メイド、ギルド登録する
街の石畳を踏みしめながら、 ルナリスは隣を歩いていたロイドとリリーに向き直った。
腰を折り、もう一度深々とお辞儀をする。
見知らぬ土地で路頭に迷いかけた自分をここまで送り届けてくれた二人には、感謝の言葉も足りないほどだ。
別れの挨拶を交わし、雑踏の中へと消えていく二人の背中を見送る。
(……さて。問題は、一ローズも持っていないってことだよね)
手持ちの財産はゼロ。このままでは、今夜の寝床どころか、次の食事さえ怪しい。
記憶の中にあるアニメや漫画の知識を総動員する。こういう時、異世界の住人が真っ先に向かう場所といえば、答えは一つしかない。
(ギルド……とか、ないのかな)
期待と不安を抱えながら、きょろきょろと街を見渡す。活気に満ちた大通りをふらふらと彷徨っていると、不意に視界の端で揺れる大きな木製の看板が目に留まった。
そこには、無骨に描かれた一本の剣の紋章と、「ギルド」という力強い文字。
「……あった」
吸い込まれるように扉を押し開けると、そこには二階吹き抜けの広大な空間が広がっていた。
木の温もりと、どこか鉄錆の匂いが混じった独特の空気感。
見渡すと、壁の一角に「初めてご利用のお客様へ」と題された古びたポスターが貼ってある。 ルナリスは獲物を見つけた獣のような勢いで、その文字に食いついた。
『まずは、会員登録をしてください。入会料は無料です』
(無料......! 無料なの!?)
一ローズの持ち合わせもない自分にとって、その言葉は暗闇に差し込んだ救いの光だった。
弾む鼓動を抑えながら、先を読み進める。
『次に、依頼を受けてみましょう。
ランクは下からG、F、E……と続き、最終的にはSランクです。最初はGランクから始まります。
功績が認められればランクアップ。また、依頼をクリアすると報酬としてお金が支払われます』
その瞬間、 ルナリスの全身に電撃のような衝撃が走った。
(お金……! お金が稼げる!?)
これで、あの硬い地面で寝る生活とおさらばできるかもしれない。
衣食住の確保という、切実な希望が現実味を帯びてくる。
(それにしても……助けてくれたロイドさんとリリーさん、自分たちのこと『A級パーティー』って言ってたっけ。もしかして、あの二人って相当強いのかな?)
ふと疑問が脳裏をよぎる。けれど、今の自分にはそれ以上に優先すべきことがあった。
ルナリスは決意を秘めた瞳で受付カウンターを見据え、一歩を踏み出した。
迷うことなく受付へと向かい、 ルナリスは人生初となる冒険者登録を済ませた。
「依頼はあちらの掲示板からお選びください」
という受付嬢の丁寧な案内に従い、私は吸い寄せられるように掲示板の前へと立った。
だが、並んでいる依頼書を眺めた途端、期待は急速にしぼんでいく。
(……え、嘘。ほとんどEランク以上の依頼じゃない……)
掲示板を埋め尽くすのは、初心者の自分には到底手の届かない難易度の高いものばかり。
自分にできることなど何もないのではないかと不安に駆られたその時、隅の方でひっそりと、しかし確かな存在感を放つ一枚の紙が目に留まった。
それは、今の私に許された唯一の希望――Gランク以上の依頼書だった。
『ゴブリン討伐依頼:異常に増殖しており、作物が全滅寸前です!
場所:当ギルドより北に約三キロ、村外れの田畑付近
対象:Gランク以上
報酬:ゴブリン四体につき十六ローズ
討伐証明:ゴブリンの耳、あるいは手足の部位』
(これなら……今の私なら、いける!)
さっきの森での一件を思い出す。あの過剰なまでの火力があれば、ゴブリンなど恐るるに足りない。
けれど、ふと冷静な疑問が頭をもたげる。
そもそも、十六ローズで何が買えるのだろうか。パン一個分? それとも、ただの飴玉一つ分?
(いや、今は価値なんてどうでもいい。一ローズもないままじゃ、明日には餓死しちゃうんだから……!)
「今は、金!」
思わず、心の中の切実な叫びが口から漏れた。
「時は金なり、稼いでやるわ……!」
かつての「無表情女」の影はどこへやら、 ルナリスは自分を奮い立たせるように拳を握りしめ、獲物と報酬が待つ北の田畑へと、足早に駆け出した。
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