〜大図書館〜
エルストに滞在するようになってからはタクヤはトルティーヌの説得、トムとアティは里の散策、そして、エリーと俺はタチアナに案内されて大図書館にいた。
(タクヤ君について行っても良かったが説得する場面って無駄に説明が長い。キーアイテムを持って来いとか条件が面倒くさい。時間がかかる割に面白いイベントがなくてつまらないとゲームの嫌な部分が盛り沢山だ。
そんなイベントはスキップして別のことをしよう)
「この辺りが魔法陣に関する書物がある棚だ。
人族の国では見ることも出来ない貴重な物もあるから丁寧に扱えよ」
「分かってるわよ。案内ご苦労様。
それにしてもアンタは余り魔法に興味が無い様に見えたから一緒に行くって言われた時は意外だったわ」
「こう見えて本が好きなんですよ。
知識が増えるということは自分の可能性を広げる事に繋がりますからね。
エリーさんを見て魔法陣に興味がありましたし、良い機会なので少し勉強してみようかと」
「ふーん、魔法陣ってアンタが想像している以上に難しいと思うから覚えられなくても落ち込まないのよ」
俺達は魔法陣に関する書物を調べていくが古代語で書かれていたり、資料が欠けていて思うように作業が進まなかった。
エリーは古代語の解読に手間取っていたので、心眼スキルで簡単に読むことが出来る俺が出来る男としての優越感に浸るために教え、その代わりに魔法陣の基礎となる部分を教わる共同作業になっていった。
エリーは時間が経つのも忘れて集中しているが、俺は内容が難しすぎるため、直ぐに飽き始めて他の本にも手を伸ばしていた。
閉館間近になるとタクヤが迎えに来た。
「二人共。迎えに来たよ」
「もうそんな時間ですか。エリーさん、今日はこの辺りで切り上げましょう」
「えっ、もうそんな時間!今いい所なのに…。
この本、借りれないかしら?ちょっとタチアナに聞いてくるわね」
「行っちゃった…。クロウさんの方はどうです?
興味のある本はありましたか?」
「ええ、それなりに。ただ、私の方は借りるほどではないので大丈夫ですね。
タクヤ君は聖なる泉の交渉はどうなりましたか?」
「全然ダメです。幾ら魔王を倒す為に必要な事だと訴えても聞く耳を持ってくれません。
諦める訳にはいかないのですが、正直手詰まりです」
(そりゃあ、条件を満たしてないのに話を進めようとしても駄目だろ。
こんな森と本しか無い所にずっと立ち往生したくはないからアドバイスの一つでもしてやるか)
「…ふむ、それでしたら、タクヤ君。
少し視点を変えてみるのはいかがですか?」
「視点をですか?」
「はい。エルフ達にはタクヤ君が勇者として精霊に協力が必要なのは理解してくれていると思います。
彼らも世界樹を枯らした原因となった魔族には恨みがあるはずです。
それにも関わらず、許可が降りないと言うことは別の事情があるのでしょう。
精霊の力が残り僅かで余裕がないとか余所者に対する警戒が強いことから何か余所者を嫌う理由があるとか…パッと思いつく限りですとこんなものですが、そういった別の要因を解決しなければ交渉はいつまで経っても平行線のままだと思いますよ」
「確かにそうですね。でも、誰に聞けば良いか?」
「丁度良い人材がいるじゃないですか。タチアナさんです」
「タチアナさんですか?」
「ええ、短い間ですが彼女は他のエルフの人達とは違い、閉鎖的な里の現状を憂いていて更に余所者に対する警戒心も他のエルフと違って少ない感じがします。
彼女でしたら何らかの事情を教えてくれると思いますよ。
折角ですから食事をしながらお話してみては?
勿論、彼女以外の人から話を聞くのもいいですね。
族長は里を見て現状を知ってほしいとも自分一人の一存では決められないとも言ってましたから少しまわり道をすることも必要だと思います」
「待たせてごめん!本を借りられたから宿に帰りましょう」
「それにエリーさんの調べ物にもう少し時間が掛かりそうですから焦らずに頑張りましょう」
俺がタクヤ君にアドバイスをしながら宿に着くとタチアナが別れを告げる。
「今日はここで終わりだな。不用意に出歩くなよ」
「待ってください、タチアナさん。この後、時間はありますか?」
「時間はあるが何の用だ?」
「エルフ族のことを聞かせて欲しいのです」
「エルフ族の事?」
「はい。さっきクロウさんにも指摘されましたが、今まで精霊のことで頭がいっぱいでエルフの人達のことを知ろうとはしてませんでした。
相手のことを知ろうともしないで信用しろと言っても信用してくれる人はいないと思います。
だから、教えて下さい。エルフの好きな事や普段何をしているか?何故、余所者を嫌うのかとか色々聞きたい事が沢山あります」
「…交換条件がある。教える代わりに外の世界の事を聞かせてくれ。
ここにいると森の外の情報が入ってこないんだ。
あと、普通に話してもらって構わない」
「ありがとう!」
無事、タチアナを誘う事が出来たタクヤはこの世界に来てから印象に残った日常生活の出来事を話していく。
彼女はそれを興味深く聞いていた。
そして、タクヤの話を聞き終わるとエルフ族についての話を始めた。
彼女の話によると世界樹があった頃は積極的に多種族と関わる様な事はなかったが調和を大事に考えていて交流自体は結構あったらしい。
それが変わったのは魔族の侵略の時からである。
案の定、エルフ族が他種族を嫌う理由は酷いものだった。
世界樹を守る戦いではエルフ族だけでなく、獣人族や人族も参戦していた。
その最中、一部の獣人族の裏切りにより前線が崩壊したのだ。そのせいで魔族に破れて撤退。
その混乱に乗じて人族が奴隷にするためにエルフ族を攫い始めたのである。
その中には、王族のハイエルフも居たという。
その出来事以降、生き残ったエルフ族は世界樹の恩恵が唯一残った聖なる泉に閉じこもり、他種族を排斥するようになった。
「そんなことが…許せない。どこの国ですか?
乗り込んできます」
「もうその獣人族の国も人間族の国も魔族の侵略で滅んでしまったよ。
捕らわれたエルフ達もその時に一緒に…。
まあ、そんなこともあって魔族は憎いが多種族が苦しんでいるだけならば手を貸すことは無いだろう」
「…そうなんだ」
「で、どうするつもりだ?
私は里全体が閉じこもっている今は良くないと思っている。
精霊ウンディーネ様が頑張って下さっているが、聖なる泉の恩恵も少しずつ減り続けている。
皆、見ないふりをしているがエルフ族だけではどうしようもないのだ。
だから、お前達に協力する事で今の状況を打開するきっかけになるなら力を貸そう」
「ありがとう‼︎それで何だけど……」
タクヤはタチアナが協力してくれる事に喜び、里の人達を説得する為にどうするかを話し合っていく。
その様子を見て、俺はこれからの予定を考える。
(ふむ、タクヤ君はタチアナを仲間にすることが出来たか。
これでイベントが進むな。
そうなると明日はタクヤ君について行くか、大図書館で勉強するか悩み所だな。
問題はタチアナがヒロインかサポートキャラかまだ判断出来ていない事だ。
イザベラの時みたいにヒロインだと勘違いすると痛い目を見る。
…うん、明日は図書館で勉強するとしよう。まだこの世界について知らない事が多すぎる。
彼女が仮にヒロインだとしてもはじめの内はラブコメは起こらんだろう)
パーティの其々の予定が決まった。
エルフ族の説得:タクヤ タチアナ
大図書館:クロウ エリー トム アティ




