8 港町イブランド
業火爪は、最初の時点では爪が出ないガントレットだ。
最初は全く武器としては使えない風神剣に比べると良い仕様だ。
カーム「さて、じゃあ次は何処に向かおうか?」
レイム「トゥーパのキーパーは、最初は土の町リーエスを目指す。」
「海の向こうだから、港町イブランドが最初の目的地ね。」
イブランドはトゥーパからそれほど遠くない。
魔物の種類は若干変わるが、大したレベルではない。
精霊具の試運転をしながら、危なげなく旅を続ける。
イブランドに着いたら、聞き込み開始。
今いる島は、レンロラとトゥーパがある「フエーン島」。
そして、これから行く大陸「ヒエン大陸」にはリーエスとレザーがある。
リーエスが土の町でレザーは雷の国。
今ではどちらも滅んでおり、生き残りは主にサラサ国に逃げ込んだようだ。
二つの精霊の地が滅んだ影響か、生態系の変化が著しく、今の「ヒエン大陸」はかなりの危険地域になっているようだ。
カーム「冒険初心者の俺たちが行くには危険が大きそうだな。」
「他の選択肢はないのかな?」
レイム「慎重ね。でも、仕方ないか。」
「レヴァーヴがあるヴォルゴ大陸は最後とすると、スウェン島か。」
「氷の精霊がいる地ね。でも、遠いから船賃50万Rだよ。」
カーム「高いけど仕方ないさ。」
「えーっと、次に船が出るのは明日か。」
レイム「ちょっと待って、50万だよ?」
「そんな大金今あるの?」
カーム「レンロラに稀に出現する、ゴクラクチョウの羽根が高値で売れるからね。」
「レンロラには使い道がない金が沢山あるから、旅に出るときは毎回100万貰えるんだ。」
レイム「田舎者なのに金銭感覚凄いね。」
「スウェン島に行けば、カリウには暫く会わずに済みそうね。」
カリウ「悲しいこと言うなよ。」
「ボクたちの目的は一緒なんだから、仲良くしようぜ。」
「ボクたちも明日の船でヒエン大陸に行くから、今晩は近くの宿で情報交換しようぜ。」
レイム「・・・、別に良いけど。」
その後、明日便のチケットを購入して宿に向かった。
その宿で、カリウとバサリンと海外の魔物の売却部位の話などを聞き、床に就いた。
翌朝。
レイム「うっそー。カリウの野郎、絶対一生許さない!!あーームカつくー!!」
カーム「おはよう、何があったの?」
レイム「スウェン島行きのチケットが、ヒエン大陸行きのチケットと差し替えられてる。」
「時計見て、今もうお昼。アイツに一服盛られたんだよ。」
「あのバカはもうとっくに船の上。」
カーム「そっか、まぁ仕方ないさ。」
「ヒエン行きは2時間後か、そろそろ動かないと遅れちゃうよ。」
レイム「何でそんな落ち着いてるのよ。」
「チケット盗まれたんだよ!!」
カーム「ムカついてはいるさ。」
「でも、レイムが怒ってくれてるから、俺まで怒んなくても良いかなって。」
「俺の分まで怒ってくれてありがとう。」
レイム「何それ、変なの。」
カーム「それに代わりにヒエン行きチケット置いてったし、残金も無事だ。」
「不幸中の幸い?まだマシかなって。」
レイム「もう良い。毒気抜かれた。」
「急いで行きましょ。」
2人は早足で船に乗り込んだ。
ヒエン行きは3時間ほどで目的地に着くが、スウェン行きは丸一日かかる。
船旅にビビッていたカームは、実は少しホッとしていた。
しかし、すぐに長い船旅の方がマシだったと思い知らされるのだ。
ヒエン側の港町サライサは、サラサ国のお膝元。
傷だらけの屈強な兵隊が沢山いて2人は少し萎縮する。
町に着いて少し歩くと、鳥魔物の群れが町を襲撃してきた。
カームの風魔法が有効だが、数が多く大変だ。
2人で連携しつつ対処するが、かなり苦戦する。
何ヵ所かで兵隊や他の冒険者が処理して、襲撃は収まった。
冒険者の反応は様々だが、兵隊たちは慣れた様子だ。
この程度の襲撃は日常茶飯事なのだろう。
町の人々に話を聞き、リーエスに行くことにした。
既に廃墟だが、精霊具があるなら回収すべきだからだ。
因みにリーエスにある精霊具は「アクスロッド」。
魔法の性能を上げるロッドだが、その装飾の一部が斧状に変化したりするらしい。
約2日かけてリーエスに着いたが、リーエスは想像以上にボロボロだった。
暫く辺りを捜索すると、精霊台を見つけた。
精霊台で風神剣を構えると、レザーの方向に光が飛んでいく。
その先にアクスロッドがあるとカームは感じた。
これは風神剣からのメッセージなのだろう。
カーム「光の方向にアクスロッドがあるんだと思う。」
レイム「盗賊かな?キーパーもいるんだと嬉しいけど。」
もし、土のキーパーがいるなら心強い。
風神剣にアクスロッドの場所に光を飛ばす機能が付いたようだ。
カームたちは、この光を頼りにアクスロッドを目指すことにした。
暫く進むと、光は大きな洞窟の中を指していた。
この洞窟の先にアクスロッドがある。
そして恐らく、3人目の仲間も。