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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第六章 続編のヒロイン来たる
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ジュヌヴィエーヌなら、と



「わ、私にヒロインさんが会いたいと仰ったのですか?」


「そうなんだ。何故か指名が来た。ジュヌヴィエーヌとなら話をすると」



 エルドリッジの執務室に呼ばれ、説明を受けたジュヌヴィエーヌは困惑顔だ。

 なぜ続編のヒロインであるナナが、名指しでジュヌヴィエーヌを対面相手に選んだのか、それが分からないだけに当然の反応だろう。

 この場にいる他の者たち―――エルドリッジやホークスも同様だ。



 ただ、名を知った経緯については、ナナの身の回りの世話で唯一部屋に出入りしている神殿の下女アネロナから聞いた事が分かった。


 ヒロインを取り込みたい神殿側は、アネロナを通して再三再四、対話を求めていた。だがアンゲナスやラムロスら神官を拒否するヒロインに、じゃあ誰ならいいという話になった。



 ヒロインとしても、いつまでも部屋に籠城していても埒が明かないとは思ったのだろう。アネロナに、この国の主要人物の妻、もしくは女性関係者で外国籍の人はいないかと尋ねた。そして挙がった名前の一つがジュヌヴィエーヌだったのだ。



 これに関しては、迂闊にジュヌヴィエーヌの名を口にした事に対して、アネロナから謝罪があった。


 そう、アネロナはエルドリッジ側の者だ。平神官アムナスハルトの妹で、兄と共に密かにエルドリッジに神殿の情報を流している。


 ジュヌヴィエーヌが国王の側妃であるという事実は、秘密ではないが知る人ぞ知る情報である。


 王城に勤めていて知る者はだいぶ増えてきたが、学園の者たちはマルセリオ王国の貴族令嬢として認識している者が大半だ。


 アネロナがエルドリッジ側の人間でなければ、恐らく側妃としてのジュヌヴィエーヌの名前をヒロインが知ることはなかっただろう。


 だが、ヒロインがジュヌヴィエーヌという名前に反応したのなら。


 ジュヌヴィエーヌなら話をすると言ったのなら。




「お受けするべき・・・でしょうね」



 ジュヌヴィエーヌは腹を括ったのか、胸元でぎゅっと拳を作ると、決意したように小さく呟いた。



「本音を言うと、君をこの件に関わらせるのはすごく不本意なんだけど・・・」



 エルドリッジが少し落ち込んだ声でそう言った。


 エルドリッジにとって、ジュヌヴィエーヌはエティエンヌと同じく庇護の対象だ。


 悪役令嬢としてのジュヌヴィエーヌの番は既に終わっていても、続編終了までは大事に囲っておきたかったらしい。



「ありがとうございます、エルドリッジさま。でも頑張ってみますわ。だって、他の外国籍の方々では駄目だったのですよね?」



 そんなエルドリッジの気遣いを嬉しく思ったのか、ジュヌヴィエーヌは微かな笑みを浮かべ、そう尋ねた。



「そうなんだよね。ライム伯爵の奥方はトマティア国出身だし、ベベル前子爵夫人とハンメル侯爵夫人はリンナモーレ国から嫁いで来てる。あとヤナレイ伯爵とカーレス男爵も他国から妻を迎えてる。女性限定と言っても、けっこういるんだけどね」



 ナナは、それら他国から嫁いだ人たちについても聞いたようだが、どうしてかジュヌヴィエーヌひとりを指名してきたのだ。



 実はこの件に関しては、神殿側は良い顔をしていない。聖女として取り込みたいのに、よりによって国王の側妃を対面相手として指名してきたのだから、当然と言えば当然だ。



「他にヒロインを部屋から引っ張り出す方法がないから、神殿としても今回の話にケチをつける気はないみたいだけど」



 それでも会わせるのは心配だ、と繰り返すエルドリッジに、ジュヌヴィエーヌは苦笑しつつも大丈夫です、と頷いてみせた。



 結局、どこまでも男性を側に近寄らせる事を嫌がるヒロインの為に、ジュヌヴィエーヌが女性騎士と侍女数名を伴って会う事が決まったのだった。






 ―――そして、それから5日後。



 神殿の奥の庭にしつらえたテーブルにて、ジュヌヴィエーヌは続編のヒロインであるナナと対面した。









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