メイド、図書館へ行く
手続きを終えてギルドの喧騒を後にしたものの、私達の足は依頼に書かれていた「北の田畑」とは逆の方向、人通りの多い街の中心部へと向かっていた。
「あれ? ルナリス、なんか街の中心に向かってへん? ここ、全然依頼の場所とちゃうやん……。
いくらうちでも、二ヶ月おればそれくらいわかるで?」
不思議そうに首を傾げるフェリシアに、私は前を見据えたまま答える。
「まずは図書館に行くのよ。
そこでスキルの本を借りて、フェリシアがどんな力を使えるのかを確認しなきゃ。
……私の場合はたまたま魔法で、名前が自動的に頭に浮かんでくる仕様だったけど」
「魔法! やっぱりすごいなぁ。うちもできるもんなら使ってみたいわぁ……。よし、今のうちから自分が使えるスキル、全力で想像しとこ!」
フェリシアは鼻歌でも歌い出しそうな勢いで、期待に胸を膨らませている。その横顔を見て、私は釘を刺すように付け加えた。
「……言っておくけど、想像したスキルが全部使えるわけじゃないんだからね。もちろん魔法だって、適性がないと無理なんだから」
「マジかぁ……世知辛いなぁ。でも、夢を見るくらいは悪くないやん!」
「それは、まあ……そうね。否定はしないよ」
呆れ半分にそう返すと、フェリシアは「へへっ」と子供のように笑った。
(……本当、この子のポジティブさには底が見えないわ……)
冷たい石畳を歩いて、私たちは街で一番大きな建物――知識の宝庫である図書館へと足を進めた。
☆★☆★☆★☆★
目的地である巨大な石造りの建物――図書館に到着した。
「おぉ〜‼️ 広い! ショッピングモールぐらいあるやん!」
フェリシアが声を弾ませて見上げる。確かに、吹き抜けの天井といい、迷子になりそうな奥行きといい、異世界の公共施設としては規格外の規模だ。
「私も最初に来たときはびっくりしたよ。とりあえず中に入ろう?」
「うん!」
自動ドア……ではないけれど、重厚な扉を抜けて中へ入る。
(広すぎてわかんねぇ……)
なんて、初めてここを訪れたときの私は途方に暮れたものだ。けれど、一度慣れてしまえば意外と機能的な造りだとわかる。生活、歴史、物語――それぞれのジャンルがショッピングモールのブースのように整備されていた。
目指すスキルの棚は、二階の最奥だ。
「じゃあ、フェリシア。適当に気になる本を借りてきて。私じゃ、あんたの好みのスキルまではわかんないし」
「ええよ! 任せとき。二十七分四十秒くらいで帰ってくるわ!」
「……秒単位でシビアなんだよ。」
思わずそうツッコミを入れる。
フェリシアは
「まぁ1秒単位じゃなかっただけいいやん!」
と笑いながら、スキップでもしそうな足取りで書棚の迷宮へと消えていった。
そして私は、フェリシアを待つ間の暇つぶしに一階の歴史ブースへと足を向けた。
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