〜トート街〜
ようやく街が見えてきた。
トート街はドワーフの国にある街で鉱山に覆われた鍛冶が盛んなところである。
門の入り口には背丈が少し低いが筋肉質のドワーフが門番として立っていた。
「止まれい。お主ら、何しにやってきた?」
「ノーズさんに武器の製造を依頼にやってきました。こちらが紹介状です」
「ふむ、…お主勇者か。なんかヒョロヒョロして頼りなさそうじゃのう。
ちょっと待っとれ。今、長に知らせてくるから直ぐに迎えの者が来るじゃろ。
其奴に連れて行ってもらえ」
少しの間、待っていると街の方から一人のドワーフがやってきた。
「おう、お主らが勇者一行か。長のところまで案内するからワシについてこい」
クロウ達は案内人のドワーフの後をついていく。
街の中は石造の建物が多く建っていて、中は鍛冶屋や酒場が多いらしく、あちこちから金属の叩く音や喧騒が聞こえてくる。
奥の方に進んでいくと一際大きい建物が建っていた。
「おう、ここじゃい。ここが街で一番の鍛冶屋で最上階に長がおる。
詳しい話はそこでせい」
「ありがとうございます。皆、行こうか」
タクヤが先導して建物に入っていく。
建物は三階建てで一階は工房で十人くらいのドワーフが作業していた。
二階は店になっており、様々な武具が綺麗に並べられている。
そして、三階は大きい会議室の様な広い部屋で中に髭が豊かなドワーフがいた。
「お主が勇者か?」
「はじめまして、勇者のタクヤと言います。皆は旅について来てくれた仲間です。
今日はノーズさんに最強の武器を造って貰いにやってきました」
「ふん、国からの命令じゃ。
造ってはやるがお主、貧弱であまり強そうに見えないのう。果たして扱い切れるのか?」
「大丈夫です。絶対に使いこなしてみせます」
「そうは言ってものう…。そうじゃ、実は最近、この街にダンジョンが出来ての。
そのダンジョンの最深部で採れる鉱物の金剛石が武器を造るのに必要なんじゃ。
お主らで採ってこい。それができたら認めてやる」
「分かりました。約束ですよ」
「言ったことは守るわい。あと、二階の職員に話を通しておくから、装備を変えておけ。金剛石程ではないが1級品じゃ。今の装備で死なれても困るからの」
「ありがとうございます。準備が出来たら、すぐにダンジョンに向かいます」
そう言ってタクヤ達は部屋を出て、二階で装備を整える。
クロウ
コンジットボウ
カマサイトの胸当て
カマサイトの靴
タクヤ
カマサイトの剣
カマサイトの鎧
カマサイトの靴
エリー
カマサイトの杖
カマサイトの胸当て
カマサイトの靴
魔法学園のローブ
トム
カマサイトの剣
カマサイトの盾
カマサイトの鎧
カマサイトの靴
守りのタリスマン(HP回復:弱)
アティ
カマサイトの短剣
投げナイフ(10本セット)
カマサイトの胸当て
カマサイトの靴
建物を出てクロウ達はダンジョンに向かった。
ダンジョンは薄暗い洞窟の様な遺跡で所々に松明が掛けられていた。
出入り口付近で陣形や作戦を考えていると声をかけて来る人族がいた。
それはエリーと同じ魔法学園のローブと制服を着ていて髪は青くセミロングで10代の女性だった。
「やっと追いつきましたわ。勇者様」
「げっ、あんたは」
「誰方ですか?
あと、勇者である事はあまり知られたくないので公の場では呼ばないようにしてください」
「失礼しました、タクヤ様。
私は魔法学園首席のイザベラ=クレメンスと申します。ローランド王国クレメンス侯爵の娘ですわ」
「はじめまして、イザベラさん。
僕のことを探していたみたいですけど何の用ですか?」
「それはもちろん、勇者様の仲間として貰うためですわ」
「その件はサリア街を出る時にギルドを通して断りの手紙を出したと思いますが…」
「納得いきませんでしたのでこうしてここまで追いかけて来ましたわ。
私の実力不足なら未だしも魔法学園を退学する様な落ちこぼれを仲間にしたと聞きましたものでして。タクヤ様にふさわしいのは魔法学園の首席で侯爵家でもある私のほうですわ」
「ちょっと、落ちこぼれは訂正しなさい。
退学だって理由があったし、そもそも当時の学力は私のほうが上だったじゃない。
魔法の実技もアンタとの相性が悪かっただけよ。接近戦や魔法陣ありの実戦だったら勝ってたわ」
「お黙りなさい。王の紹介状には首席である私が名誉ある勇者の仲間になる様、書かれていましたのにあなたが横から掠め取ったせいでこちらの面目は丸つぶれですわ。
タクヤ様の足を引っ張る前にあなたは大人しく街に帰ってなさい」
「何ですって!」
「ちょっと落ち着いて、ね!」
「だって!こいつが!」
「申し訳ありません、タクヤ様。
…しかし、このままでは拉致が飽きません。ここは一つ、勝負をしませんか?
聞きましたわ、皆さんは金剛石を手に入れるためにこのダンジョンに来たのでしょう?
私とエリーのどちらが先に入手出来るかを競いましょう。
私のほうが優秀だと分かっていただけたらタクヤ様も納得していただけると思います」
「いいわね、それ。アンタしつこいから思いっきり叩き潰してやるわ。
負けたら二度とタクヤに近づくんじゃないわよ」
「あの…えぇ…」
トントン拍子に話が決まっていった。
どうやら、ダンジョン最深部の金剛石を巡ってイザベラと勝負するようだ。
エリーとイザベラ以外、話についていけずに呆然としていると話がさらに決まっていく。
「あら?アンタ一人なの?いつもいる取り巻きどもは?
人数差で勝負が決まったあと文句を言われても困るんだけど」
「…彼女達は今回の旅が危険ですので同行を断りましたわ。
でも、そうですわね。この場に六人いらっしゃるので同じ人数で勝負しましょう。
もちろん、私はタクヤ様と一緒のパーティですわ」
「はぁ!ふざけたこと言ってんじゃないわよ。タクヤは私と一緒よ」
「あの、二人とも落ち着いて」
エリーとイザベラは相性が悪いらしく、さっきからずっと喧嘩腰だ。
タクヤを巡って取り合いをして、いつまでも決着がつかないため、最終的にクジで決まった。
メンバー:エリー、タクヤ、アティ
メンバー:イザベラ、クロウ、トム