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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第四章 恋のつぼみ
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少し、ざわつく


「でも、今はジュジュさまもいるし、最後までここで頑張ってみるつもりよ」



淡々と話すエティエンヌの傍らで、オスニエルは何かを考え込む様に眉根を寄せた。











「今から学園ですか?」



翌朝、ジュヌヴィエーヌがルシアンを散歩に誘いに廊下を歩いていた時、制服を着たオスニエルと遭遇した。



オスニエルの持つ高貴で清廉な雰囲気は制服姿でも変わらない。

だが、王族の煌びやかな服の時より年相応に見える気がするから不思議なものだ。



「学園では制服を着用するという決まりは、アデラハイムもマルセリオも同じなのですね」



オスニエルの制服姿を、ジュヌヴィエーヌは少し眩しい気持ちで見上げた。


ジュヌヴィエーヌも一年だけだが、制服を着て学園に通っていた。


もっとも、あまり楽しい思い出はない。

入学してすぐに、ファビアンとマリアンヌの仲睦まじい姿を目撃した事もあるし、学生たちに浸透していた2人の真実の愛についての噂にも苦しめられたから。



「王族も学園に通う事は義務付けられているからな。ああ、それもマルセリオと同じだったか」


「そうですね」


「来年はエチが入学する」


「では兄妹で通えるのですね。楽しみですね」


「・・・そうだな」



首元のネクタイに手をやりながら、少し居心地悪そうにオスニエルが会話を続ける。

いつもならば挨拶だけで通り過ぎる筈が、今日は足を進める気配はない。



このまま話をしていると遅刻してしまうのでは、そう思い口を開こうとした時、オスニエルが先に言葉を発した。



「ゼンは、悪い奴じゃないんだ」


「ゼンさま・・・ですか?」



突然の話題の転換に、ジュヌヴィエーヌは、ぱちくりと目を瞬かせる。



「俺が勝手にあいつの気持ちを代弁する訳にはいかないから、これ以上は言えないが、あの頃のゼンにエチを傷つける意図はなかった。あいつはただ口下手で・・・」



口下手? 先日の茶会での様子を思い出しながら、ジュヌヴィエーヌは首を傾げる。



「あ、いや。少し違うな、ただ立ち回りが上手くなくて」


「・・・?」


「それも何か違う。そうだな、鈍感? 馬鹿? 頭は良いくせに肝心な所で阿呆? ああ、ぴったりの言葉が思い浮かばん」



散々な言われようだと思いつつ、額に手を当て考え込み始めたオスニエルを見て、時間は本当に大丈夫なのだろうか、といよいよ心配になった時、廊下の向こうから従者が彼を呼びに来た。



また後で説明するとオスニエルに言われ、状況がよく分からないまま、ジュヌヴィエーヌは曖昧に頷き、彼らを見送った。


その後、再びルシアンの部屋へと足を向ける。



ルシアンの部屋は、オスニエルやシルヴェスタと同じ、中央階段を挟んで東側にある。


反対に、ジュヌヴィエーヌやエティエンヌの部屋は階段を挟んで西側だ。


因みにエルドリッジの部屋も東側寄りではあるが中央階段に最も近く、部屋の広さもそうだが部屋数も一番多い。

元々は夫婦の部屋なのだから当然と言えば当然なのだが、主寝室の向こうにある妻の為の部屋、つまりかつて正妃が使っていた部屋は7年前から固く閉ざされ、掃除の時のみ開錠される。



それを城中の使用人たちが悲しく残念に思っている事も、側妃として嫁いだジュヌヴィエーヌが離れに住まないと聞いて皆が期待した事も、だが結局はエティエンヌの隣の部屋を与えられて皆が微妙にがっかりした事も、嫁いで半年が過ぎた今のジュヌヴィエーヌは知っている。



だから、なのだろうか。


ルシアンを誘いに行く時、エルドリッジの部屋の前を通り過ぎる。



その時、ジュヌヴィエーヌの心は少しだけざわつくのだ。








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