〜幕間 混沌神〜
今ので何人目の転生者だったかな?
気まぐれに死んだやつの魂を弄ってクリスタリアの世界に送っているから正確な数は覚えていない。
私の世界がつまらなく感じる度に面白くするために転生させている。
ただ、最近やり過ぎてしまったせいで光の神アテナのやつに文句を言われた。
魔族と言う存在を作った時は、自分に信仰心が集まるからどんどんやって世界を混沌に落とし入れてくださいと言っていたのに調子のいい奴だ。
あいつも好みの人間を時々、この世界に招いているから文句を言われても普段は気にしないが、今回は他の守護神にも注意を受けたので少しお休みだ。
まあ、最後に送った奴は中々のクズで世界を混沌とさせてくれそうだったので暫く楽しませてくれそうだ。
問題は奴が外面が良い上に慎重な性格なので、せっかく特典をくれてやったのにあまり人と関わらずにひっそりと生きようとしていたことだ。
なので、特典を少し多めにサービスしてやった代わりに少し細工をした。
1つ目は特典の妖刀は使うたびに自制心のリミッターが外れていき、誰かを傷つけることに抵抗がなくなっていくというもの。
2つ目は昔から権力者同士で醜い取り合いがあり、それが今でも続いている付与スキルを持たせたことである。
スキル1つで戦況どころか、国の経済をもひっくり返してしまう代物なので争いが起きるのは当然である。
周囲にばれてしまえば、平穏な生活など送れないだろう。
ある意味、黒髪なんぞより厄ネタである。
アイテムBoxとエリクサーも付与スキルと扱いは同じだ。
特に心眼スキルなんて極めれば隠し事などできなくなる。
常に権謀術数をしている権力者たちにとっては喉から手が出る位に欲しいものである。
実際にそのスキルを持ったものを手に入れるためだけに戦争を起こしたこともある位だ。
最もそのスキルを持った者は私が送った転生者の一人だ。
あれは面白かった。二つの国が其奴を手に入れるために本当に何でもした。
最終的には戦争になってしまい、そこに運良く災害級の魔物が現れた時など見ものだった。
両国に英雄クラスの者が居たので協力すれば退けるくらいは出来たはずなのに片方の国が襲われた時に好機と見たのか、もう一方の国が追い討ちをかけたのだ。
そして、魔物の標的が変わって立場が逆転した時は復讐のつもりだったのか、襲われていた国も追い討ちをするようになった。
それを繰り返すうちに転生者もろとも二つの国が滅んだ。
最近の転生者は特典の事を深く考えずに手にして不幸になって絶望するのである。
奴も災いが身に降りかかれば、おのずと私好みの面白いことが起きてくれるはず。
あと、アテナの嫌がらせにあいつが召喚した人間に出会えるように因果律を変えて近くに送ってやった。
これで今回の勇者の旅はいつもとは違う結末になってくれるはずであろう。
おかしい…。思っていたよりも面白いイベントが起きていない。
やはり、冒険者を目指していたくせに妖刀を使わなかったのが痛かった。
それのせいで奴は相変わらず内向的で周りを混沌とさせてくれない。
幸い、勇者の旅に同行することになったので厄介事はこれからも起こっていくことだろう。
それに期待して、もう少し観察を続けることにしよう。