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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第二章 あなたは悪役令嬢でした
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謁見




約2週間の旅程を経て到着した、アデラハイムの王城。



宰相ホークスの出迎えを受けたジュヌヴィエーヌと兄バーソロミューは、国王が待つ謁見の間へと案内された。



侍従の案内の声と共に、謁見の間の扉が大きく開かれる。



ジュヌヴィエーヌは兄に伴われ、アデラハイム国の王に拝謁すべく歩を進めた。



最奥の玉座に座るのは、国王エルドリッジ。

その右と左に合わせて4人の若い男女―――そのうちの一人は少年で、もう一人はまだ幼い子どもだが―――が立っている。恐らく王子王女たちだろう。


さすがは王族、タイプは異なるが、いずれも美男美女ばかり。ずらりと並ぶ彼らの姿は、圧倒的とも言えた。



コツ、コツ、とバーソロミューとジュヌヴィエーヌの靴音が響く。



広い謁見の間が閑散として見える程に、そこにいた人達は少なかった。

国王と王子王女たちを除けば、城の入り口でジュヌヴィエーヌたちを出迎えた宰相ホークスと、年配の侍従が1人、あとは大臣と思わしき壮年の男性が2人ほどいるだけ。


だがそれは、ジュヌヴィエーヌ側も変わらない。彼女の隣には兄バーソロミュー、そして背後に護衛がひとり立っているだけだから。



ジュヌヴィエーヌはもちろん、これが初婚だし、王太子妃教育は最終部分に差し掛かる直前まで受けたものの、側妃に関する知識は政治的な立ち位置や役回り以上に知っている事はほぼない。

受けたのは王太子妃となる為の教育であって、側妃になる為ではなかったから。


故にこの現状が―――側妃としての初の顔合わせが、このような少人数で行われるのが通常の事なのか、全く見当がつかなかった。



だけど、これはまるで。



ジュヌヴィエーヌは思った。



側妃としてのジュヌヴィエーヌの存在を、王城内の人間になるべく知らせないようにしているかのようだ。



「・・・」



不安を感じたせいだろう、ジュヌヴィエーヌの手が、再び無意識にポケットに触れる。



ジュヌヴィエーヌの父は、この結婚はエルドリッジの方から望まれたと言っていた。


でも本当に? 父の思い違いではなく?


もし望まれていたとしても、もしかしたら、それは国同士の繋がりが欲しかっただけかもしれない。


丁度そのタイミングで婚約を解消された、謂わば傷物のジュヌヴィエーヌが、異国に差し出すのに打ってつけだっただけで。




・・・いえ、今そんな事を考えても意味はないわ。



ジュヌヴィエーヌは魔女の秘薬を―――彼女の希望を思い出す。



大丈夫。


今度は『まがいもの』にならない。


その為に、迷いの森に行ったのだから。




ジュヌヴィエーヌとバーソロミューは、玉座より少し手前で足を止める。



そしてバーソロミューが礼を執るのに合わせ、ジュヌヴィエーヌも膝を折り、カーテシーをした。



「面をあげよ」



低く、柔らかな声だった。



「行ったり来たりで大変だったな、ハイゼン小公爵。長旅続きで疲れたろう」



親しみのこもったエルドリッジの挨拶に、兄はこれが初対面ではなかったのか、とジュヌヴィエーヌは驚く。


すると今度は、エルドリッジがジュヌヴィエーヌに向かって旅を労う言葉をかけた。


そして「よく来てくれた」とも。



少なくともジュヌヴィエーヌが来た事を嫌がられていない。



その事にほっと安堵すると、ジュヌヴィエーヌは漸くエルドリッジの顔を真っ直ぐに見上げる事が出来て。



その時初めて、彼のトパーズの瞳と、ジュヌヴィエーヌのアメジストとが交差した。





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