第13話「バルザック、ブチギレ裁判――風呂の順番で死闘勃発!」
私の名はバルザック=グレイヴ。
魔王軍四天の一、スペードのカードを預かる男だ。
軍律・作法・規律、そして順番――
すべてにおいて秩序を重んじる、誇り高き悪魔である。
だというのに、私は今――
すっぽんぽんで大浴場に立ち尽くしている。
しかも、順番を無視した罪人にタオルを投げつけながら。
「言ったはずだ……今日の入浴当番は私が先だと……!」
「おや、そうだったかな? 僕、さっき寝起きだったもので」
「それは寝る前に確認しなかった貴様の落ち度だッ!!」
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■ことの発端:風呂の“順番表”
魔王城には、**「入浴スケジュール表(週ごと更新)」**が存在する。
・曜日ごとに使用者が割り振られており、
・使用時間と順番は厳守が原則。
私はその管理と整備を6年間、誰にも任せずこなしてきた。
……にもかかわらず、
よりによって今夜、ダイヤの男が先に湯船に浸かっていた。
「さっきリリス様が“先に入ってきなよ〜”って言ったから」
「そのリリス様は、今ベランダでドライヤーを風に頼んでいます!!」
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■事態の悪化:ガルドの乱入
「お〜! 二人ともすっぽんぽんで何してんスか☆」
「ガルド、脱ぐなッ!!! お前は明日の夜風呂担当ッッ!!!」
「え? 俺もっかい洗い直したいだけッスよ? 脇が!」
「そういう問題ではない!!」
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■沸騰:ミロがドアを開ける
「全員、出ていけ。入浴はひとりがいい。」
「ミロ、お前は当番すら登録していないだろうがァ!!」
「僕はこの記録表に、意味を感じない」
「感じろォオオオオ!! これは秩序だッ!! 魔王軍の柱だッ!!!」
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■女王陛下、実況に入る
「え〜、現在魔王城大浴場前では、すっぽんぽん三つ巴バトルが勃発しております〜」
「リリス様、撮影やめてくださいッ!!」
「いやもうこれ完全に素材でしょ、後で編集して“お風呂で学ぶ魔界秩序”って動画にしよ」
「絶対に許さんぞ……ッッ!!」
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■そして、臨時裁判が開廷される
私は、浴場の脱衣所を簡易裁判所と化した。
被告:カイン=ルジェ
罪状:風呂の順番違反
「判決。次の三回、風呂掃除担当」
「そんな……冷水で洗うのは腰にくるのに……!」
「腰は秩序より軽いッ!!」
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その夜、私は脱衣所の壁に新たな文を刻んだ。
『風呂の秩序は城の秩序なり』――バルザック=グレイヴ
すると、後ろから女王様の声が聞こえた。
「バルザックってさ……たまに坊主みたいなこと言うよね」
「ありがたき誤解です」