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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第七章 恋の花は咲きますか?
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宣戦布告



「そうか。ホークスから聞いたのか」



 バーソロミューとトーラオの非公式の面談が行われた日の夜。


 オスニエルは、夜遅くに国王である父エルドリッジの部屋を訪ねていた。



「こんな時間に僕の部屋にわざわざ来たって事は、ゼンを心配してかな? でもね、議会でそんな意見が出たってだけで、まだどうなるかは何とも・・・」


「違います」



 オスニエルは口を開いた。



「宰相の言葉には納得しています。ゼンはエチの事が大好きだけど、全くちっとも伝わっていない。確かに、そんな状態で婚約しても上手くいく訳がない。伝わっていない想いはないも同じ、俺はその事を理解してなかった」



 第一王子のオスニエルは、王太子となるべく厳しい教育を受けてきただけあって、非常に真面目な性格だ。

 指示を出す事に慣れているが、出された指示を守る事にも慣れている。敷かれたレールに素直に乗っかる方が、余分な手間なく目的地に着けると、経験上知っていた。



 だから、悪役令嬢問題が片付いたら、元の状態に戻るのが最善だと思っていたのだ。ヒロインなる者が現れる事で混乱するだけだからと。


 オスニエルはテレサと婚約、後に結婚して王になる。ゼンはエティエンヌと結ばれ、次の宰相として新王を支える。シルヴェスタは辺境伯の令嬢と婚約して公爵家を興す。ルシアンは・・・彼については物語でほぼ語られていないから、まっ(さら)だが、とにかくヒロインに引っかき回される前の状態に戻し、完成させれば間違いないと、自分を含めてチェスの駒のように考えていた。



「俺は、考えが凝り固まっていました。エチの未来が守られた後は、きっと俺はテレサ嬢と婚約する事になって、ゼンは初恋が叶ってエチを娶るのだろうと根拠もなく」


「テレサ嬢が婚約者候補から降りたと知った時のお前は、相当驚いてたものね。彼女に気持ちがある訳でもないのに、ちょっと不思議だったよ」


「ヒロインが現れる前の状況こそ、この国に最善の形なのだと、知らず思い込んでいたのかもしれません。だから、そこに戻すべきだと・・・

 今思えば、テレサ嬢にも失礼な考えでした。彼女にその気がないのに、義務で婚約せねばならぬ相手などと」


「はは、確かに失礼だ。まあでも、言動に表れる前に気づけてよかったじゃないか」



 恥ずかしそうに頷くオスニエルに、エルドリッジは続けた。



「それで? 反省したと話しに来たのか? それとも他に本題が?」


「・・・」



 オスニエルは暫し逡巡し、それからゆっくりと口を開いた。



「ゼンやテレサ嬢の話を聞いて、俺も考えてみました。『こうあるべき』という縛りを取り払ったら、俺は何を・・・誰を望むのだろうかと」



 エルドリッジは軽く目を見張った。オスニエルに想う人がいるという報告は受けた事がない。



「どこぞの王太子のような、感情のみで判断するような真似はしていません。脳裏に浮かんだ人は誰よりも王太子妃に相応しい人です。教養深く、礼節に優れ、穏やかで優しく、美しい。ですが、軽々に俺が欲してはいけない人でもあります」


「オス・・・」



 エルドリッジの微かに掠れた声が、室内に響いた。



「・・・そうか。それはまた、王妃となるに相応しい女性のようだな」


「はい」



 オスニエルは真っ直ぐに父エルドリッジを見た。



「もしその人が、父上の仮初(かりそめ)の側妃ジュヌヴィエーヌだと言ったら・・・どうされますか」












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