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私に必要なのは恋の妙薬  作者: 冬馬亮
第四章 恋のつぼみ
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違うところは




「・・・ホークス」


「なんでしょう」


「いきなり大人数だと気を使うから、小さな茶会とかで少しずつ顔を広げていく様にしろって、僕は言ったと思うんだけど」


「まあ、そうですね」


「それが、なんでこんな大掛かりな茶会になったんだろうな」



エルドリッジの口調がちょっと荒んでいるのは、目の前に広がる光景のせい。


王城の庭を開放して催された茶会の席、多くの国内貴族たちに囲まれ、ジュヌヴィエーヌが談笑しているからだ。



ホークスは肩を竦める。



「仕方ないじゃないですか。いいタイミングで客人がいらしたのですから」



ホークスの視線の先にいるのは、ジュヌヴィエーヌの隣で談笑に加わっている彼女の兄、バーソロミューである。




外相である父ケイダリオンの代理として、半年ぶりにバーソロミューがアデラハイム王国を訪れた。

公式な訪問とはいえ会談等はなく、外交関連の書簡を届けに来ただけ、という使者の立ち位置だ。


故に、夜会などの仰々しい歓迎を辞退したバーソロミューの為に、昼間の茶会を催す事になった。


好きに歩き回れて歓談も自由に出来るガーデンパーティーの形式だ。



そして、ホークスはこれをジュヌヴィエーヌの社交デビューと抱き合わせたのだ。



マルセリオ王国の筆頭公爵家の跡取りであり、今回は外交官として来国したバーソロミュー。

そんな彼の妹として共に登場したジュヌヴィエーヌは、あっという間にたくさんの人たちに囲まれ、現在に至る。




「これはこれでいい方法だと思いますがね。ジュヌヴィエーヌさまに関して、バーソロミュー卿の妹君、他国の公爵令嬢という印象を強く残せますし」



ジュヌヴィエーヌが側妃である事は秘密ではない。

けれど、わざわざ周知させてもいない。

聞かれたら言う、今はそれくらいの扱いだ。



その意味では、なあなあで顔見せが出来る今回の茶会は打ってつけなのだろう。



―――が。



「・・・いきなりの大人数じゃ相当緊張するだろうに。エチの友人たち何人かで、小ぢんまりとほんわかスタートさせてあげたかったなあ」


「見たところ、ジュヌヴィエーヌさまは問題なくこなしておられる様ですが」


「そりゃ王太子妃教育をほぼ終えてるんだから、社交なんてお手のものだろうさ。でもね、迎え入れる側の心遣いっていうものがあるだろう」


「兄君とご一緒のデビューは立派な心遣いでは?」


「・・・そうだけどさ。でも、なんかもっとこう・・・」



横でぶつぶつ文句を言っている主君に聞こえない様に、ホークスはこっそり溜め息を吐く。

こういう時のエルドリッジは少々面倒くさい。

ジュヌヴィエーヌに対して時々発動する『過保護モード』。

こうなると、どうせ何を言っても効果はないのだ。



「・・・ふむ」



何を言っても効果がないのであれば、ちょっと揶揄ってやろうではないか。



『解放してやらねば』とか『出会いの場を』とか色々と言っているけど、実際にそうなったらどう反応するのか。



そう考えたホークスは、会場内に視線を巡らせ、自身の嫡男ゼンを見つける。


視線を感じたらしいゼンが、ホークスのいる方へ顔を向けた。



ホークスはゼンに目配せをした後、視線をジュヌヴィエーヌたちに向ける。それを何回か繰り返した。


ゼンは小さく頷くと、ジュヌヴィエーヌたちがいる方へと歩を進める。


途中で、何人か他の令息たちにも声をかけている様だ。



それを確認してから、ホークスはエルドリッジに向かって言った。



「おや、どうやらゼンも話しかけに行く様ですね。ああ、ホルスロン伯爵令息とラキシュ公爵令息たちも一緒の様ですな」



いかにも『今気がつきました』風である。



「ゼンが?」



エルドリッジは視線を上げ、ジュヌヴィエーヌたちを見遣る。



「ホルスロンとラキシュのところの・・・」



彼らに釣られる様に、さらに別の令息たちがその後ろに加わる。



「おやおや、どんどん人が増えていきそうですよ。ジュヌヴィエーヌさまがお美しいから、令息たちもソワソワしているではないですか」



いい出会いがあるといいですね、とホークスが続ければ、エルドリッジは何故か眉を顰める。



「・・・ちょっと想像していたのと違う」



そして、「だから小ぢんまりと始めたかったんだよ」とまたしても呟いた。




ちょっと拗ねぎみで。









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