〜幕間 勇者〜
僕が異世界に召喚されたのは高校2年の時だった。
委員長の仕事で教室に一人で残っていたら、突然、足元に魔法陣が描かれて凄い光を放ったんだ。
あまりの眩しさに目を瞑っているとすぐ近くで声が聞こえてきた。
目を開けると豪華な服を着た人と甲冑を着た人、ローブを羽織った人達がいて、部屋もさっきまでいた教室ではなく、石造りの部屋だった。
そこでアイリーン姫に会ったんだ。
髪は金髪でピンクのドレスを着ていてとてもきれいな女性で、僕のことを勇者様って呼んできた。
最初は何が起こったのか訳がわからなかったけどアイリーン姫が説明してくれた。
ここはローランド王国で平和な国だったんだけど魔族の侵略を受けていて、自分たちだけでは魔王に勝つことができない。
なので、魔王を討伐してもらうために僕を勇者としてこの世界に召喚したそうだ。
国でもどうしようもならない敵に戦えるか不安だったけど、勇者には魔王や魔族に有効な特殊スキルがあることを教えてもらった。
父親が警察官で困っている人がいたら助けないといけないと教えられてきたので、アイリーン姫のお願いを聞くことにした。
その後、王様との面会を経てこの世界の事やスキルについて学んだ後、紹介状をもらい、王都の近くにあるサリア街に行くことになった。
理由はニつあって、一つはその街の冒険者ギルド長をしているダーフさんに魔物との戦い方を教わるため、もう一つの理由は魔法使いの仲間にするためだ。
サリア街には魔法学園があり、王様からの紹介状でそこの首席を仲間にするためのアポイントをとっていた。
そして、僕は連絡がつくまでの間、実力を上げる為に近くの洞窟にあるゴブリンと戦うことになった。
そこでエリーと出会った。
彼女はゴブリンに囲まれていて助けなきゃと思い飛び込んだ。
街に一緒に戻り、話してみるとエリーは1人で冒険者をしていてすごい魔法使いだった。
彼女が仲間になってくれてとても心強い。
エリーと話していると冒険者カードが光って、魔族が攻めてきたことが分かった。
街を守るために戦いに参加したかったけど、ランクが低くてどうしようかと悩んでいると金髪の男の人が話しかけてきた。
彼はクロウと名乗り、トムさんとアティちゃんの三人でパーティを組んでいるFランクの冒険者達で戦いに参加するために一緒に組まないかと言ってきた。
彼らの提案を受け、僕たちは5人の冒険者パーティとしてダーフさんとヒルクさんにお願いして戦いに参加できる許可をもらった。
街を守るために必死で戦っていると敵の大将(後で四天王のガジルと言うことが分かった)が出てきた。
あいつはとても強くて街を襲う悪い奴なのに、勇者であるはずの僕は歯が立たず、何の役にも立てなかった。
ダーフさん達が戦ってしばらくすると、街の方から煙が上がり、魔物に襲われているという情報が入ってきた。
皆、助けに行きたくてもそちらのほうに手が回らず、ヒルクさんが困っていたので僕が助けに行くと名乗りを上げた。
街には傷ついている人や亡くなっている人がいて、魔族に対する怒りが湧いてきた。
エリーのアドバイスを受けて広場に向かうと魔方陣が輝いていてその中央に全身を甲冑で覆ったオーガが立っていた。
会話をする事ができたので、魔方陣を止めてこれ以上人を傷つけないように言ったが聞いてはくれなかった。
だから、僕は街の人を守るために剣を構えた。
相手は格上だったが、勇者スキルのおかげで何とか勝利することができた。
剣も折れ、正直立っているのがやっとだった時に魔方陣が輝いて、大量の魔物や魔族が出てきた。
僕がなんとかしなきゃと思って頑張ろうとしたけど体が動かず、そんな時にクロウさんにこの場から逃げるように言われた。
クロウさんだけで戦うのは無茶だと思ってその申し出を断ったが、トムさんとアティちゃんに引きずられてしまい、広場にはクロウさん1人になってしまった。
クロウさんが死んでしまうと思ったが、突然、何もない空間から刀が出てきて広場にいた敵を全て彼1人で殺してしまった。
その様子は常軌を逸していて皆、クロウさんに恐怖を抱いていたが僕はそう思えなかった。
彼がもし、殺すことが好きな異常者だったとしたら最初から刀を使っていたと思ったからだ。
きっと今まではトムさんとアティちゃんを強くするためにあえて自分が前に出てなかったんだと思う。
そして今回は、僕を強くするために最後まで力を使わずにいてくれたんだと思う。
それに、クロウさんは刀を使う前に何かを飲んでいた。
何の薬かは分からなかったが、おそらく、彼にとって非常に危険な、もしかしたら命の危機に落ちるようなアイテムじゃないかと思った。
そう思えてしまう位、クロウさんが後方から援護してくれた時と刀を使ったときに違いがあった。
広場のほうは止められたが、南門の方がひどい状況だった。
たくさんの兵士や冒険者が死んでいた。ダーフさんも傷ついていてガンツさんは死んでいた。
その後、体のキズを癒しながら街の復興を手伝っているとダーフさんに呼ばれた。話を聞くと、新しい剣を見つけるためにトート街に向かってほしいと言われた。
エリーやクロウさん達とは今回出来たばっかりのパーティーだっけど一緒に魔王倒さないかとお願いした。
皆、賛成してくれて嬉しかった。エリーは強いし、クロウさん達も何か事情がある様子だったが、この五人ならば魔王を必ず倒すことができると思った。
ひとまず、今の僕は四天王のことを倒せない位弱いと言うことがわかったので勇者として早く強くならなければと思った。