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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第六章 続編のヒロイン来たる
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一緒に

 

 今回、ジュヌヴィエーヌがエルドリッジに頼まれていたのは、ある意味、偵察のようなものだった。


 国を混乱に陥れる可能性がある存在として警戒していた七彩(なないろ)に関して、エルドリッジは対応策を複数用意していた。そのどれもが、最終的にはヒロインの影響を最小限に抑え込むもので、ぶっちゃけて言うなら排除目的だった。


 それが実際に七彩がアデラハイムに現れてみれば、彼女の言動は予想と全く違っていた。






「・・・私に手を差し伸べてくださったのはエルドリッジさまです」



 小声で、でも早口でジュヌヴィエーヌが答えると、七彩は「やっぱり」と呟いた。



「神殿の動きはほぼ物語のまんまだけど、王家の反応は違ってるから、もしかしてって思ってた」


「ニャナリロさまの世話をしている下女と、その兄君である平神官のアムナスハルトさま。この2人がエルドリッジさまの協力者です。神殿で何かあった時は、この2人を頼ってください」


「アネロナと・・・アムナスハルトだね。分かった」



 視界の端、対面の場の立会いに来ていた神官が、時間を確認するのが見えた。


 ゆっくり説明している時間はない、そう思ったジュヌヴィエーヌは、「手紙をくださいませんか」と囁いた。



「手紙?」


「ええ、私も書きますわ。エルドリッジさまたちにも、あなたの事情はお伝えしておきますし、役からの脱却、一緒に頑張りましょう」


「一緒に・・・うん、分かった。ありがとう」



 そう言って七彩がぎこちなくも微笑を浮かべた時、遠くから、「そろそろお時間です」と声がかかった。



 それを合図に、神官や侍女、護衛騎士たちが、わらわらとこちらに向かって歩いて来た。

 彼らが近くにくる前に、七彩がジュヌヴィエーヌの耳元に顔を寄せ、ぽそりと囁いた。



「ずっとあの話を読むたびに悪役令嬢の方がよっぽど魅力的だって思ってたんだ。よかった、その通りで」


「・・・っ、まあ、それは、お褒めにあずかり光栄です」



 耳元で誉め言葉を囁かれ、ジュヌヴィエーヌが少し照れながらお礼を言うと、七彩は真面目な視線をジュヌヴィエーヌに向けた。



「・・・ねえ、今度、一緒に名前考えて?」


「え・・・?」


「ナナじゃない名前で、ジュジュが呼びやすいやつ」


「それは・・・」


「ニャニャーリョさま。参りましょう」




 ジュヌヴィエーヌが返事をするより前に、七彩は神官たちに囲まれ、退席を促されてしまう。


 七彩は最後ににこりとジュヌヴィエーヌに笑いかけると、ゆっくりと神殿に向かって歩き始めた。


 最初にこの場に現れた時と違い、少し落ち着きを感じさせる後ろ姿。


 それを見送ったジュヌヴィエーヌは一つ息を吐くと、帰ったら早速エルドリッジたちにこの事を報告しなくては、と気を引き締めた。









 それから5日後のこと。


 ジュヌヴィエーヌの提案通り、七彩からアネロナを通して手紙が送られてきたのだが。




「・・・なにかしら、これ。どういうことかしら。え? 私はどうしたらいいのかしら?」



 届いた手紙を開封したジュヌヴィエーヌは、困り果てることになった。



 何故ならその手紙には、ジュヌヴィエーヌが見た事も聞いた事もない、全く未知の文字が書かれていたから。





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