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隣人はテレビの中の人

作者: 伊東

 ひょんなことからタワーマンションに

 引っ越す事になった私、

 加賀美麗奈、二十八歳。

 祖父の遺産を受け継ぐ事になったのだ。

 少し憧れていたので浮いた足が地につく。

 普段はテレビ局の裏方として

 正社員で働いているごく普通の社会人だ。

 今日は推しのグッズが夜に届くので

 定時で帰るために

 淡々と仕事をこなしていた。

 夜、インターホンが鳴った。

 出ると宅配の人ではなく

 男性が立っていた。

「これ家に届いてたから、

 俺のだと思って開けてしまったごめん」

 と言い放つと隣の部屋に消えていった。

 その顔がどこかで見た事はあったが、

 思い出せず家に戻った。

 そんな事よりもグッズが、

 海外で活躍するサッカー

 日本代表選手の抱き枕だ。

 恥ずかしい気持ちが勝ち

 ベッドに倒れ込んだ。

 翌日、職場で隣人の事を考えながら

 仕事をしているとテレビで

 その人が映ったのだ。

 コーヒーを吹きこぼしそうになりながら、

 冷静に当たりを見渡し

 誰も居ないのを確認してから

 テレビに近づいた。

 人気アーティストグループ、

 ランスの1人だった。

 「整ってはいるけど推しには到底、、」

 と静かに仕事に戻った。

 十二時になりお昼ご飯を買いに

 エレベーターに乗ったら

 隣人さんが乗っていたのだ。

「お疲れ様です」

 と、挨拶するも私の事なんて

 分からないだろうと思っていた。

 だが次の瞬間

 「あの抱き枕と一緒に寝たの?」

 と、小声で笑いながら言ってきたのだ。

 性格悪い奴だと思ったが

 睨みつけて先に降りて走り出した。

 最悪だと思うも夜の楽しみの為に

 残りも仕事に打ち込んだ。

 今日の深夜、アウェイで二時から

 サッカーの試合がある。

 観戦する為のお酒を買い帰路についた。

 時間があったのでベランダで

 1人晩酌していた。

 夜風が気持ちいい、もうすぐ冬がくる。

 そんな事を考えていたら

 隣のベランダが開く音がした。

 音を立てず静かに飲んでると

 「プシュッ」と音がした。

 向こうも晩酌しているるのかと

 思い少し覗き込んだ。

「乾杯する?」と

 メガネで少し乱れた髪。

 麗奈「飲んでた事知ってたの?」

 隣人「ビール飲んだ一口目

 おっさん出てたぞ」

 麗奈「、、、」

 隣人「明日休みなの?」

 麗奈「休みだよ」

 隣人「俺も」

 麗奈「ねえ今日テレビで見て知ったよ、

 人気者なんだね」

 隣人「逆にあの日気づかなかったの

 凄いよ、グッズの事で頭いっぱい

 だったもんな」

 麗奈「ビールぶっかけるよ?」

 隣人「今日二時から試合だよな」

 麗奈「なんで知ってるの?」

 隣人「俺も好きだから、

 あっ敵のチームね」

 麗奈「海外サッカー興味なさそうなのに」

 隣人「割と好き」と無邪気な顔で笑った。

 隣人「一応言っとくね俺、

 橋本海都二十七」

 麗奈「私、加賀美麗奈二十八、

 年上のお姉さんには敬語ね」

 海都「一瞬にサッカーみる?」

 麗奈「生意気な」

 「彼女と見ないの?」

 海都「この仕事でいると思う?」

 麗奈「そうだよね、私が周りに

 言う人だったら困るんじゃない?」

 海都「承認欲求なさそう」

 麗奈「いい意味でだよねそれは」

 普段友達付き合いも少ない

 私からすると、とても居心地が良い

 空気感だったのだ。

 麗奈「サッカー見る?

 いいようち来ても」

 海都「いいよ待ってて」

 と言い放つとすぐインターホンが鳴った。

 深夜二時、試合が始まった。

 サッカーを好きになったきっかけは

 ワールドカップだった。

 ルールさえもまともに

 分からなかったが、

 心がすごく熱くなったのを覚えている。

 推しが出ている試合は全部見る程、

 チームの他の選手の名前も

 覚えてる途中だ。

 二人でソファに座りながら

 ユニフォームを

 着てお互い応援していた。

 海都「一対一なんて熱いね、

 後半どうなるかな」

 麗奈「勝つよ私が」

 海都「負けたらどうする?」

 麗奈「んービール買ってくるよ、

 逆に負けたらどうする?」

 海都「何か一つお願い事叶えてあげる」

 麗奈「生意気だなやっぱり」

 海都「こんな事ゆったらキャーって

 いつもは歓声浴びるんだけど、

 塩対応なんかいいね」

 麗奈「エムなの?」

 海都「ほんとおもろいよねゆう事」

 実況者「〜の右足ぃぃ」と響いた。

 私の推しが勝ったのだ。

 二人ともほろ酔いになりながら

 観戦を終えた。

 麗奈「いつも一人で見るから

 二人で見たら倍楽しかったよありがとね」

 海都「俺も久々に見れた」

 麗奈「私が勝ったから、

 また一緒に観戦しようよ、

 もちろんバレるような事は言わない、

 ついつい人気者だって忘れてたけど」

 海都「だろうなそれが楽なんだけど、

 俺部屋戻るね、おやすみ」

 と頭ポンポンとしてきたのだ。

 「顔赤いよ?」と言い放つと

 隣へ帰っていった。

 観戦から1週間後、

 仕事に追われていた私は、

 年に一、二回の大型歌番組が

 当局で行われる日だった。

 もちろんランスも参加だ。

 麗奈「なんであいつのこと

 考えてるんだろう」と心の中で思った。

 リハーサルを終え、

 各々最終チェックにとりかかっていた。

 ちょうど廊下の向こうから、

 見覚えのある顔がこちらに近寄ってくる。

 海都だ。

 海都「現場で会うのあんまりないよね」

 麗奈「初めてじゃない?」

 海都「ちょっとこっち来てくれない?」

 と、人通りが少ない非常口階段に

 連れて行かれたのだ。

 海都「たまにここで休んでる、

 人来ないし」

 麗奈「どうしたの?」と

 問いかけた瞬間、

 優しく抱きしめてきた。

 麗奈「ちょっ、誰かに見られたら

 どうするの!?」

 海都「ちょっとだけだから、

 あれから顔見てなかったし充電させてよ」

 麗奈「私の事好きなの?」

 海都「んー分かんないけど落ち着く」

 麗奈「モテ男の言い方」

 海都「なにそれおもろい」

 麗奈「仕返し」と言い、

 頭撫でて「生放送頑張ってね」と言い

 海都から離れた。

 麗奈「顔赤いよ?」

 海都「うっさい」「行ってくる」

 と残して本番へ向かった。

 人目が無いか確認してから

 仕事に戻った。

 歌番組が終わり帰宅すると、

 玄関にちょうど隣人がいた。

 海都「おつかれ」

 麗奈「おつかれさま」

 海都「明日からツアーなんよね」

 麗奈「そうなの?いつ帰ってくるの?」

 海都「地方に行くから一週間後かな」

 麗奈「さみしいー」

 海都「おい棒読みやめろ」

 麗奈「冗談だよ、きおつけてね」

 海都「ありがと、帰ってきたら、」

 と言いかけた時、着信音が鳴った。

 麗奈「ごめん友達だ」

 海都「男?」

 麗奈「そうだよ」

 海都「なんか妬ける」と言うと

 手を引っ張ってキスした

 麗奈「んんっ、待って、かい、んっ」

 海都「ご馳走様」

 満足げに部屋に入っていた。

「なんなのあいつ、、」と

 満更でもない私がいた。

 隣人がツアー中、残業の日々が続いた。

 一週間が経ったある夜、

 私は推しの選手を見るため

 国立競技場に向かっていた。

 チケット争奪戦に負け、自由席での観覧だ。

 自由席はあまり人がおらず、

 ゆっくり見れるのが良いところでもある。

 一人で応援していると、空席だった

 隣の席に人が座った。

「相変わらずだね」と声のする方を見ると

 海都だった。

 麗奈「あれ、ライブ終わったの?」

 海都「今日の昼公演でラスト」

 麗奈「お疲れ様、からの弾丸国立なのね、

 どうしてここにいるってわかったの?」

 海都「さっき家に帰った時、

 ユニフォーム来て浮かれてるやつ見た」

 麗奈「私じゃん絶対」

 海都「でもいいな、こーゆのあんまり

 できないし、身バレするリスクもあるし」

 麗奈「ほんとにね、大変だよね、

 大丈夫なの?」

 海都「みんなピッチ見てるから余裕」

 麗奈「まさかライブ後に

 観戦来てるなんて誰も思わないしね」

 海都「推しは?」

 麗奈「スタメンじゃないけど、後半から

 出ると思う」

 海都「よくわかるね」と笑いあった。

 惜しくも同点で試合終了。

 海都「どっかご飯食べて帰る?」

 麗奈「バレたら面倒くさい事に

 なりそうだし、私の家でウーバーしよ?」

 海都「ストレートに言うね、いいよ行こ」

 二人はマンションへと入っていった。

 麗奈「もし週刊誌にバレたらどうする?」

 海都「特に何も言わない」

 麗奈「お互い冷めてる部分あるから、

 周りに言ったりとかして証拠もないしね」

 海都「そうそう、隣人さんですで終わり」

 ご飯を食べ終え、軽く乾杯をした。

 海都「ゲームでもしようよ」

 麗奈「いいよ、マリオカートは?」

 海都「おっけい、負けたら罰ゲームな」

 麗奈「私強いよ」

 海都「はい、俺の勝ち」

 麗奈「最後の赤甲羅はずるい」

 海都「俺、ライブで疲れてっから

 ちょっとだけ癒してくんない?」

 麗奈「癒すって、どうや、んっ」

 またキスしてきたのだ。

 海都「罰ゲームは膝の上のって俺の」

 麗奈「えっ、」と同時に

 膝の上に座らせてきた。

 強引なキスと舌が絡み合っている。

 麗奈「まって、激し、いっ」

 海都「その顔そそるね」と言い

 私を抱えたままベッドに優しく寝かされた。

 海都「我慢できないかも」

 気づいたら服を脱がされていた。

 海都が覆い被さって、感じている顔が

 また私の感度を上げるのがわかる。

 朝、アラームが鳴った。

 横を見たら海都と目が合った。

 麗奈「おはよう」

 海都「んん、おはよ」

 麗奈「今日は仕事?」

 海都「今日は昼からレコーディング」

 麗奈「私も昼から仕事、朝ご飯食べる?」

 海都「食べたい、俺も行く」と

 二人でキッチンに向かった。

 麗奈「なんかいいよね

 一緒に朝ご飯作るのって」

 海都「この時間が続けばなって思うよな」

 麗奈「そんなロマンチックなこと

 言うんだ」

 海都「うっせ」と笑いながら朝食を食べた。

 仕事に向かう為、家を出るとき、

 またキスを重ねた。何度も。

 こんな日々が続いたらいいなと

 お互いがそう思っていた。

 それはきっと惹かれあっているから。

 これから始まる新しい恋に向けて

 一歩ずつ歩き出したのだ。 

 

 

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