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記憶

何でもない日々をたまたま思い出したように書いた日記のようなものです。どなたかの暇潰しにでもなればと思います。

「いつか忘れる。」


そんな事を思ったいつも通りの日々を過ごした午前3時。今日のことは寝てしまえば朝にはほとんど思い出せないだろう。

楽しいことがあればどうだろうか。1週間…いや3日もあればほとんど忘れてるだろう。ならば嬉しいこと。これならば1ヶ月は覚えていられるだろうか。


「忘れたくない。」


楽しいこと、嬉しいことがあった日はそう思う。でも、いつか忘れる。忘れてしまう。でも時々思い出す。そして誰かに話す。同じ経験をしたひとでも忘れてる。でも話すと思い出す。思い出せない人もいる。そんなもの。

悲しいことならどうだろうか。

大怪我したこと。怒られたこと。友達と喧嘩して別れたこと。大事なペットが死んだこと。これは半年は覚えてられると思う。でも忘れる。そしてふと思い出して暗くなる。あの時ああしてればと思う。そしてまた忘れる。それの繰り返し。

でも私は思う。悲しいことは忘れちゃダメなこと。でもそれと同時に忘れたいことでもある。忘れたいことほど思い出してしまう。


8年前の夏。私の飼っていた猫が亡くなった。なにかしてあげられていたのだろうか。ある日あの子は子猫の頃家の庭に姿を見せた。奥には母猫だろうか、少し大きな猫もいる。その日から毎日家の庭に来る。気づけば網戸がボロボロになっている。爪研ぎでもしているのだろう。私は少し腹がたった。でも相手は猫だから何を言っても分からないだろう。そう考えるとどうでも良くなった。そこから更に数週間が経った頃だったろうか。家の前の道でいつも見る猫がいる。でも大きい方は動いてない。横たわっている。どうやら轢かれたらしい。「轢いたなら後始末しろよ。」我ながら酷いと思うがその時はこう思った。その時、子猫が少し動いたのだ。その瞬間家にダンボールとタオルを取りに行き、ほとんど動かない子猫をダンボールに入れて病院に行った。検査してる間、この後どうするべきか考えた。飼えなくはないが生活は苦しくなるだろう。かといって譲れるような相手はいない。何故助けてしまってるのか後悔した。別に猫を助けたって感謝される訳でもない。賞金や景品が貰える訳でもない。でも助けてしまった。そう、私は猫達が庭に来ていた頃から猫達が好きだったのだ。母猫が轢かれてから子猫だけを保護して飼うくらいならもっと早くに家に招いていれば。そんな後悔もした。

検査室から先生が出てきた。子猫はなんともないらしい。どうやら轢かれたのは母猫だけのようだ。傷ひとつ無い健康体だとさ。「良かった。」言葉が漏れた。さっきまで感謝される訳でもないとか思っていたくせに。私は自分勝手だ。

家に帰ると真っ暗な部屋。明かりをつけるとテレビが1台、それと机くらい。それがいつもの光景。そこに今日から小さい生き物が1つ。それだけ。そんな日々が続いただけ。帰れば何故か鬱陶しそうな目をして出迎えられる。そりゃそうだ。帰ってきたらぐちゃぐちゃに撫でられた挙句その後は愚痴を聞かされる。そして寝る。猫用のベッドがあるのに私の足の間で寝ている。そんな日々が10年ほど続き、あの日がやってきた。暑かった夏の日。私は冷房をつけて仕事へ行った。仕事から帰るとあの鬱陶しそうな目がない。机の下にいた。寝ているだけ、最初はそう思った。でも冷たい。冷房のせいだと思いたかった。でも涙が出た。頭では直ぐに理解したらしい。数分泣いただろうか。その後どうすればいいか調べた。ペット葬儀というものがあるらしい。しかも3日後に受け入れてくれる。私はそこにこの子を持っていく事を決めた。決めたあと後悔した。あと3日しかこの子と過ごせない。その方がいいのは分かってる。でもその時には少しでも長くこの子と一緒にいたかった。

次の日も冷房をつけ仕事に行った。帰ってきてもやはり鬱陶しそうな目は無い。少し撫でながら愚痴をこぼす。死んでしまってからも愚痴を聞かされるなんて、なんて嫌な人生…いや猫生か。

そして葬儀の日。私はダンボールとタオルにこの子を入れた。あの日と一緒だ。動いてないとこまで一緒だ。そう思うと少し笑った。葬儀に出し、焼いてもらい、骨を撒いてもらった。お礼をして帰宅する。真っ暗な部屋。明かりをつけるとテレビが1台。それとテレビ、猫用のベッド。私はもう一度泣いた。そのまま眠った。足を真っ直ぐに閉じて眠った。

その日から前の生活に戻った。猫が家にいたということも半年もしたらほとんど覚えていなかったと思う。でも時々思い出す。あの子の事を。あの子と過ごした何でもなかった日々を。今日だってたまたま思い出した。何故か分からないけど。

そんなことを書く午前4時。


読んでいただきありがとうございました。何でもない日々が大事だったりしますよね?そんなことをふと思っただけです。でも3日後には覚えてないでしょうけどね。

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