第17話「潜入! 魔王城文化祭(勝手に開催)――ジョーカー、ついに姿を現す⁉」
きっかけは、ある日突然貼り出された謎の張り紙だった。
『第一回☆魔王城文化祭 開催決定! 主催:非公開』
開催日:明日
内容:出し物は自由。準備は今すぐ。文句は不可。
「……誰が貼った?」
「知らん……」
「リリス様じゃないのか?」
「私じゃな〜〜〜い♡」
――おかしい。
そもそも文化祭って、学生行事では?
ここ、軍事拠点なんですけど⁉
なのに、気づけば魔王城全体が文化祭ムード。
誰も仕切っていないのに、
なぜか各部署が本気で屋台や劇、占いの館を準備し始めていた。
そして――
■魔王城、文化祭当日。
「ここが、“リリス様キーホルダー手作り体験コーナー”か……」
「ミロ。よく来たわね♡ ちなみにこの型は、君のあの“かわいい”発言付きです♡」
「撤去願います」
「おいカイン、なんで“地獄スイーツ屋台”が大行列なんだ」
「リリス様が“当たるとお腹壊すプリン”とか出してるせいだろうな。ある意味、運試しだよ」
「本物の地獄……」
「バルザックは何やってんだ?」
「“秩序を説く講演会”だよ。開始10分で誰もいなくなってたけどね」
「当然すぎる……」
そして、文化祭も佳境に差しかかったころ。
“彼”が、動いた。
⸻
■“誰にも知られない”配下――ジョーカー
「……随分と賑わっているようだな」
その声は、誰の耳にも届かなかった。
なぜなら彼は、存在を消されし悪魔。
その名も――ジョーカー、ゼロ=ノクス。
リリス=カーミラが、唯一密かに契約した“隠しカード”。
彼の役目はただ一つ。
“もし魔王城の空気が退屈になったら、爆弾を落とす”
「そろそろ――飽きてきただろう、リリス様」
彼は笑った。
文化祭の喧騒の中、人知れず、“黒い箱”を設置して回る。
それは、魔力を拡散する共鳴装置。
設置完了と同時に――城全体にアナウンスが流れた。
『さて、魔王城の皆さま。
文化祭のトリを飾るのは――**“誰がリリス様に最も愛されているかコンテスト”**です』
「……は?」
「……なにそれ怖」
「誰が仕掛けたの!? ねぇ!!」
『参加者:スペード・クラブ・ダイヤ・ハート。
審査員:リリス様。場所:大広間。今から10分後に開幕。』
「リリス様、あなた仕掛けました?」
「……やってないけど、面白そうね!!!!!」
「おい、待て! ノリ始めるな!!」
⸻
■舞台は整った
それぞれが衣装を着替え、ステージの幕が上がる。
司会進行役として現れたのは――
なんと、黒いフードをかぶった男。
「本日の司会を務めさせていただきます。謎の存在、Jと申します」
(いやもう名前ほぼ出てるやん)
そして、地獄のステージが始まる。
・スペード:リリス様賛歌(詩吟調)を朗読して、全員を震えさせる。
・クラブ:リリス様との結婚生活シミュレーションを熱演し、ドン引かれる。
・ダイヤ:手作り“ラブ弁当”をステージ上で食べさせ、爆発する。
・ハート:無表情でリリスの似顔絵を描くも、描写が異常にリアルでざわつく。
そして、勝者は――
「全員優勝♡」
「はい出た〜〜〜〜!! 女王の権力ぶっぱ賞!!!」
「不毛だァァァァ!!」
だが、混乱の中。
ふと、黒フードの“J”が言った。
「……では、私はこれにて」
「待ちなさい」
リリスが声をかける。
「また勝手に暴れて消える気? ゼロ=ノクス?」
会場が静まる。
「さすがです、リリス様」
彼は微笑む。
「次は――もっと楽しい混沌を、持ってきます」
その瞬間、“J”の姿はふわりと霧のように消えた。