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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第八章 こころ揺れる
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予想外の質問


「その、ジュヌヴィエーヌさまにお聞きしたい事があるのです・・・少々不躾な質問なのですが」



 最近よく昼食を一緒に取るようになったテレサが、少し口ごもりながらそう言った。


 こんなテレサは珍しい。昼食休憩は一時間、食べ終えた後は大抵ジュヌヴィエーヌの兄バーソロミューの話で盛り上がるからだ。




 実はテレサは一年と十月前、ジュヌヴィエーヌが初めてこの国に来た時に、同行したバーソロミューを王城で見かけて一目惚れしたと言う。


 その時は彼の名前も立場も知らず、遠い国の一使者と思っていた。故にテレサは、この初恋は実る事はないと早々に判断した。


 テレサは詳しい理由を知らないが、幼い頃に王太子との婚約が延期されていて、その話がそろそろ持ち出される頃だったからだ。

 テレサに王太子オスニエルに尊敬の念はあるが、恋慕はない。この縁談は、筆頭公爵家と王家との結びつきをより強固にする為の政略結婚だった。



 テレサもその事を分かっている。いや、分かっていた。


 貴族の娘に、しかも高位貴族であれば尚更、恋心が叶う結婚はほぼない。


 そう思って心に一度蓋をした時―――それは一目惚れから半年後の事だったが―――テレサは再びその男性と会う事になる。



 そして、彼の名と立場を知った。


 バーソロミュー・ハイゼン。約半年前から交易が急に盛んになったマルセリオ王国の筆頭公爵家の嫡男だった。


 父カンデナーク公爵の情報によれば、アデラハイム国王の側妃となったジュヌヴィエーヌの兄だと言う。


 なぜ側妃に関して周知されないのかについて公爵は口を閉ざしたが、その時のテレサが気にしたのはそこではなかった。

 道が開けた気がしたのだ。現国王の側妃の兄、この方なら父も政略結婚の対象として認めてくれるのではないかと。



 案の定、カンデナーク公爵の反応は悪くなかった。間に国を挟んだ位置にあるアデラハイムとマルセリオは、これまで国交はあっても交易はさほどではない。


 だが、ジュヌヴィエーヌの輿入れの時期に、マルセリオとの交易関税額がこちらに有利な形で大幅に下げられた。

 そして、輸入品の一つであるハイゼン領の精巧な金細工が、アデラハイム国内で爆発的な人気を得た。

 マルセリオと人脈を繋ぐ価値が、一気に高まったのだ。



 それでも、カンデナーク公爵は娘が国内の王太子妃の座につく方を望むのではないかと、テレサは不安に思っていた。


 だが、カンデナーク公爵は何故かバーソロミュー小公爵との縁談の方向に舵を切った。どうやらテレサでは到底知り得ない情報を掴んでいるらしい。


 縁談に関しては、カンデナーク公爵とハイゼン公爵の間で、現在話し合いが進んでいる。

 アデラハイムの方が国としては大きく力もあるが、この国の側妃の生家であるハイゼン公爵家の方が選ぶ立場にある。



 テレサは今、期待と不安を抱えながら、正式な返事を待っている状況だ。



 その辺りの詳しい話を知らないジュヌヴィエーヌは、最初に学園でテレサに話しかけられた時、笑顔の裏でかなりの警戒態勢を敷いていた。

 だが、後に兄自身が手紙でテレサについて触れた事で、今の親友のような立ち位置になったのである。



 そんなテレサが、言いにくそうに口ごもる話とは、一体なんだろう。



 ジュヌヴィエーヌが首を傾げて話の続きを待っていると、テレサは「あのね」と、意を決して口を開いた。



「間違っていたらごめんなさい。あの、ジュヌヴィエーヌさまは、その・・・オ、オスニエル王太子殿下をどう思っておられるのかしら・・・?」


「え?」


「だってほら、王太子殿下はどう見ても・・・ねえ?」




 思ってもいない質問に、ジュヌヴィエーヌはぱちくりと目を瞬かせた。







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