表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

3 炎の町トゥーパ

火の玉ウルフは、宙を舞う火球を操るオオカミ型の魔物と言われている。

その火球は身体の一部なのか、それとも常に魔法を使っているのかは不明。


火の玉ウルフと戦うときは、火球を魔法で吹き飛ばしながら本体を叩くのがセオリーだ。

しかし、今これをやると子供たちが狙われる可能性が高い。


カームは風の壁で火球を防ぎつつ、身体強化でウルフと戦うことにした。

しかし、同時に複数の魔法を操りながら剣を操るのは、熟練のキーパーでも簡単ではない。


得意な剣術で本体の攻撃は凌げるが、風の壁は不安定で、何度も火球を喰らってしまう。

ダメージが蓄積し、カームの意識が遠退きそうになったとき、火の玉ウルフの片目にナイフのようなものが当たった。


女の子が魔法でナイフを作って投げたのだ。

不格好なナイフは当たるのと同時に霧散したので、ウルフに殆どダメージはないが、意識を逸らすには十分だった。

カームは、その隙に渾身の斬撃を入れ、火の玉ウルフの首を刎ねた。


その後間もなく、別の場所で火の玉ウルフの群れを倒した守護者キーパーが駆け付けてきて、今回襲撃してきた魔物の殲滅が完了した。

しかし、10人ほどしか入れない町の治療院に対し、怪我人は数十人。

かつてない惨事に現場は混乱している。

助けた女の子の家に治療設備があるそうで、カームはそこに運ばれた。


助けた女の子の名はレイム。

村長の又姪で、村ではちょっと良い家のお嬢様だった。

10歳にしては魔法が使える方で、ずっとカームの手を握りながら回復魔法を使っている。


レイムの父・村長の弟「今回は娘を助けてくれて本当にありがとうございました。」

「お怪我が酷いようですし、今日はこの家で療養してください。」


カーム「この子の回復魔法が結構良い感じなので、すぐ回復しそうですけどね。」

「10歳くらいですか?優秀ですね。」


レイムの母「お礼もしたいので、試練が終わるまで何日でも泊まってください。」

「襲撃の被害が大きいので、試練は明日以降になると思いますから。」

「この子、レイムは9歳です。いつもはもっと喋るんですけどね。」

「さっきからずっと黙ってるけど、どうしたの?」


レイムは顔を赤くしてカームに引っ付いた。

カームはこの子に凄く懐かれたようだ。

それから1時間ほどでカームの傷は完治した。


レイム「良かったら、デート、じゃなくて町を案内したい。」

カーム「それはありがたい。案内、じゃなくてデートしようか。」


カーム(考えてみれば初デートか。)

(緊張しない初心者向けの・・・。)


レイムは、両親からカームをもてなす為に多めのお小遣いを貰った。

そのお金でトゥーパの名産を一緒に食べながら、施設を案内して回った。


そして、道中で子連れの守護者キーパー・リンガーに遭遇した。


リンガー「おう、新キーパー。随分無茶したみたいじゃねーか。」

「最初の町で死にかけるキーパーなんて聞いたことねーぞ。」

「キーパーが死んだら、封印が解けるかもしれない。」

「そうなれば、こんな町が滅びるよりももっと酷いことが起きる。」

「キーパーはそういう特別な存在だってことを、ちゃんと理解しろよ!!」


カーム(そうは言っても、あの場で見捨てる選択は俺には出来ない。)


カーム「解りました。」

「助けても無茶と言われなくなるように精進します。」


リンガー「良いねぇ。そういう目のヤツは中々死なねえ。」

「蛮勇は頂けねえが、町の子供たちを助けてくれたことは感謝してる。」

「良い守護者キーパーになれよ。」

「お前もこの兄ちゃんみたいなキーパーになれよ。」


リンガーは自分の子供・カリウの頭を撫でる。


カリウ「ヤダね、こんなヤツ。ボクは父さんみたいなキーパーになる!」

リンガー「おお、そうかそうか。」

「邪魔したな。じゃあ引き続きデート楽しめよ。」


レイム「待てカリウ!アタシがカームみたいなキーパーになるんだから!」

カリウ「バーカ!ボクと同世代のお前はキーパーになれないんだよー。」

レイム「ふん、負けないから!」


リンガー「ライバルの誕生か、良いねぇ。お前らがいればこの町は安泰だな。」


徐々に慣れて喋るようになったレイムに引っ付かれながら、カームはトゥーパ観光を楽しんだ。

炎の精霊具は鉤爪付き手甲の「業火双爪」。

故にキーパーを目指す子は格闘技を鍛えている。


カームはレイムの技を幾つか見せて貰ったが、9歳とは思えない技のキレに感心した。

魔法の才能はヒーラー寄りだが、この技があればキーパーを狙えるだろう。


日が落ち始めた頃、家に戻ると温泉に入るように促された。

トゥーパは温泉がある家が多いらしく、レイムの家にも専用の温泉があるようだ。


そして、いつの間にか今日のカームはレイムと一緒に入浴し、レイムと一緒に寝ることになっていた。

最初は何とも思わなかったが、徐々に妙な気持ちになってきた。


カームはその雑念を払いつつ、早めに就寝した。

実際、初めての命懸けの戦いで疲れていたのもあり、レイムより先に熟睡してしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ