1章1話 1人と1機、荒野で出会う
「機械戦争、300年前に起きた機械産業の発達のより起こってしまった戦争だ。多くの犠牲を払ったこの戦争は2人の英雄の働きにより終結し、戦争に使用された機械技術はその後建てられた遺跡に封印されることになりました」
月の光が彼女を照らす、その体は金属特有の光沢を放っている。
「20年前、デザンの機械研究者だったホオズキによって、封印されていた300年前の戦争に使用された技術の一部が解明され、その技術を応用して造られたのが私たち人型戦闘用機械兵器、ドールです」
彼女は目の前に座る少年を見つめる、まだ幼さを残しているその少年は静かに口を開いた。
「......そして、ホオズキは大量に生産されたドールを使いデザンに戦争を仕掛けた。多くの犠牲を出しながらもデザンはホオズキを一時撤退させるまでに至った、けれど多くの市民はその戦争に巻き込まれて死んだ......俺の母さんも」
少年の言葉に、彼女は表情を変えることはなく答える。
「お伝えできることはこの程度です」
「ドールについて、他に話せる情報は?」
「ありません。正確にお伝えするのならば、管理者によりロックされており、メモリから取り出せません」
「そうか最後に一つ、質問をいいか?」
少年の声は震えていた。
悲しみか怒りか、少年は目の前にいるドールに問う。
「......何故、俺を殺さなかった」
彼女は無感情にその質問に答える。
「あなたが私の所有者として登録されているからです」
「俺がお前の所有者だと、機械はついに冗談を言えるようになったのか」
「いいえ、機械は嘘をつけません。私のメモリに保存されたデータから質問に該当する情報をお答えしました、情報が足りないのであれば追加でお伝えしますが」
「いや、もういい」
少年は横になるとドールに、
「お前は俺を殺さないってことは俺を守ってくれるってことだろ、俺は少し休む」
「休むのは構いませんが、荒野で休むのであれば太陽の影になるところで休むべきかと」
少年は無言で近くにあった小石をドールに投げると、そのまま眠りについた。
少年は避難民の中でも幼く、親もいないため他の避難民からは良い印象は持たれなかった。
男は戦争に駆り出され、女性も過酷な労働を強いられ、娯楽もない中で守る親のいない幼い少年はいい当たり先だったのだろう。
日に日に渡される食事も少なくなり、少年には自分自身で生きる力を身につけるほかなかった。
数年もすれば少年は、自分の意思で誰に言われるもなく避難所をでた。
未練はなく、このまま何もせず避難所で戦争に駆り出されるのを待つのは少年には耐えられなかった。
どうせ死ぬのだ、自分を嫌う奴らの為に戦うって死ぬくらいなら、自分の為に戦って死ぬことを少年は選んだ。
装備は、兵士の駐屯地に侵入し盗んだ。
その装備を使い、出会ったドールを倒す毎日。
装備がダメになればドールの装備を使った。
だがそんな生活が長く続くわけもなく、食料と水も尽きてしまう。
そして少年は、荒野の中意識を失った。
朝日を浴び、眠っていた少年の意識がはっきりとしてくる。
少年の前には、太陽の影になるように立っている、ドールの姿があった。
「おはようございます、クロバ様」
少年、クロバはドールを無視し荷物をまとめ、歩き出す。
ドールはその後ろをついて歩く。
荒野を進む少年とドール、奇妙な光景がそこにはあった。