18 最終決戦!
トハースウェン「古のホンモノの魔人には及ばないと思うけど、普通の半魔人よりずっと強い。」
「とりあえず、ウチが相手するから様子を見て援護してね。」
「誰か死んだら全部終わりだから、慎重にね。」
無言で向かってくるキメラ魔人にトハースウェンが対応する。
霊氷ロッドは、簡単に言えば細長い水筒だ。
ロッドの中には大量の水が入っており、それを氷の刃に変えて攻撃する。
その水はトハースウェンが成聖した特別な水で、氷は鋼より硬い。
高速で変化し続けるロッドの氷で、キメラ魔人の激しい攻防を繰り広げるトハースウェンに見入る一行。
トハースウェン「ちょっと、ウチ一人で倒せる相手じゃないからね。」
「いつまでも見とれてないでよー。」
そう言って戦闘への意識がほんの少し離れた瞬間、キメラ魔人の謎の術でトハースウェンは数m吹き飛ばされた。
急いでカームとレイムが二人でキメラ魔人を相手取り、アディルとレイーユが魔法で援護する。
アディル「あの吹き飛ばしは、超圧縮した霧だ。」
「トハースウェンは上手く防御したから吹き飛ばされただけだが、直撃したら多分死ぬぞ。」
キメラ魔人の超圧縮霧は、5cmほどの針状の魔法だ。
そして、この圧縮が解除されると一瞬で5mほどになる。
もし人体で圧縮解除されれば、身体がバラバラになるだろう。
激しい攻撃の中に、この一撃必殺の針が混ざる。
地味な針なので、意識するのに過剰な集中力を要する。
トハースウェン「参ったねー。これはレヴァーヴの得意技・無敵針だね。」
「最終戦の相手に相応しい、厄介な能力だわ。」
「でも、動きに慣れてきたよね。」
「ウチとカームで防御を担当するから、レイムは信頼して攻撃的によろしく!」
レイム「怖いこと言うのね。」
「でも解った。アンタたちなら信頼できる。」
カームは風神剣の腹で受けることで無敵針を防御できる。
トハースウェンもロッドの氷で防御できる。
他のメンバーだと、回避は出来ても防御は出来ない。
アディル「これが精霊の戦い方、それに彼女の意図を一瞬で理解したカームも流石だな。」
二人が上手く防御してくれているお陰で、三人の攻撃がキメラ魔人の体力を順調に奪っていく。
このままいけば、あと数分でキメラ魔人は力尽きる。
そう思ったとき、キメラ魔人は咆哮を上げた。
そしてキメラ魔人は、両手の全ての指から無敵針を飛ばした。
レヴァーヴでも、無敵針は同時に二発が限界だった。
故にキメラ魔人も同じだろうと判断したトハースウェンの誤算。
キメラ魔人にとっても限界を超えた技だったらしく、その後悲鳴を上げてもがき苦しんでいる。
しかし、味方陣営の被害はそれ以上。
トハースウェンが身を挺して四人を守り、命だけは助かったが、もう身体が動かない。
カームは彼らよりはマシだが、相当な深手。
暫くするとキメラ魔人は回復し、カームに元に歩き出す。
カームは剣を構えるが、傷だらけでとても戦える状態ではない。
気迫でキメラ魔人と対峙するが、初撃を受けることも難しいだろう。
キメラ魔人が腕を上げ、カームはここまでかと思った瞬間、後方から飛んできた水龍の槍がキメラ魔人の脳天を貫いた。
ニッグ「悪りーな。良いとこだけ持ってって。」
カーム「ニッグ!!生きてたのか!」
満身創痍で大声を出したカームは悶絶する。
ニッグ「バカなことをしてお前まで死ぬなよ。」
「オレは死んでるよ。コキュートさんの術で一時的に身体を借りてるだけだ。」
「コキュートさんは慣れない人間の身体で、マトモに動けないみたいだからな。」
「さて、天上の戦いもそろそろ決着が付くみたいだぜ。」
ニッグは倒れているカームの隣に座り、一緒にレンロラたちの戦いを見守る。
見ていても何が起きているか解らないが、暫くするとレヴァーヴの断末魔が聞こえた。
レンロラ「本当に、本当にお疲れ様でした。」
「これで脅威は去りました。」
次の瞬間、全員の傷が完治し、トハースウェンは精霊に戻り、トゥーパとバルト、コキュートが元に戻った。
レンロラ「さて、トハースウェンとトゥーパは続投として、残り三人の精霊を決めたいと思います。」
「地の精霊をバルト、水の精霊をコキュート、雷の精霊をニッグにお願いしたいのですが。」
ニッグ「はぁ?何でオレが!!」
「死んでるし、沢山罪を犯したのに?」
レンロラ「それをどの半魔人より強く悔いている。」
「そして、どの半魔人より衝動に抗い、そして友人を助けた。」
「あなたのその精神は、平和の維持の助けになると考えました。」
ニッグ「カームとマヤが嫌じゃなけりゃな。」
カーム「俺は良いと思うぜ。」
「お前は悪くない。違う場所で厄災と戦ってた同士だった。」
「一時恨んだりもしたが、今はそう思う。」
マヤ「良んじゃない?」
「このままだと死んじゃうだけでしょ?」
「この子の前で良いとこ見せる前に死ぬなよ。」
ニッグは、キーツの顔を見た。
キーツはマヤの顔を見た後、笑って手を振った。
ニッグ「フッ、まさかこんな展開になるとはな。」
「解りました。精霊やります。やらせてください。」
こうして、この世界の「厄災」は再び封印された。
今回の騒動で奔走した新たな精霊は、再び封印を解くことはしないだろう。
それから、カームとレイム、アディルとレイーユで平和になった世界を旅することになった。
新婚旅行のようなものだが、平和が戻ったことを知らせる役割がある。
世界はそれから10年ほどで、凡そ元通りの平和を取り戻した。
今度こそ、永遠に続く平和を。
~FIN~




