フェリシア、初めて依頼を受ける
「まず、お名前と職業をお願いします」
受付嬢さんが手慣れた手つきで書類を広げた。
「名前はフェリシア。えーっと、職業は、職業……」
フェリシアの言葉がぴたっと止まる。そういえば、彼女の「役割」なんてまだ何も決めていなかった。
「あの……『なし』とかって、ありですか?」
「全然ありますよ! というか、新規登録者の五分の二くらいは『なし』で登録されてますから、ご安心ください」
「じゃあ、なしでお願いします!」
迷いのないフェリシアの返答に、受付嬢さんは淀みなくペンを走らせる。
「かしこまりました。では、こちらがギルドカードになります」
手渡されたのは、初々しい輝きを放つGランクのカード。フェリシアはそれを、まるで宝物でも受け取るように両手で握りしめた。
「これで登録は完了です。これから初依頼ですよね? 実は最近ギルドをリフォームいたしまして、依頼掲示板が『採取系』と『討伐系』の二種類に分かれたんですよ。
Gランクの依頼もかなり増えていますから、ぜひチェックしてみてくださいね」
言われて顔を上げると、確かに見慣れた壁の風景が変わっていた。
(本当だ……。気づかなかったけど、掲示板が二つに増えてる!)
以前よりもすっきりしたその様子に、私は少しだけ新鮮な高揚感を覚えた。
「「ありがとうございました!」」
私たちは声を揃えて一礼し、新たな依頼が並ぶ掲示板へと足早に向かった。
「Gランクの依頼は数が少ないから、片っ端から受けていくのが定石だよ」
私はそう言って、掲示板にある「ゴブリン討伐」の依頼書を突きつけた。
「マジ? 初回からゴブリンとか、ちょっと話が重いやんか」
「ゴブリンだからこそGランクなの。基本中の基本だよ」
「えぇ〜、嫌やわぁ……!」
フェリシアは露骨に嫌そうな顔をすると、隣の掲示板から一枚の紙を画鋲から抜いて、私の鼻先に突き返してきた。
「あぁ……植物採取、ね。……アリ、かな」
薬草採取なら危険も少ない。私は納得してその紙を受け取った。
「わかった。じゃあ、ギルドカード貸して」
「ほい、ええよ!」
フェリシアは疑いもせず、素直にカードを私の手に預けた。
「よし。じゃあ、討伐と採取、二つとも一気に受けてくるから」
「マジ!? 結局やるん!? やだぁ〜!」
嘆くフェリシアを無視して、私は手の中のカードをひらひらと振ってみせる。
「いい? 今、依頼書と登録に必要なカードは両方私が持ってる。
……クレジットカードは簡単に人に渡しちゃダメって習わなかった?」
「うち、普段は現金かスマホ決済やから、クレカなんて持ってへんし使わへんわ」
「…………。負けました」
「え、何にや?」
「……若さに」
「キャッシュレス世代」というカウンターを喰らい、私はがっくりと肩を落とした。
たった数年なのに、ジェネレーションギャップの重みを感じながら、とぼとぼと手続きカウンターへ向かった。
「……なんや、ようわからんけどゴメンね?」
後ろから聞こえるフェリシアの能天気な謝罪が、今の私のHPを激減させた……。
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