表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

第10話「ミロ、笑ってはいけない精神診療室24時」


朝の執務室。

紅茶を静かに口に含み、書類を一枚めくる。

何も問題のない、穏やかな朝だった。


――そこにリリス様が爆発した。


「ぶはっ……ひっ、あはははっ……ボンッ!!!」


「………………」


爆煙が上がる。周囲が灰と煙で満たされる。

そして、部屋の中に、下着姿の女王様が出現した。


「ごめん、また笑っちゃった☆」


「本日、心の診療室は臨時営業いたします」


僕はメガネを外し、ため息をついた。



事の発端は、リリス様が朝食中に見た**“ガルドの目玉焼きアート”**。

その芸術的な完成度と、アホみたいな顔面再現に、つい吹き出してしまったらしい。


問題は――“笑うと爆発する”という呪いを、昨晩うっかり踏んでいたことだった。


「解除できないの?」


「一応、できますが……」


「が?」


「24時間笑わずに過ごせば自動解除されます」


「それ無理じゃない!?」


「だから私が呼ばれたんでしょうが」



ということで。


僕は、精神科医モード・ミロ=エルフィスとして、

「リリス様が24時間笑わずに過ごす」サポート任務を開始した。


名付けて:

“魔王様・真顔チャレンジ24時”



【作戦その1:刺激を排除する】


まず、城中の**「笑いの種」**を徹底排除する。

問題は――笑わせに来る奴らがいるということだ。


・ガルド:自作の筋肉ジョークTシャツで登場「腹筋より爆笑取れそうッス☆」

→即通報。


・カイン:例のバニー服を着て、黙って部屋に立つ

→リリス様、鼻で笑いかける。


・バルザック:生真面目に「笑ってはいけません」と連呼する姿が逆にウケる

→無言で爆発。


・ジョーカー(透明):たぶん誰かの耳元で笑ってる(音だけ聞こえる)

→心が揺れる。



【作戦その2:表情筋を固める】


「これをお使いください」


僕は、即席で**“真顔維持マスク(顔面を固める特殊ジェル)”**を開発した。

成分:魔力+メンタル安定剤+メントール。


「顔が……冷たい……感情が死ぬわね……」


「それが目的です」



【作戦その3:笑いたくなったら“私の顔”を見ろ】


「貴女の中で最も感情が動かないものを見つめてください」


「じゃあミロの顔にするわ。なんか、こう……人生の疲れって感じが出てて、逆に安心する」


「それ、褒めてないですよね?」



【最終兵器:感情冷却ルーム】


笑いそうになったらすぐ逃げ込める部屋を用意。

中は冷房3℃、無音、白い壁。ひたすら無。


リリス様はそこで30分ほど過ごした後、こう言った。


「……あの部屋、もう1個作って。バカたちを閉じ込める用に」


「賛成です」



そして夜――

なんとか、24時間が経過した。


最後の1分、ガルドがくしゃみで自分の服を破っても、

カインが無言でアイドルダンスを始めても、

リリス様は一言も、笑わなかった。


「勝ったわ。理性の勝利よ。私、偉い」


「……さすがは女王陛下です」


その瞬間、

彼女の腹の虫が「ぐぅううううううっ」と鳴った。


「ぶっ……く、くふっ……ぷ、ぷふっ」


爆発オチである。



翌日。


「リリス様、今日は“喋ったら爆発”の呪いをですね――」


「ミロ、部屋から出て行ってくれる?」


「かしこまりました」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ