鬼のような形相です。わたくしでも暗い場所でお会いしたら驚きます」
殿下が小さな声で「そこまで言ってない」と言いました。そんなことはどうでもいいのです。そういうことではありません。
お父様はいつもお忙しい。家族の団欒を削ってまで、身を粉にして帝国に尽くしていると言うのに。
「殿下がアカデミーに通う一生徒ならば、それでも良いでしょう。顔を理由に恐れても許されます。ですが貴方は王族。いずれ国政を担う立場にあるのです。それが、顔が怖いことを理由に断罪しようなどと···恥を知りなさい!」
危うく殿下の胸ぐらを掴むところでした。殿下はペタリと腰をつけました。震えながら私を見上げます。私も父に似ておりますから、怒った形相が恐ろしかったのかもしれません。ですが腰を抜かすほど?軟弱な!
「ふ···ふふっ!はっはっ!いやスカッとしたなぁ」
(どなた?)
拍手をしながら近付いてくるのは、アカデミーにいた帝国からの留学生。
(確か···皆からルカと呼ばれていたような)
家紋も爵位も知らない。
アカデミーでは身分を問わず、どの生徒とも交流が取れます。故に自分から聞かない限り、ファーストネームで呼ばれる方の家門を知るすべがありません。
お父様が留学生に向かって頭を下げました。
(お父様が頭を下げる程高貴な方なの?)
留学生は私の手を取りキスをしました。帝国ではありふれた挨拶のようですが、もう王国でする人はあまりいません。不意な事だったので、慌ててしまいました。
「勇敢なるクリシス令嬢。お父上と共に帝国へ来ないか?君達は王国にはもったいない」
「えっ?」
薄い茶色の髪に、意思の強そうな琥珀色の瞳。
(お、お父様っ···)
お父様に助けを求める視線を向けましたが、お父様は困った表情をしています。
「お手を離してあげてください。皇太子殿下」
大股でこちらに向かいながら、叫ぶような声が響きました。額に汗を滲ませながら駆け付けて来たのは、カシアンと、同じ銀糸の髪を持つ、兄のアルフォンス・ドラグレア王太子殿下。
王太子殿下は肩で息をしながら、私と留学生の間に入り込みました。
(皇太子ですって?じゃあ···)
私は深く頭を下げました。
「ルカディウス・アルカーナ皇太子殿下、知らなかったとはいえ、ご挨拶が遅れまして申し訳ありません」
ドラグレアの王族が銀糸の髪を受け継ぐように、アルカーナ帝国の皇族は金糸の髪と瞳を持つと聞きます。
(髪色は魔法で変えているのだわ)
ドラグレア王国はアルカーナ帝国の属国。もっと早く気づいていなければならなかったのに。失礼をしていないかしら。
ルカディウス皇太子は、ニヤリと微笑って言いました。
「やぁ、アルフォンス。久しいな。君の弟が卒業パーティーで面白い事を始めてな。しばらく見物してたのだが···」
王太子殿下は淡々と答えました。
「卒業パーティーを台無しにしてしまい、申し訳ありません」
「いや、かまわない。良いものが見れた。クリシス令嬢には驚かされた。それで今、侯爵と令嬢をうちにスカウトした所なのだが」
「皇太子殿下、ご冗談を。侯爵を引き抜かれては我が国が回らなくなります。ご容赦ください」
「ふむ。まあそうだろうな。侯爵の有能ぶりは我が国にも聞き及ぶ程だ。何故それを君の弟が知らないのか不可解だが」
「本当に···弁解しようもありません」
王太子は私の後ろで腰を抜かしたままのカシアン殿下を見据えました。その瞳は驚くほど冷えていました。
「あ、兄上···」
カシアン殿下が呟くと、更に冷酷な眼で王太子が睨みました。カシアン殿下はそれ以上口を開かず、俯いてしまいました。
「クリシス令嬢、この度は愚弟が申し訳無い事をした。本人からも後で謝罪をさせるが、とりあえず変わりに謝らせてくれ。侯爵も、いつも国を想い尽力してくれているのに、申し訳無い」
王太子殿下が私とお父様に向かって頭を下げました。私は王族の方が頭を下げると思わず、狼狽えてしまいました。
「い、いえ殿下が謝ることではありません···!」
するとお父様が私と殿下の間に入り、私の言葉を遮るように言いました。
「謝罪を受け入れます。王太子殿下、カシアン殿下の処遇はどうされますか?」
王太子殿下は少しため息と共に口を開きました。
「今まで私も侯爵も弟の愚行に手を打ってきたが、今回はもう庇いきれない。陛下と話し合うが、おそらく王籍から抜き、生母であるアンガーノン伯爵領で静養させることになるだろう」
王太子殿下が合図をすると、数人の騎士がカシアン殿下を連れて下がって行きました。カシアン殿下は呆然としたまま連れて行かれました。アンガーノン伯爵領は王国の端。もう会うことはないかもしれません。
「改めてすまなかったな。ジーナ嬢。カシアンと君の婚約をどうにか破棄せねばと思っていたのだが、こんな形になるとは」
「い、いえ····え?何故破棄を?」
王太子殿下が婚約について思う所があったとは知らなかった。殿下の顔が少し赤くなった。
「そ、それはだな···」
「話している途中ですまないが」
ずいっと割って入ったのはルカディウス皇太子。
「私の話しが途中だったのでな。侯爵は帝国に来るのは無理だが、君はどうかな?ジーナ・クリシス令嬢」
私は淑女らしからず、ぽかんと口を開けてしまいました。
(えっ冗談ではなかったの)
「わたくしのような若輩が帝国に行っても、とても皇太子殿下のお役に立てるとは思えません」
王国でもお父様の足を引っ張っていると言うのに。
お断りしたものの、皇太子殿下は引き下がりませんでした。
「そう言わず、時間をかけて考えてくれ」
手を握られ、見つめられて頭が真っ白になりそうです。
「そ、そう言われましても」
「皇太子殿下、クリシス令嬢が困っています」
冷え冷えとした表情でアルフォンス殿下が腕を引きよせました。
「ん?アルフォンス。君とクリシス令嬢は存外仲がいいのか?」
え?大変です。王太子殿下との関係を誤解されては、殿下の名に傷が付きます。
「はい····」
「いえ。仲がいいというほどではございません。わたくしはここ一年、父の補佐で王宮に出向いていましたから、会議などで顔を合わせる程度です」
慌てた素振りを見せないよう、淡々と答えました。
「くくっ。なるほど?だから貴族達の事情にも詳しかったのだな」
皇太子殿下は何故か上機嫌になり、王太子殿下は肩を落とされました。どうしたのかしら。
「今日の勧誘はここまでにしよう。侯爵が私を刺さんとばかりに睨んでいるからな」
(え?)
皇太子殿下の言葉にすぐに振り向きましたが、お父様のお顔はいつもと変わりありません。殿下もお父様を誤解しているのでは?
「皇太子殿下、お父様は"貴族殺し"などと呼ばれて確かに怖がられておりますが、本当は虫も殺せないほどの優しい方なのですよ」
「なに?!」
皇太子殿下は心底驚いているようです。本当なのに。
「侯爵領では、私とお母様に飛び切り甘く、愛妻家として知られています」
皇太子殿下が目を見開いたまま、王太子殿下を見ました。王太子殿下は微かに首を振り、諦めたような表情をされました。
(王太子殿下も未だに信じないのだもの)
会う度に説明するのに。
「クリシス令嬢。首席で卒業なさるので、カシアンの変わりに挨拶をお願い致します」
王太子に誘導され、私は壇上に向かいました。
(騒ぎの当事者である私が祝賀を述べていいもの?)
にっこり微笑った皇太子と、心配そうなお父様に見送られ、その場を後にしました。
◇
「ふむ。謎なんだが侯爵。何故君の娘は第二王子と婚約をしていたんだ?」
いくら考えても疑問でしかない。ルカディウスは隣に立つクリシス侯爵に聞いた。
クリシス侯爵はしばらく黙っていたが、ルカディウスが質問を取り下げないので観念したように言った。
「私はジーナに愛する人と結ばれてほしいのです」
「うん?」
ルカディウスは首をかしげる。
「先ほど見たように、ジーナの魅力は留まることを知りません。他国の皇族である貴方も興味をお持ちになったように、王太子殿下もジーナに好意を示しております。幼い頃に王太子殿下に婚姻を強いられていたなら、ジーナには断る術はありませんでした。なのでそうなる前に第二王子と婚約を結んだのです。弟の婚約者であれば、言い寄る事は難しいですから。他の貴族からの縁談も絶つ事が出来ますしね」
「なるほど···カシアンとの縁談ならば、後でどうとでも出来ると言うことか?」
「ええ。良い隠れ蓑になってくれました」
瞳は冷えたまま、にやりと微笑う侯爵を見てルカディウスの背筋は凍った。
(····なるほど。これは恐ろしい)
「もう一つ、そなたが虫も殺せぬ優しい男と言うのは本当か?」
"貴族殺し"などと異名が付く者が、そんな訳はないと思うが、聞いておかねば。これからのアプローチが難しい。
侯爵は顔の笑みを消し、冷たい金の瞳で見下ろした。
(文官でありながら、何故こうも威圧感があるのだ)
ルカディウスは皇太子だ。それも大陸で一番大きな帝国の。他の者から、ともすれば皇帝からもここまでの威圧を感じた事はない。
侯爵がゆっくり口を開く。
「ええ。私は妻と娘の前では、できる限り虫も殺さぬよう心がけております。しかし、国に仇なす者と、娘に言い寄る悪い虫は別でございます」
ルカディウスは引きつった顔のまま固まった。
「お父様!」
壇上から戻ったジーナが駆け寄ってくる。ルカディウスが感じていた威圧感は一気に消え去った。
(侯爵の表情は変わらないのに、不思議なものだな)
ルカディウスはジーナに同じ質問をした。
「ジーナ嬢、侯爵が虫も殺さぬ優しい男と言うのは、本当か?」
ジーナは微笑んだ。侯爵と似た金の瞳が輝く。
「はい。本当です」
食い入るように見つめてしまって、我知らず微笑ってしまった。
「そうか。ならばジーナ嬢のいる所で侯爵とは話をしないといけないな」
◇◇
―――数カ月後、クリシス侯爵邸にニ通の求婚書が届くが、それはまた別のお話。
読んでいただきありがとうございます。
感想、いいね、ブクマなど励みになります!




