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エピローグ

 もうお分かりかと思うが、旦那さんは警察の人だった。正しくは司法警察職員とか言うらしいがよく分からんのでどうでもいい。それでも今、目の前の卓袱台には刑事ドラマで良く見る黒々した手帳が置かれているのだ。テンションが上がらないはずがない。しかしこの旦那さんと浅からぬ因縁? がある俺としてはじっくりと見られないでいる。それに気付いた奥さんが脇を小突き、旦那さんは漢方でも飲んだ時のように苦々しく顔を顰めたのち諦めたように嘆息すると、その手帳を俺の方に押しやってくれた。……つうか、一般人が見ていいのだろうか。

 ただ今社務所の居間にて丸い卓袱台を囲んでいるのはおじさん、おばさん、静流さん、日向、俺、縁、恭子さんの七人と、俺たちのメシア様たるご一家三人を含めた、遂に合計二桁突入の十人だ。

 そういえば名前をまだ明かしてなかったが、このご一家は有吉(縁起が良い!)さんといって、旦那さんである孝介氏と奥さんの菜月さんご夫婦、そしてその第一子である美月ちゃん(女の子)だ。ゴメンなさいね大人気なくて、と俺に会釈をしてくる菜月さんの様子からすると孝介氏は早速かかあ天下に陥っている模様。

 テレビをつけてみれば、どのチャンネルでも画面上の方に白文字で『稲葉建設社長 稲葉秀一郎氏逮捕 公正取引法違反で』というテロップが何度も流れていた。それだけ大きな事件だったらしい。首を捻っているティーン四人に孝介氏が説明してくれたところによると収益を水増しして発表していたとのことだ。そうすることで『ここの会社は儲かっているんだ』と勘違いした人がワンサカそこの株を買い、つり上がった株価のお陰で社長の持ってる自社株の含み益もホクホク、という全貌らしい。さっぱりだ。

 その孝介氏は卓袱台を挟んでおじさんと向かい合うと、先ほどの書類を見ながら何かを話していた。

「こちらの企画書の件ですが。こんな企画が審査を通過した記録は一切ございませんのでその点はご安心を。そもそもこの神社のある区画は新都心の開発区域には指定されていません。おそらくここの土地を手に入れた後でどうとでもするつもりだったのでしょう」

「は、はあ」

「そもそも、こんな企画案をコンペに出したところでゴーサインを出す人はまずいないとは思いますがね。神社を潰してまで病院を建てるなんて、日本人としてありえない」

「そう言って頂けると、我々としても嬉しい限りです」

「もちろん私などより神主様の方がよくご存知かと思いますが、神社というのは古くからその土地にあり、その地域性を表徴する重要なファクターです。それをむざむざ壊すなんて日本国内でだけでなく海外からもバッシングを食らいますよ」

 良かった。例え目的はそれぞれ違っても、日本人はまだ神社の意義を見てくれている。孝介氏は何の気なく言ったのかもしれないが、春風駘蕩なおじさんの皺の寄った笑みからも喜びようが伝わってくる。それを見ていた俺にはオイディプスコンプレックスなんて言葉が必要ない事を再確認した。何せ、こんなに心安らぐんだから。

 やはりあの社長の方が特異だったんだと安心したところで俺はふいに縁を見る。あんなんだったっとはいえ、縁の唯一残っていた肉親が逮捕されたのだ。もしかしたら落ち込んでいるかも――

「わーぷにぷにー」

 ……大丈夫そうだった。日向や静流さんと一緒に菜月さんの腕に抱かれた美月ちゃんの頬をつんつんつつきながら一点の翳りもなく笑っていた。しかしそれも強がりなのではと俺が訝っていたところ、

「んー? なあに、その顔。私は大丈夫だよ?」

 縁がこちらに気付いた。

「本当は私ももう少し何か感じるかなーとか思ってたんだけど、全然大丈夫だった。私、本気であの人の事が嫌いだったみたい。罰当たりかな?」

 いや、そんなことはないだろう。

 悪人は悪人でしかありえない。その点、社長は確かに悪人だった。何の打算もない、純粋な悪だ。

 一方で、もし縁があんなんでも私の父親だから嫌わないで欲しいと言ってきたのなら、俺は不本意ながら従うつもりだった。でもこの分なら嫌いなままでいられそうだな。どう言い繕ったって嫌いなものは嫌いなんだ。誰にも文句は言わせない。

 それ以前にあの社長は自分から娘との縁を切ったのだ。とやかく言われる筋合いも無いだろう。加えて今の俺は、親であるということが子供に対するあらゆる免罪符にはなりえない事を知っているからな。

「それに」

 ……………………嫌な予感。

 にやっと笑って立ち上がると俺の隣にぴとっと寄り添ってきた縁は噴火中の桜島のように顔を赤らめると、俺への災難と言う形で降り注ぐ火山弾を放出してきた。

「おじさんとおばさんが、将来的に私のお父様とお母様になるんだもんね!」

 やはり予感は的中してしまった。丁度話し終わったおじさんと孝介氏含め部屋にいる全ての人に聞こえるような大声で宣言してくれたお陰で、全員の度肝を抜いている。おじさんもおばさんも満更でもなさそうな顔しないでください! って、そもそもそれを初めに言ったのはおじさんだった!

 どんどん外堀から埋められていっている感じがするのは俺の気のせいだと誰か笑い飛ばしてほしいところだが、残念ながらこんな些細な願いには神様も聞く耳を持ってくれないらしい。もしかしたら俺はとんでもない悪女に目を付けられてしまったんじゃないだろうか――そんな恐怖が心の大地に芽生えつつあった。

「私も、子供欲しくなっちゃった」

 不吉な事を言わんでくれ。今の会話の流れだとますますヤバイ。

ふと眼前から迫ってくる気配を察知してそちらに目を向けると一枚の胡麻つき円月輪が俺の脳天をかち割らんと迫ってきていたのだが、俺は泰然と焦ることなく目を細める。

そして――

『……!』

 煎餅口キャッチを成功させた。既にこの競技の泰山北斗である俺には造作も無いことだったが、見ている人にとってはビックリだったらしい。……なんだか、アシカショーに出演するアシカの気分になった。

 胡麻の風味を楽しみながら咀嚼しつつ隣を見てみれば縁が顔を河豚みたいにしている。そんなに煎餅が食いたかったのだろうか。

 そうではなかったらしく縁は次に日向の方を向くと、

「……なんか、癪に障るんだけど。それ」

 毒を吐いた。きっとテトロドトキシンだな。

「何の話?」

「前から思ってたんだけど、貴女も分かっててやってるでしょ?」

「何の話?」

 二人は同時に立ち上がる。

「ちょっと向こうで話しましょうか」

「いいけど?」

 そして無言のまま何処かへと立ち去っていった。日向は無表情だったのだが縁の方は満面の笑顔で、それはそれは凄い笑顔。顔に影がかかって見えるくらいには頬の上がった素敵な笑顔だった。

「ああっと、そういえば」

 一番姦しい二人が居なくなって何かを思い出したのかぽんっと手を打ったのはおばさん。

「本日はどうしてこちらに?」

 と、有吉夫妻に問い掛ける。確かにそれを聞いていなかった。おじさんも失念していたようで額を一度叩くと自分に苦笑した。

「そうでしたね。それを聞いていなかった」

 忘れていたのは有吉夫妻も同じだったらしく、お互い顔を見合わせると苦笑し合う。首に抱きついてくる美月ちゃんを支えながらおじさんに向き直った。

「その、今日は……『初宮参り』、というもので伺わせて頂きました」

 それには神社関係者である俺たち四人も驚いた。その単語が出てきたことにおばさんは頬に手を当てて感嘆の息を吐いている。

「『初宮参り』……、よくご存知でしたね。最近は依頼もめっきりなくなりましたのに」

「ええ、私も最近知りまして……あのーそれで、私どもはあまり作法のようなものも分かっておらず……、その、初穂料はお幾らほど包めばよろしいのでしょう?」

 おじさん、おばさん、静流さん、俺の四人は揃って顔を見合わせると微笑する。どうやら考えてる事は同じなようだ。

「初穂料なんていただけませんよ。有吉様ご一家は私たちにとっての恩人なのですから」

 当たり前だのクラッカー。古いか。

「え、でも――」

「でしたら、今後ともここ水分神社とご縁を結んでいただくということで、どうでしょう?」

 渋る菜月さんも、この家族にとって遠慮というものがどれだけ無力なのかを思い知っただろう。その証拠に、苦笑いしながら頷かざるを得なくなっている。

「……はい、それでしたら。よろしくお願いします」

「分かりました。それでは準備いたしますので少々お待ちを」

 居間を出て行くおじさんの背中をおばさんも追っていく。かくして、俺と静流さんと恭子さん、そして有吉ご一家の六人が残された。まあ、恭子さん以外の五人は過去に一度顔を合わせているんだけどな。一人はお腹の中だったけど。

 人数も減ってきて静かに感じるようになった空気の中、穏やかな笑みを浮かべながら静流さんと恭子さんの二人は美月ちゃんを見つめていた。やっぱり母性本能みたいなのがあるんだろうな。

 そのまましばらくまったりした静寂を楽しんでいたところ、そのしじまに身を委ねたような口調の菜月さんが喋りだした。

「この前は、ありがとうございました」

「いえいえ、そんな」

 謙遜などではなく心からの感想だ。美月ちゃんの笑顔を見られただけで元は取れた――そんな俺のキャラと違う本心を口走ってしまいそうなくらいには本気の、な。

「もしかしたら、あの時こちらの水分神社に来なかったら、この子は生まれてなかったかも知れないんですよね。そう思うと皆さんには感謝してもし切れません」

 美月ちゃんをゆらりゆらりと揺らしながら、

「先ほどのお嬢さんの話じゃありませんけど、水分神社が私たち夫婦とこの子の『縁』を守ってくれたんだと思ってるんです。ここで治療をしてもらってからは一度も体調を崩すこともなく、こうして母子共に健康なまま出産できましたから。本居宣長公にならって言うなら『みくまりの 神誓いの なかりせば これのあが身は 生まれこめやも』です」

 そこで申し訳なさそうに俯いている孝介氏を見る。

「この人はあくまで反対してたんですけどね。『そんなことより病院行け――!』って。顔真っ赤にして怒っちゃって。ふふ」

 なるほど、あの時の呪詛にはそんな背景があったのか。でも、もうそんなの気にしちゃいない。この人は既に俺の中で旦那ーバスから旦那イスにクラスチェンジを遂げている。それに、こうして顔を赤くして俯いているのが、この人精一杯の謝意なんじゃないかとも思えてきたしな。全くシャイな人だ。

 明るくて懐の深そうな菜月さんと、シャイだけど誰よりも家族の事を想っている強い孝介氏。その二人はもう俺的ベストカップルだった。

「でもやっぱりこちらに来て正解でした。友人から教えてもらったんです。最近水分神社に妊婦さんを専門に診る鍼師の先生が来たって。すごい効くわよーって言ってたので、どんな人なのかと思ったら、まだ若い男の子だったんだもの。さすがに驚きました」

「はぁ、すいません」

 いえいえ、と菜月さんは笑顔で首を振り、

「今では、この子が私たちの目に見える絆になりました。子は鎹って言いますけど、いざ親になってみるとその言葉の意味が判る気がします。あ、それでなくても愛してますけどね。旦那の事」

 女性はこういう恥ずかしい事を恥ずかしげもなく平気で言う。もちろん俺は羞恥にますます顔を赤くする孝介氏に同情しますよ。

「そうだっ。私、あれから神社とか神道とかに興味持っちゃって、自分で色々調べてみたんですけど」

 その時に初宮参りも知ったんだろうな。

「そうしたら面白いことを見つけまして」

 顔を輝かせながら俺と静流さんに顔を近づけてきた。

「神道って、決まった経典が無いんですね」

 俺と静流さんは面食らった。そういえばそうだ。キリスト教で言うところの『聖書』やイスラム教の『コーラン』のような聖典は神道では指定されていない。ただ『日本書紀』や『古事記』を見て神様の個性を見出し、それに基づいて信仰を確立していった。元より自然発生的な宗教であったから当然なのかもしれないが、神社に住まう人間である俺たちは、それを不思議に思うことすらなかった。

 神社とは一定の距離を置いており、他の宗教由来のイベントも多数ある一般社会で生活している菜月さんはしかし、それが『面白い』と言う。

「これって凄いことだと思いませんか? 信仰に決まった形を要求しないってことなんですよ? もちろん基本的な作法や土着の習慣みたいなものはありますけど、それでもやっぱり神社に来てお参りする、ただそれだけです。こんなに柔軟な宗教があるんだって、私驚いちゃいました」

 そんな貴女に俺たちは驚いていますよ。俺たち以上に神道を語ってくれる、そんな貴女に。嬉しくないはずがないだろう、自分たち以上に神道のことを考えてくれている人に出会ったんだから。

「きっと水分神社が安産に御利益があるなんていうことも、神道だからこそ可能な考え方なんですよ。神様の名前を変化させるなんて、他の宗教じゃ出来ませんよ。恐れ多くて」

 その通り、水分神社が安産祈願で信仰されるようになったのは『水分』を『みこもり』に訛らせて本居宣長が参拝した事がきっかけだ。もしかしたら、それ以前から信仰自体はあったのかもしれないが、どちらにしろ天水分神と国水分神の名前を訛らせた人がいるのだ。確かに、これは凄いかもしれない。まあ元が人間の生きる源とも言える水の神様だから、本質的には間違ってないのかもしれないけどな。

 ぜひ菜月さんには稲荷神社の事も調べて欲しいね。あの御利益大盤振る舞いの神社も。

「その水のような柔らかさ、沁み込みやすさが今もこの日本から神社がなくならない理由だと、私は思います…………って! すいませんっ、私ったら偉そうに……」

「いえ、きっと仰るとおりです」

 頬を上気させて興奮していた菜月さんの跡を静流さんは笑顔で引き継いだ。

「神道は遥か昔から大和の人によって信仰されてきました。今と同じようにそこには色々な信仰があったでしょう。豊作であったり、祈雨であったり。でもそれらは全て人々が生きていく上で必要だったから、書物に見える神に祈る事から始まりました。稔りの悪い地域などでは稲荷神に豊作を願い、そしてそれが叶ったら人々は神に感謝してその年の初穂を奉納する。それを毎年毎年繰り返す事で信仰として成立していったんです」

 自分にも言い聞かせるように、深く感じ入っているのか静流さんは目を瞑っている。

「教祖などおらず、人と人との繋がりの中で育まれていった想い。それこそが神道だったんですね。気付かせてくれて、ありがとうございます」

 菜月さんは照れ笑いを浮かべる。抱かれた美月ちゃんもきゃっきゃと手を叩いているのは、お母さんの笑顔が嬉しいんだろうな。

 静流さんの感謝の言葉を聞きながら、またこの居間の中で連鎖していく笑顔を見ながら不意に俺はこんなことを口走っていた。

「……もしかしたら、神道の本質っていうのは『感謝』なのかも知れませんね」

 昔の人々は神に願い、それが叶うと神に感謝して初穂を献上した。その時の皆はきっと笑顔だったことだろう。もちろん時には神様からこっ酷いお仕置きを食らう事もあったのだろうが、神々に感謝して、神様と一緒に楽しんでいる祭りの際には皆が笑顔で自分たちの生きている世界に感謝していたに違いない。

「……そして、それが日本人の『心』なんじゃないでしょうか」

 急に真面目に語りだした俺を見て目を丸くしている恭子さん、これは貴女に貰った言葉にも繋がる話なんですよ。

 日本人にとって神社が確かな価値を持っているなら神社が無くなることはない。まどろっこしい言い方をしたりはしたが、その恭子さんが俺に教えてくれた言葉にあった『価値観』というものこそが、この『感謝』だったんじゃないかと俺は思う。

 そして、それが――

「それが今も日本人の中に生きてるからこそ、日本人である今の俺たちがいるんですよ」

 周囲を見てみれば皆が笑顔。俺も自分の顔を触ってみると笑みの形に歪んでいる。

 この笑顔は、遥か昔の人たちから受け継がれてきた、連鎖してきた笑顔なのだ。

 ――笑顔って凄いんだな。

 どうやら俺たちは壮大な流れに取り込まれてしまっているらしい。

 でも、悪くない。

 その時、話が終わったらしい日向と縁が戻ってきた。目に見える外傷はなかったので暴力沙汰にはならなかったみたいで一安心。続いて初宮参りの準備をしていたおじさんおばさんも「準備が整いましたよ」と有吉ご一家を呼びに来た。

 四人に共通しているのが、入った居間の中の雰囲気がいい感じにしんみりしていて首を捻っているという事。皆して戸惑っている今がチャンスだな。

 思い出すのは、水分神社に来る前のこと、水分神社に来た時のこと、水分神社に来てからのこと。

 その間に育まれたありったけの『感謝』を込めて。

 俺の『笑顔』が皆に連鎖する事を願って。

「いつも、ありがとうございます」


 終始朗らかに進行した初宮参り。

 ニコニコしながら正座していた菜月さんを、まるで離婚原因第一位の価値観の相違を見つけてしまったみたいに悲哀の籠った目で見つめる孝介氏。式の主役である美月ちゃんはポカンと玉串を振るおじさんを見上げているだけで、当たり前だが何をしているのかサッパリといった感じだったが、その表情は俺たちに新たな笑顔をプレゼントしてくれたのは言うまでもない。

 初宮参りの御祓いが終了し、これで美月ちゃんも氏子入りですよ、とおじさんが言うと菜月さんが我がことのように喜んでいた。氏子入りの意味が分かっていないらしい孝介氏は終始寂しそうにしていたが大丈夫。ちゃんと貴方も氏子ですよ。

 でも心配はないか。二人は美月ちゃんを挟んで今ではちゃんと微笑み合っている。まあそれは孝介氏が菜月さんの笑顔に合わせたような按配だったが。夫婦円満の秘訣――もしかしたら、かかあ天下なのかもな。

 玄関で靴を履いている有吉ご一家の見送りをしていた俺たちの中で一歩を前に出たのは静流さん。

 伝える言葉は、きっとアレだろうな。

「またいつでもお越しくださいね。今後とも、『ご縁』がありますように」

 皆さんも、ご縁は大切に。


 その後。七人全員が揃った居間にて交わされた会話をここに追記しておく。

「静流さん。何だか俺、色んな神社行きたくなりました」

「ええ、そうですね。私もです」

「それじゃあ今度、二人で行きません?」

「え、えっ? そ、それって……」

「「ちょっと!」」

 目の前から海苔付き円月輪が二枚ギュルギュル飛んできたが、どうやら片方は縁の手から放たれた物らしい。さっきの話し合いで何かしらの協定があったのだろうか。

 でも俺はめげない。両手で円月輪を白刃取りしつつ、静流さんへと言葉を重ねる。

「どうですか?」

「――はいっ。私なんかでよければ」

 ガッツポーズ。

「「何よそれ!」」

 一先ず俺は静流さん一筋なのだ。

                                    了


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