〜転生〜
俺は日本での生涯を終えた後、転生に慣れているという神様に出会って魔法が存在する異世界クリスタリアに特典を6つ貰って転生することになった。
異世界小説が好きだった俺は特典とは別に冒険に必要な初期スキルと装備、お金を貰って準備ができるまでの間に異世界でやりたかった事を考える。
(英雄やハーレム物を目指すのは人間関係が面倒くさくて疲れそうだ。
厄介事にも巻き込まれたくないから、外見は向こうの世界でありふれてるらしい金髪碧眼で歳は20才位にして貰おう。
日本人らしく黒髪でも良かったが神様から渡された異世界のガイドブックを見たら、黒髪は闇の眷属の象徴として忌み嫌われているから魔族の成り上がりものでも目指さない限り辞めておいた方がいいと書かれていたからな)
そして、俺はクロウ=ハイヤーと名前を変えて異世界へと飛び立った。
意識が戻ると森の中にいた。
事前に教えられた情報から、ここはローランド王国でここから北に少し進むと街があるらしいので、自分の装備やスキル、生前と違う体の調子を確かめながら歩き出す。
街が見えて来ると入り口には門番が立っていた。
どうやら街に入る人達の手形と馬車の荷台や手荷物などをチェックしているようだ。
そのため、時間がかかって人が列を成していた。
俺も彼らの後ろに並び、順番が来るまで周囲の人を観察することにした。
(周りは荷物を沢山積んだ商人と旅人、冒険者の人族と獣人が割合的に3:5:2といったところか。
獣人は全身が毛むくじゃらだったり、耳や尻尾だけ動物っぽかったりバラバラだな。
旅人は自分と見比べても大きな違いはないから、これなら検問も大丈夫そうだ)
「次の人!手形と荷物の中身を見せて下さい」
門番に言われて俺は事前に用意して貰った手形と数日分の食料、冒険に必要な生活雑貨を入れたカバンを門番に差し出す。
もちろん、特典で貰った貴重なアイテムは同じ特典スキルのアイテムBOXに入れて隠している。
「怪しい物は無いな。通って良し」
無事に検問を通ることが出来、街に入ると中はいかにもといった感じの中世の石造りの街で外壁が街を覆う様に建っていて、街の名前はサリアというらしい。
(随分と簡単に検問をクリア出来たな。
こんなに簡単なら、頑張って覚えてシュミレーションまでした【私は怪しい者ではありません】の質疑応答集は要らなかったか。
あと、小説に良くあるこのアイテムBOXも全然バレなかったな。
これにヤバいもの入れて運び屋やったらぼろ儲けじゃね……いや、まだ来たばかりの異世界。
もしかするとそういう者達を感知する方法も存在するかもしれない。
この世界の常識が分かるまでは辞めておこう。
とりあえず街に入れたから、まずやることは冒険者登録だな)
俺は街の入り口にあった案内板に従いながら冒険者ギルドを目指すと【冒険者ギルド サリア支部】と書かれている大きい建物が見つけた。
建物に入ると受付には猫耳を生やした獣人のおっさんがいて、他にはデカイ剣を携えたマッチョな男性やパーティと思われる集団、ローブと杖を持った魔法使いっぽい格好の女性などで賑わっていた。
(受付はきれいなおねーさんじゃないのか、残念。
それにビキニアーマーを着てる女性が何処にもいない、とても残念。
門のところにもいなかったし、この世界には存在しないのかもしれないな…)
俺は肩を落としつつ、登録するため受付に向かった。
「見慣れない方ですね、依頼でしょうか?」
「いえ、冒険者登録をお願いしたいのですが」
「それでしたら、こちらの用紙に必要事項の記載をお願いします。
登録料は1000Gです。
それが終わりましたら別室で冒険者ギルドの説明を行いますので少々お時間がかかりますが宜しいですか?」
「はい、大丈夫です」
(冒険者ギルドだからてっきり気性が荒い人が多く、職員も似たようなものと思っていたが、こんなにも丁寧に応対してくれるなんて…やっぱり猫耳は性別関係なく良い人。
しかし、Gか。1円=1Gだから計算しやすいけどそれなら円で良いじゃないか。
札がないから大量に持ち運びすることが大変で、キャッシュカードが必須な世の中になっちゃってるし)
書類の必要事項には日本と違い、スキルに関する記載も書かれていたので質問する。
「すみません、スキルの欄は全て書かないとダメですか?」
「そちらは任意なので全てでなくていいです。
冒険者には危険がつきものですから自分の情報を秘密にする方もいます。
ただ、特定のスキルを持った方には専用の仕事を斡旋することがありますし、他にもパーティー募集を行う際の基準になる事がありますのである程度書くことをおすすめします」
(要は履歴書の資格と一緒だな。
特典スキルはまだこの世界においてどれ位凄いものなのかが分からない。
騒ぎになる可能性があるので、とりあえず書くのは初期スキルだけにしておこう)
目立ちたくない精神から初期スキルだけを記入したものを受付に渡し、変わった形の板に触れたあと別室へと案内された。
「それでは冒険者ギルドの説明をさせていただきます。
冒険者にはランクがG〜SS迄あり、其々のランクに応じた依頼しか受けることが出来ません。
ギルドは国や街、村からの様々な依頼を調査した後ランクに応じて振り分け、冒険者に請けて貰っています。
他所からの依頼の他にも街道付近の魔物の討伐や素材の採集は常時依頼としてギルドでさせていただいてます。
冒険者カードにはパーティ間での通信や所在地の確認、お金の預金と支払いが出来る機能が付いてます。
依頼の報酬は作業完了後に支払われますが、もし、依頼を達成できなかった場合は冒険者に違約金の支払いが発生します。
違約金の額は初めは少ないですが、ランクの高くなるにつれ大きくなりますので注意して下さい。
冒険者ランクですが大規模な魔物の発生や魔族の侵略が起こったときはCランク以上を徴収することがあります。
ここまでで質問はありますか?」
「人や獣人の戦争に駆り出されることはないのでしょうか?」
「昔、人同士の戦争に冒険者を駆り出したことはあるのですが、当時Sランクだった魔法使いが無理矢理連れられて命令されたことに怒り、禁呪の特大魔法で敵味方関係なく焼き払ったことがありまして…。
それ以外にも、少しでもランクの高い者を手に入れようと国や街で露骨な囲い込み、ひどい時は家族を人質にすることがあって冒険者達の不満が爆発して暴力沙汰になる事件が度々起こりました。
そのため、国はそのような状況では兵士と冒険者で足並みが揃わないこと。
また、自国の冒険者が他国に行かれるのを防ぐため、何よりこの様な悲劇を繰り返さない様に冒険者を強制的に徴収することは辞めたそうです。
勿論、冒険者自身が希望すれば戦争に参加することは出来ます」
「そうでしたか、ちなみにその時の魔法使いは?」
「両国が災厄の魔女として捕まえようとしましたが逃げられ、魔族領に姿を消したそうです。今は生きているかどうかもわかりません」
その後、細かい説明を幾つか聞き、発行された冒険者カードを受け取った。
カードには次のようなことが記載されていた。
クロウ=ハイヤー レベル10 ランクG
種族:人族
HP135/135
MP55/55
スキル一覧
剣術2
体術3
弓術1
生活魔法1
火魔法:初級1
回復魔法:初級1
隠密1
スキルの後ろには数字が書かれていて、職員の説明によるとスキルの習熟度を表しているらしい。
1は学べば才能のない者以外は覚えることができる初心者、2はある程度使いこなせるようになった中級者、3はベテランでこれを持っている者は少ない。
4は才能あるものしかたどり着けない上級者、5は勇者や英雄、魔王といった者が持つと言われる伝説級の代物といった具合で全部で5段階にレベル分けしているそうだ。
また、虚偽の申請でレベルを誤魔化すことを防ぐため、ギルドカードの更新や報酬をギルドカードを通して行う時にスキルボードを使ってレベルだけはギルド側が調べて表記するらしい。
部屋を出るとローブを着た女性が二人の男に絡まれていた。
「離して!あんた達とはパーティを組まないって言っているでしょ!」
声からすると結構若い感じで、口論はどんどん激しくなっていく。
女性を観察しているとフードを被って顔がよく見えないが金髪の髪が少し見えた。
あと、胸がサイズが92とデカい。
「そういうなって、そのローブについてる紋章、おめえ、魔法学院の生徒だろ?
前衛職がいないと冒険なんて危なっかしくて出来ねえぜ、なぁ?」
「応よ、だからオレ達がパーティ組んで冒険について色々教えてやるっつってんだよ」
(テンプレきたーー!
異世界あるあるの一つ、新人や女の子に絡む大して強くないチンピラ冒険者。
この後、主人公が颯爽と現れて魔法使いの子を助け、そこからパーティ組んでヒロイン1号になるんですね、わかります。
そして、今の自分には体術3のスキルがあり、いざとなれば特典スキルも使えばあいつらを倒すのは容易い。
そこから導き出される答えはーーーーー)
俺はそっと目を逸らして隠密スキルの一つ気配遮断で影を薄くして壁際の目立たない所に非難することにした。
(テンプレだと大したことない奴等だろうけど見た目の柄が悪すぎてこえーよ。
学生時代は不良ですら怖かったのに相手なんて無理。
あと、女の子は声が大きくて気の強い感じだからあんまり好みじゃないし、それに…)
その後も言い争いをしていると騒ぎに気づいた大剣を背負ったマッチョが止めに入った。
「おめえら、騒ぎすぎだ」
「うっせえな、誰だよてmっ⁈ ガンツさん⁈」
「いつまでもギルドで酒なんて飲んでねえでさっさと依頼の一つでもこなしてきやがれ」
「はいっ、わかりました‼︎」
二人のチンピラは慌てて受付で依頼を請け、そのまま走り去っていった。
騒ぎが収まってくると周りのざわめきも聞き取れるようになってきた。
「スゲー、あの人Aランクで竜殺しの異名を持つガンツさんじゃね、サイン貰えないかな?」
「やめとけ、どうせ相手なんかしてくんねえよ」
やっぱり有名で凄い人らしく、魔法使いの女の子も相手の正体が分かり大人しくしてる。
ガンツが女の子に話しかけた。
「で、嬢ちゃんは見たところ魔法学院の生徒だろ、連れはどうした?」
「私一人よ」
「なら、冒険はやめとけ。あいつらも言っていたが魔法使いのガキ一人で冒険できる程、この世界は甘くねえぞ。
それにあそこの学生は魔物退治をするときは複数で行動するか、冒険者を護衛に雇うのが普通だろ」
「あいつらは私とパーティなんか組まないわ。それに護衛を雇うお金の余裕なんて…」
悔しそうに女の子は俯いた。
「忠告はしたからな」
ガンツはそう言うとその場を去っていった。
女性も暫くの間、俯いていたが依頼を請けてギルドを出ていった。
(やっぱりギルド内で騒ぎを起こせば、職員なり高ランクの冒険者なり止めに入るのは当然だよな。
新人や客が来なくなったら困るし。
わざわざ、主人公君が乱闘騒ぎを起こして止めなくても他の慣れた大人達が場を上手く治めるのは考えれば分かることだよな)
一連の騒動を眺めた後、村人でも倒せるという
《魔物の討伐依頼:ワーウルフ一体につき800G》を請けて街の外へとくり出した。
街の近くの森に入ると早速、獣の唸り声と共にワーウルフの特徴である大きい尻尾を生やした狼が一体現れた。
俺は初バトルキター!と興奮しながら剣を構えると、ワーウルフも鋭い牙を剥き出しにして襲いかかって来た。
待ちの構えでカウンターを狙っていたがワーウルフが近づくにつれて体が震え始め、終いには雑魚モンスターを前に逃げ出した。
魔物から逃げ切り、街道まで戻ると俺は尻餅をつき、上がった息を整えながら思った。
マモノコワイ、と
(なんだよアレ、牙剥き出しじゃん。
放し飼いの犬を遠くに見かけただけでもビビっていたのにあんなん無理。え、てか、転生した主人公君ってああいうのぶった切ってたの?
確かにそういうのに憧れて刀スキルに派生する剣術スキルも覚えたけどムリ!
しかも、倒した後、主人公君って魔物解体して皮とか素材手にするんだよね?そいつ日本人?どういう生き方してきたの?
あっ、待って、魔物ってでかい昆虫型とか爬虫類型もきっといるよね。
近づくの不可能じゃん!主人公君は平凡な人生送ってきた高校生とか絶対ウソやん)
パニックになった頭を落ち着かせながらこれからのことを考える。
(近接戦闘系は諦めよう、アレは無理だ…。
まだ自分には魔法と弓がある、それで生きてゆこう。
だが、ギルドで魔法使いの女が言われていたように魔法職等の遠距離系統は近距離戦に持ち込まれたら圧倒的に不利になってしまう。
自分を守る肉壁が必要だ…。そうだ!テンプレイベント奴隷を買おう)




