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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第五章 続編開始のカウントダウン
37/97

それぞれの1年



ジュヌヴィエーヌがアデラハイム王国の王エルドリッジの仮初の側妃となって約一年が過ぎた。



ジュヌヴィエーヌは17歳、オスニエル第一王子16歳、エティエンヌ第一王女15歳、第二王子シルヴェスタは13歳、そして末子のルシアンは9歳。



エティエンヌは、兄オスニエルと共に王立学園に通い始めていた。


そう、続編『アデラハイムの美しき花』の始まる時がいよいよ近づいたのだ。

もし本当にその物語の通りになるとしたら、ヒロインはこの秋に現れる筈である。




そのせいなのかは分からないが、このところずっとエルドリッジは忙しそうだ。


大臣や騎士団長を呼んでは頻繁に話し合い、時には教会関係者まで呼び出して面会したり、手紙を遣り取りしたりしている。



国王としての通常の執務をこなしながらの付加的作業、ただでさえ正妃がいない為に執務量は普通の国王より多い。



ジュヌヴィエーヌは、エルドリッジの体調を心配していた。





「・・・ジュヌヴィエーヌさまが、執務のお手伝い、ですか?」



ジュヌヴィエーヌは内々に内務大臣を呼び、仮初の側妃でも出来る仕事がないかと相談してみることにした。



本来、側妃は国政に関わる事はない。

少なくともアデラハイム王国ではそれが常識となっている。


あくまで正式な夫婦と認められるのは国王と正妃であって、側妃は王の血を継承する子をより多く残す為、もしくは国王の癒しとしての存在意義しかない。


だからアデラハイム王国の側妃は厳密には王族と見なされないし、王族を表す『アデラハイム』を付けて名乗る事は許されていない。


立場的に言えば、準王族の方が正しいのだ。

故にジュヌヴィエーヌの名も『アデラハイム』は付いていなかった。


結婚して『ハイゼン』の籍から抜けた為、今はただのジュヌヴィエーヌだ。



「とはいっても私は側妃の立場ですので、表立っては出来ません。それにもし何かやらせていただくとしても、書類の整理や仕分け、簡単な処理などしかお手伝い出来ないとは思うのですが・・・」



マルセリオで王太子妃教育をほぼ終わらせていた身である。

全く使い物にならない筈はない、と信じたいが、いずれ側妃でなくなるというのなら、国政の深部に関わるような案件には携われない。


けれど表に顔を出さず、しかも事務作業であるならば、と遠慮がちに申し出た。



内務大臣は暫く考えた後、宰相と相談してみると答え、退出した。



当然といえば当然なのかもしれないが、返事は数日経ってももらえておらず、ジュヌヴィエーヌは他に何か出来ることはないだろうかと思案し始める。



一年前より、痩せて少し細身になったエルドリッジ。


一年前より、雰囲気が険しくなったオスニエル。


一年前より、考え込む事が多くなったエティエンヌ。


一年前と変わらず、魔法や魔道具研究に没頭しているシルヴェスタ。


たぶん、一年前と比べて、良い方に変化しているのはルシアンだけだ。



忙しい執務の間を縫って、エルドリッジはエティエンヌやオスニエルたちと話をしている。

それはきっと『アデ花』対策のことだろう。




「・・・私ひとりが自由になっても意味がないわ」



そう独り言ちたジュヌヴィエーヌは、二日前に届いたばかりの両親からの手紙を思い出していた。



彼らの近況に加え、マルセリオ王家の状況も記されていたそれによると、ファビアンとマリアンヌは、相も変わらず妃教育を投げ出したまま問題を先送りにしているらしい。


ファビアン以外に王家の直系がいないマルセリオ王家では、王太子のすげ替えも出来ず、いずれ優秀な側妃を探し始めるだろう、とのことだった。


それこそ、王家の為の特例条項を持ち出して、既婚未婚を問わずに。



だが、さすがに他国の妃になったジュヌヴィエーヌに手出しはしないだろうから安心するように、という言葉で締めくくられていた。




だけど、とジュヌヴィエーヌは思う。



ただ安心して過ごすだけでなく、自分も何かがしたいのだ。

助けられたように、誰かを助けたい。それがほんの少しの、気休めの様なものだとしても。



「もし執務のお手伝いが駄目だと言われたらどうしようかしら・・・他に何か私に出来ることは何か・・・」




実は、「書類整理や仕分け程度なら」と後で許可が出るのだが、この時のジュヌヴィエーヌはまだその事を知らず、しばらく考えあぐねた後にまた別の案を思いつくのだった。









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