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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第四章 恋のつぼみ
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『アデ花』の中では



「・・・は?」



ジュヌヴィエーヌが手にしていた数枚の絵を見て、オスニエルの目つきは鋭く、声は低くなる。


何故なら、そこに描かれていたのは―――



「・・・俺?」


「あら本当、オス兄さまの絵だわ」



そう、オスニエル他、数名の令息たちの絵姿だったから。



「・・・俺、俺は、父上にダメ出しをされたと、そういう事か・・・?」



オスニエルは、がっくりと深く項垂れる。



その絵姿が抜き取られたのは、エルドリッジから渡された、いわば『この人たちには気をつけるんだよ』リストから。


となればオスニエルがそんな結論を下したのも当然と言えば当然で、ショックを受けるのも自然な反応だ。



「やはり・・・整理整頓が苦手なせいか・・・? 書類の整理だけはちゃんとやっているつもりだったが、私物整理も出来る様にならねば駄目なのか・・・っ」


「いえ、あの、オスニエルさま。誤解です。そういう事ではなくてですね・・・っ」



ジュヌヴィエーヌは焦った。

気を使って後で一人でこっそり確認するつもりが、却って誤解を招いてしまったからだ。


だが、慌てて否定しようとしているその最中に、今度はオスニエルの隣のエティエンヌが「ゼン?」と声を上げる。


その眼は、ジュヌヴィエーヌの手元、そう、隠そうとして見つかった紙の2枚目に釘付けになっていた。



こうなったら潔く話した方がいいと、ジュヌヴィエーヌは持っていた数枚の絵姿の紙を全てテーブルの上に並べて口を開いた。



「違うのです。よくご覧ください。こちらは駄目出しをされた方々ではないのです」


「・・・では、ない?」


「え・・・? ああ、なるほど」



そこに描かれた人物全員を見れば、オスニエルもエティエンヌにも、その意図は明らかだった様で、2人は納得したように頷いた。



「・・・そういう事か。確かに、こっちもちゃんと覚えておかないといけないな」


「そうね。少なくともあと1年もすればヒロインが現れる時期になるんだもの。ジュジュさまも側妃としてこの国にいる以上、会う機会はある筈よね。大まかに話はしていたから、もうすっかり全部説明した気になっていたわ」



そう言って、オスニエルもエティエンヌも、そしてジュヌヴィエーヌも、テーブルの上の絵姿の紙に視線を落とす。



紙は全部で5枚。



一枚目は、第一王子オスニエル。


二枚目は、宰相の嫡男ゼン・トリガー。


三枚目は、第二王子シルヴェスタ。


四枚目は、外務大臣の嫡男イザーク・ドットヒル。


五枚目は、騎士団長の次男サイラス・ヴェルファスト。



第1作目『マルセリオに咲く美しき花』で、ファビアン王太子とマリアンヌの恋を応援する側近たちがいた様に、第2作目にも同様の役目を担う人物がいる。



そう、王太子であるオスニエルと異世界から転移してくるヒロインの恋を応援し、悪役令嬢の断罪に協力する人物が。



「もちろん俺たちはそんな愚行を犯すつもりはないが、物語に登場する人物として名前が出ている以上は、分けて覚えておいた方がいいだろう」



不本意極まりない、そう言いたげな苦々しい口調でオスニエルは言った。



「ジュジュさま」



並べられた絵姿を眺めながら、エティエンヌは続ける。



「もう一つ、説明しておくわね」



その目は、今も二枚目の人物に向けられたまま。



「ゼンは・・・『アデ花』の話の中で私の婚約者だった人なのよ」










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