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クズでも異世界に行けば変われますか?  作者: スケさん
始まり
4/26

〜幕間 トム〜

部屋を出て行くご主人様を眺めた後、俺は大きく息を吐く。

そして、奴隷になってしまったこれまでを振り返った。


俺は小さな村の次男だった。

家は農家だったが畑は少なく、長男が継ぐことに決まっていた。

次男である自分には長男から土地を借りて小間使いの様に細々と暮らすか、一攫千金を夢見て冒険者になるかの二択しか無くて俺は後者を選んだ。


冒険者になった当初は苦労の連続で生活も苦しかったが、やがて仲間が出来てCランクまで上り詰めることが出来た。

このまま行けば小さな村では到底無理だった贅沢な生活も出来るんじゃないかと浮かれていたが、人生そんなに甘くなかった。

仲間がBランクに上がるために魔族領に近い遺跡の調査依頼を請けてきたのだ。

初めは危険度も高く渋っていたのだが違約金が高額で、また、ここで成功すればBランクになれることから仲間達と共に遺跡に向かった。


遺跡の魔物は強敵ではあったが、連携すれば倒せない程ではなく、俺達はどんどんと奥に進んでいき、ヤツと遭遇してしまった。


災厄級モンスター:ゲヘナ


10年前、国二つを滅した魔物である。

なぜ、遺跡にいたのかは分からないが奴の呪いを俺達は受けてしまった。

奴は俺達に興味が無かったのか、息の根を止めずに去ってしまったが全滅するのは時間の問題だった。

俺は仲間達に後を任せ、護りしもののスキルを発動した。

それによって動けるようにまで回復した仲間達は俺を担いで街に引き返した。

街に戻った仲間達は、最初は俺を治そうとしてくれたが教会でも呪いを解くことは出来ず、違約金の支払い期日が迫っていたため、俺を奴隷商人に売り払いやがった。


牢屋での生活は最悪だった。

特に俺は長くないと分かっているので処分前用の檻に放り込まれた。

中には、奇声をあげる女や手足が何本か無くなってる獣人とかが何人かいたが、気がつくと檻には俺と忌子の二人しかいなかった。

レベルとスキルが初期化されて体が重くなった上、どんどん死んでいく体に震えが止まらなかったが、ある時、忌子が俺に手を当てて声をかけてきた。


「大丈夫?お兄さん震えてるよ。寒いの?何か私に出来ることある?」


初めは忌子に触れられる事に嫌悪感を覚えたが、時が経つにつれてただの優しい女の子だと分かるとそれも無くなり、俺の心の支えとなっていった。

檻の中ではすることがなく、動くのも困難だったので自然と話すことが多くなった。

アティはここに来る前も村から薄暗い場所に閉じ込められていたようなので、街での生活や冒険者の笑い話をするととても楽しそうに話を聞いてくれた。

その頃になるとこの子には生きていて欲しいと思うようになり、自分がもう長くないことも自覚していたので粗末な食事であったがアティに分け与える事にした。


ある日、檻の前に金髪の男が現れた。

どうやら、アティのことを買いたいようだ。

男は少なくとも悪人そうでは無かったので、アティの幸せを願い、目を閉じた。

もう、呼吸するのも辛い。


気がつくと路地裏に座り込んでいた。

目の前にはさっきの男がいた。

動ける体に驚いて男に尋ねようとしたが声が出なかった。

後になって気づいたが奴隷刻印が発動していたようだ。

男はついてくるよう告げて路地裏を出ていった。

近くにはアティもいてこちらを心配そうに見ていたので、しっかりせねばと気を引き締めて男の後を追う。

歩いているうちに分かったが、どうやらこの男が俺とアティの主人のようだ。


そして今、この部屋にいるわけだが俺は男の事をいまいち信用することが出来なくなっていた。

俺とアティをわざわざ選んだ理由が分からないからだ。

奴隷になってスキルが初期化されたが、何故か護りしものは消えずに残っていた。

しかし、俺はわざわざそれをマルコに伝えることはしなかったので男からすれば、ただの死にかけと忌子である。

勿論、檻から出してもらい、健康な体にしてもらったことは感謝しているし、寝床も奴隷にすれば破格の対応だ。

しかし、あの主人はこちらを見る目が恐ろしく冷たいときがある。

冒険者をしていたから奴隷は珍しくない。

俺は持って無かったがギルドで見かけることはあった。

その時の扱いは今の自分達に比べれば酷いものであったが、冒険で長い時間を共に過ごすため、よほどの奴でない限り、少なくとも最低限の信頼関係はあるように見えた。

だが、あの男はこちらを完全に要らない物でも見るような無機質な目をする時がある。

俺達だけじゃなく、街の人を見る時もその目をする時がある。

アティもそれに気づいているのか俺の側を離れようとはしない。

もしかすると相当ヤバい奴の奴隷になってしまったのではないかと不安になってくるがアティを守れるのは自分しかいないので気を引き締めることにする。


先ずは、あの男に言われたことをしっかり守っておいて、少しでも自分達の価値を上げておくか…。



注釈:

トムの考えには少し誤解があります。

クロウは特典で心眼スキルを持っているので初めから二人の価値は認めています。

あと、クロウの無機質な目に関してですが、出来事に対して異世界テンプレあるあると考えているので展開が分かって少しつまらなく感じているだけです。

また度々、心眼スキルを使っていて相手ではなく、相手のステータスを見るのに夢中で目の焦点が合ってないだけです。

ただし、トムはそんなこと知るはずもなく、クロウも普通のスキルについては教えても特典に関しては言うつもりがないため、勘違いの状態は暫く続きます。


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