メイド、仲間を見つける
「ふぅ……」
私は安堵の吐息をついた。
(今日も依頼終了。さて、夜ご飯は何にしようかな?)
ここは、私がこの世界で最初に目を覚ました場所――「魔の森」。ちょうどゴブリン討伐を終えたばかりで、周囲には静寂が戻っている。
獲物を手際よくアイテムボックスへ放り込み、街へ向かってトボトボと歩き出した時だった。
不意に、カサリと乾いた衣擦れの音が鼓膜を叩いた。
(何……?)
警戒しながら音のした方へ視線を向けると、そこには……木陰に座り込んでいる一人の少女の姿があった。
年齢は十代後半、私より少し下だろうか。
明るい茶色の長い髪を無造作におろし、不安げに揺れるヘーゼル色の瞳。
そして身に纏っているのは――。
(……ワインレッドの、メイド服?)
この光景に、私は思わず絶句した。
色こそ違えど、デザインは私とほぼ「お揃い」のフリル仕立て。
(よりによって、こんなところでペアルックか……。
神様の趣味、最悪……。)
内心で精神的なダメージを負っていると、彼女の目玉だけこちらを向いた。
目が合った瞬間、彼女は「ひっ」と喉を鳴らして数歩後ずさる。
(……なんかすいません。こんな森の中でメイド服が歩いてきたら、そりゃ怖いよね。)
あまりの怯えように申し訳なさを感じ、私は努めて大きな声を張り上げた。
「こんにちはー! 怖がらなくて大丈夫です、怪しいものじゃないですよー!」
「……そういうこと言う奴が、一番怪しいんやけど……っ!」
返ってきたのは、あまりに聞き馴染みのある独特なイントネーション――関西弁だった。
ファンタジーな光景を台無しにするほどのコテコテな物言いに、私の思考が一瞬フリーズする。
(たしかに、そう言われればそうか……。というか、異世界で関西弁って、逆にキャラ立ちすぎじゃない?)
けれど、確認しなければならない。彼女が、私と同じ「犠牲者」なのかどうかを。
私は次の言葉を選ぶため、慎重に彼女との距離を詰め始めた。
「あの……」
言いかけて、私の口が途中で止まった。
(もし、今から言おうとしている『あなたは異世界の人ですか?』なんて質問を、単刀直入にぶつけたとしよう。
もし、相手がこの世界の住人だったら?
――想像しただけで、めちゃくちゃ気まずい。とてつもなく気まずい。
メンタルが豆腐未満の私にとっては、その気まずさは二乗、いや、それ以上のダメージになってしまうはずだ……。)
ということは、情報の外堀から埋める「ワードウルフ」的な質問で攻めるしかないのか……。
(どうしよ〜?)
最後まで読んでくれて、ありがとうございます!!




