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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第五章 続編開始のカウントダウン
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私は登場しない人物です




学園から戻ったオスニエルは、いつもの様に鍛錬場に向かおうとした。


だが着替えをして部屋から出たところで、エルドリッジからの呼び出しが入り、父の執務室に向かう。


そこには、宰相ホークスの他に、エティエンヌとジュヌヴィエーヌも来ていた。



「ああ、急で悪かったね、お前たちにも先に話しておいた方がいいってホークスが言うからさ」



エルドリッジの言葉に、この顔ぶれで話となれば、恐らく『アデ花』に関するものだろうとオスニエルは見当をつける。


雰囲気からしてエルドリッジとホークス、そしてジュヌヴィエーヌの3人は既に話をした後の様だ。

つまり用件はオスニエルとエティエンヌにあるということ。2人は無意識に背筋を伸ばし、聞く体勢を取った。




どんな深刻な話が出ようとも動揺などしない―――そんな覚悟を持って聞いた話の内容は、というと―――




「・・・ジュヌヴィエーヌを学園に入れる? しかも、エチと同じ学年にですか?」


「ああ、本人のたっての希望でね」



苦笑しながらのエルドリッジの言葉に、オスニエルとエティエンヌは拍子抜けすると同時に、困惑を隠せない。



まず、そもそも学年が違う筈だ。

ジュヌヴィエーヌは17で、エティエンヌは15。学年で言うなら三年と一年にあたる。


それを同じ学年に?



「それはつまり、編入・・・ということですよね? 確かジュヌヴィエーヌは、マルセリオの王立学園で二年生になる前に辞めてここに来て・・・ブランクはありますが、一年の授業を再度受ける必要はないのでは?」



オスニエルは顎に手を当て首をひねるが、エティエンヌも同意見だった。



「学園生活を十分に楽しめなかったのは本当だもの。ジュジュさまが通いたいのなら、別にいいとは思いますけど・・・オス兄さまの言う通り、二年からでいいのではないかしら」



実年齢より二学年下がるというだけではない。

この先現れるかもしれないヒロインは、エティエンヌと同学年になる。

ジュヌヴィエーヌまで巻き込んでしまう事を2人は心配していた。




「ですが先ほど陛下も仰った通り、これはジュヌヴィエーヌさまの強いご希望でして」



普段なら慎重な意見を好む筈の宰相が、何故かジュヌヴィエーヌを援護している事に、オスニエルとエティエンヌは驚いた。


2人の胡乱な視線がジュヌヴィエーヌへと向けられる。


彼女はどこか嬉しそうで、しかも何故か得意げだ。



「あのね、オスにエチ。そもそもジュジュが学園に入りたいと言い出したのは、学問目的でも交流目的でもないんだ」



エルドリッジが補足で口を開く。



「なんなら正式に入学しなくても構わないらしい。聴講生という立場でもいいんだって」


「私の意見を言わせて頂きますと」



今度はホークスが口を挟む。



「正直、聴講生の形の方が都合がいいと思います。必要と思った時にだけ学園に行く事が可能になるので、押すも引くも自在になるかと」


「ふむ。だったらその線で学園長と話をつけてみるか」



エルドリッジとホークスはどんどん話を具体化していく。


オスニエルとエティエンヌは、未だ話に付いて行けていない。2人が困惑顔で互いを見合わせたところで、エルドリッジが言った。



「ジュジュはね、オスやエチの為に何か出来ないかってずっと考えてて、これを思いついたんだってさ」


「え?」


「私たち?」



エルドリッジは、目を丸くする2人から視線を外し、「ね?」とジュヌヴィエーヌに語りかける。



「はい。あの、功を奏するかどうかは自信がないのですが・・・」



ジュヌヴィエーヌはそう前置きをして続ける。



「本来なら、私は今もマルセリオにいる筈の人間で、アデラハイム王国の物語には登場しません。ならば、いない筈の人間が物語の中で動けばどうなるかと考えたのです」


「・・・」



オスニエルが思案げに顔を上げる。



「たぶん、私は物語のあらすじに関係なく動けると思うのです。だとしたら、なるべくエチさまの側に居たい。

まだ何が出来るとも分からないのに、烏滸がましいとは思います。結局、役立たずで終わるかもしれないと不安でもあります。

でも、もし状況が良くない方向に行きそうな時、流れを邪魔するくらいなら出来るかもしれないから」







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