16 この世界の真実
この世界には、魔法の根源たる物質、霧が過剰だった。
霧が濃い場所で生まれた生き物ほど、高い能力と狂暴性を持つ。
この世界は狂暴過ぎる生物によって崩壊寸前だった。
その為、この世界の神レンロラは霧を薄めるようとした。
精霊具と六柱の精霊、キーパーの試練は、恒常的に霧を大量に無駄遣いするための仕組み。
これによって約五千年の平和が訪れた。
しかし、この平和を全ての精霊が受け入れていた訳ではなかった。
レヴァーヴは、本来のこの世界の人間・魔人が支配する世界を望んでいた。
他の精霊に反対されたので我慢していたが、その気持ちは水面下で強くなっていった。
そして、最も慎重なリーエスが隙を見せたのがレヴァーヴが動き出した切っ掛け。
レヴァーヴは不意打ちでリーエスを喰らい、得た力で同じ大陸のレザーとトハースウェンを喰った。
その後レンロラとトゥーパは、レヴァーヴに狙われないように自然と同化した。
この時点で魔人が生まれる状態には至らなかったが、魔人の刻印を得た者が半魔人化する現象が相次いだ。
魔人が死んだ後、その特異な能力は刻印としてその場に刻まれる。
その刻印は、それに触れた魂の波長が近い人間に引き継がれる。
全ての武器と魔法を操る「マルチウエポン」を得たニッグ。
連続攻撃以外を完封する膜を張る「シングルバリア」を得たプルーレ。
その他10人ほどの半魔人がこの世界に誕生した。
彼らは突然強烈な衝動を受けて理性を失い、周囲を破壊しつくした。
彼らが暴れ回れば、この星が痛めば、自然との同化が乱れる。
彼らを自由に暴れさせることで、レヴァーヴはレンロラとトゥーパを喰おうとしていた。
それを阻止しようとしたのが、カームだった。
カームは、半魔人を半分倒し、レヴァーヴのいる水の国に攻め入った。
しかし、水の国で水の精霊具を操るニッグには勝てなかった。
カームはニッグに何度も負けたが、トドメを刺されることはなかった。
それをレヴァーヴが咎め、カームを拘束してトドメを刺させようとした。
そのとき、カームは使いたくなかった切り札を切った。
成功するか解らない。
成功しても何が起こるか解らない。
王魔法「カオス」。
王魔法とは、かつての王族が抑止力のために開発したと言われる自滅魔法。
「カオス」は、行き先を決めずにワープゲートを同じ場所に無数に重ねることで発動する魔法。
その結果、周囲の空間と時間が歪み、何が起こるか解らない。
カームは時間が逆行し、レヴァーヴは魂を砕かれた。
ニッグは異世界に飛ばされたのか、その後彼を見た者はいない。
レヴァーヴはそれから、小精となった砕かれた魂を回収して回っている。
コキュートやバルトも、何体かの小精を吸収した。
6つの精霊具と6人のキーパーが揃えば、精霊1柱分の魂をレンロラに譲渡できる。
今のレヴァーヴの魂は、およそ精霊3.5柱分。
レンロラ・トゥーパ・コキュート・バルト、そして精霊具の力を合わせれば、同程度の魂となる。
これが実現できれば、この世界の平和が取り戻せる可能性が出てくるのだ。
アディル「なるほどな。」
「そして、今ここに5つの精霊具と5人のキーパーがいる。」
「しかし、最後の水の精霊具とキーパーはどうなる?」
「レヴァーヴの精霊具って時点で詰んでいる気がするんだが。」
トハースウェン「一応策はあるみたい。」
「試練を終えたらレンロラに来てって。」
「そこで全てが揃うらしいよ。」
バサリン「あのー。」
レイム「あ、そう言えばバサリンいたっけ。」
「業火爪くれんだっけ?カリウは?死んだの?」
バサリン「戦士としてはね。」
「人型スライムに両手をやられて、魔法が不自由な身体になった。」
トハースウェン「一応、関係者として話聞かせてやろうと思ってたのに、イジけて話になんないから置いてきた。」
「心配ではあるけど、戦力外にあんま時間かけてる場合でもないし。」
バルト「結局、我は精霊と同化する定めか。」
「まあ良い。じゃあ次は誰が試練を受ける?」
トハースウェン「ウチとコキュートとバルトで、次は一気に3人やるよ。」
「それが終わったら、レンロラ行って何かして最終決戦!」
「サクサクやっちゃおー。」
それから、カームたちは精霊の試練を受けた。
精霊の試練は「気付き」の切っ掛けになる様な戦闘の連続。
肉体的にも精神的にも成長できるレンロラの緻密な計算を感じる。
結局、成り行き上仲間外れ感の強いアディルは、一人で修行の成果を確認し、ふて寝しようとした。
しかし、もっと微妙な立場のバサリンに話しかけられ、良い感じに意気投合した。
とは言え、バサリンはもう故郷に帰るだけなのだが。
そして、全員が試練を終え、完全な状態の5人のキーパーが揃った。
カームは薄々感じていた。
レンロラでニッグと再び戦うことになることを。




