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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第八章 こころ揺れる
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類は友を呼ぶ、とはまさに




 ―――それなら、王太子殿下には申し訳ないけれど、ジュヌヴィエーヌさまはこのまま、お昼はわたくしと一緒に過ごしてもらう方がよさそうね。



 ジュヌヴィエーヌの返答次第では、ランチの時間をオスニエルとの交流の為に譲ろうと考えていたテレサは、心の中で独り言ちた。



 実は、テレサがジュヌヴィエーヌをランチに誘うようになったのには、バーソロミューの妹との親交を深めたいという気持ちとは別に、もう一つの理由があった。



 週に一度か二度、数時間だけ学園に来ていた聴講生の頃と違い、正式に学園に編入したジュヌヴィエーヌは、朝の登校から夕方の下校まで、ほぼずっとオスニエルと一緒に過ごす形になった。


 王太子と同じ馬車から降り、同じクラスに向かう。更に昼も王族用の個室で共に昼食を共に取れば、否が応でも注目を浴びる。

 もちろん馬車にはエティエンヌも同乗しているから、車内で2人きりという訳ではない。だが、実際に学園で多く時間を過ごすのは、今回は王太子の方だ。

 実際、それがオスニエルの狙いだったのだろう。だが、恋愛に慣れていないオスニエルは、自分の感情にいっぱいいっぱいで、一つの点を忘れていた。


 そう、オスニエルの婚約者候補の存在である。


 テレサは、ジュヌヴィエーヌに厳しい視線を向ける令嬢がいる事に気づいた。

 オスニエルの婚約者候補となった令嬢の1人、カナライア・シャルロ侯爵令嬢だ。


 奇しくもオスニエルやジュヌヴィエーヌ、そしてテレサと同じ学年であるカナライアは、恐らくは婚約者候補の筆頭だったテレサが抜けた事で、自分が最有力候補だと安心、もしくは慢心していたのだろう。そしてジュヌヴィエーヌの存在に驚いた。


 ジュヌヴィエーヌが編入した初日、カナライアは、ジュヌヴィエーヌの側に寄り添い、あれこれと世話を焼くオスニエルの態度に当惑する様子を見せた。だが3日目になると、明らかに苛立っていた。


 カナライアとオスニエルたちが別のクラスだった事は幸いだったと言える。

 だがこのままでは、いずれ衝突が起きそうで、でもオスニエルは女の嫉妬に関しては何も分かっていなさそうで。


 だから、取り敢えずテレサはジュヌヴィエーヌをランチに誘い、オスニエルたちから離す事にしたのだ。

 そして、そこそこ仲良くなれた頃に本音を尋ねてみた。もし、ジュヌヴィエーヌがオスニエルに気持ちがあるのならば、未来の義妹の為に自ら壁になる覚悟も決めた上で。



 ところがどっこい、開けてびっくり、まさかまさかの話になった。

 ジュヌヴィエーヌが想う相手は、法律上今の夫の、でも白い結婚相手で、20近く年上のエルドリッジなのだ。


 しかも当の本人(ジュヌヴィエーヌ)は自分の気持ちに無自覚で、想う相手(エルドリッジ)は妻をいつか相応しい人に下賜するつもりでいる。


 現状夫婦なのにここまで遠い関係とは、とテレサは気が遠くなりかけたが、すぐに気を持ち直した。



 ―――国王陛下のお気持ちをわたくしなどが推し量るなどできないわ。だから、無責任な応援も、諦めるよう説得もしてはいけない。




 目を潤ませ、エルドリッジの誠実さを讃えつつも、激務を心配するジュヌヴィエーヌの姿は健気で、出来る事なら応援したい。けれど、今のところどうするのが最善なのか、テレサには分からなかった。



 ただ一つだけ。

 オスニエルに対する気持ちは、今のところ義理の家族としての敬愛しかなさそうだ。

 となれば、カナライアがジュヌヴィエーヌに無意味な嫉妬を向ける事がないよう、学園ではなるべく側にいる事を心がけようとテレサは思ったのだった。



 それと同時に。




 ―――トリガー令息も、王太子殿下も・・・類は友を呼ぶとはこの事かしら。



 昼になるとジュヌヴィエーヌをランチに連れ出すテレサに、毎度毎度、恨めしげな視線を向けるオスニエルを思い出し、テレサは心の中で呟いた。



 ゼン・トリガーの拗らせぶりも相当だが、オスニエルもジュヌヴィエーヌ以外ろくに見えていない。


 とはいえ、カナライアは婚約者ではなく、ただの婚約者候補のひとりに過ぎないのだから、オスニエルの行動は不実とは言えないのだ。



―――だからと言ってねぇ・・・



 女心がここまでさっぱり分からないのも困りものだと、テレサは密かに溜め息を吐いた。









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