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クズでも異世界に行けば変われますか?  作者: スケさん
四天王
11/26

〜敵の策〜

最初にこちらの陣地に飛び込んできたのはワーウルフだった。

ゴブリン達がそれに続く。


「今だ!弓、魔法部隊、一斉斉射!」

「野郎ども!来るぞ!俺に続け!」


ヒルクが城壁の上にいる後方部隊に指示を出し、ダーフが周りに喝を入れながら数を減らしたワーウルフを殴り飛ばす。

俺達もそれに続く。


「皆、行くよ!」

「ちょっとタクヤ!前に出過ぎよ!」

「やはり、こうなりますか。

二人共、彼らに置いてかれないように追いかけますよ。

アティは撹乱と足止めを優先に。止めは仲間が刺してくれます。

トムは皆のサポートを。乱戦になるのでHP残量には気をつけるようにしなさい」


タクヤは攻撃力が高いのでほぼ一撃で魔物を倒している。

エリーは一人での戦いに慣れているからか、魔物が近くにいても動揺せずに雷魔法で確実に仕留めて行く。

アティはあまり前に出ず、幻惑魔法と投擲スキルを使ってサポートに徹している。

トムは三人の間を駆け回り、盾と挑発スキルを使って仲間が敵に囲まれない様にしている。

そして、俺はその様子を見ながら少し離れた位置で弓と火魔法を駆使して、一度に大量の敵が来ないよう数を減らして行く。


(即席のパーティだったが上手く機能しているな。

タクヤ君が突撃し、他の仲間がサポートをする一点突破型という形になっているが主人公パーティならこんなものだろう。

しかし、このポジションは楽で良いな。

タクヤ君の活躍を観ることが出来つつ、さらに近くにいる冒険者と兵士が俺を守ってくれる。

いやー、予め近くにいる彼らにバレないよう魔物を誘うアイテムを数滴、香水程度に振りかけておいて正解だった。

おかげで襲われるのは彼らで、俺は安全に魔物を仕留めることが出来る。

しかも、彼らはモブキャラなのでやられても心は全く痛まない。

一人だけシューティングゲームをしてるみたいだ。

今のところ順調でこちら側の被害はさほどなく、魔物達に街はまだ侵入されてない。

問題の四天王がまだ戦いに参加してないという条件付きだが…)


「チッ、虫ケラ相手に手間取ってんじゃねえよ」


ガジルが痺れを切らして最前線に出て来た。


「向こうの大将が出て来たぞ!囲んで確実に殺せ!」


ヒルクが指示を出して近くにいた兵士達が囲み始めた。


「ゴミのくせに俺様の周りをウロチョロすんじゃねえ!

《地響き》《剛力》」


ガジルが土魔法で地面を揺らし、体勢を崩した兵士達を持っていた棍棒でなぎ払った。

兵士達はボールのように吹き飛ばされていく。


「歯応えがなさすぎて欠伸が出るぜ」

「《剛拳》《肉体活性化》」「《剛剣》」


ダーフとガンツが隙をついて攻撃する。

しかし、強靭な肉体を持つガジルには大したダメージを与えられなかった。


「コイツはワシとガンツで何とかする!

他の者はヒルクの指示に従い、別の魔物の対処をしろ!」

「へえ、ちったぁ楽しめそうだな。遊んでやるからさっさとかかってこい」


三人の戦いが始まる。

その戦いは凄まじく、タクヤは助けに入ろうとしたが近づくことさえできない状況だった。

レベル差もあり、すぐに片がつくと思われたがダーフとガンツが上手く立ち回っていたこととガジルが本気を出してなかったため、戦闘は膠着状態が続いた。


「あー、いまいちやる気が出ねえな。

やっぱ、虫ケラの死体や断末魔が聞こえてこねぇと盛り上がらねえな。

あいつの策を使うのは気が進まねえがしょうがねぇか」


そう言うとガジルは懐から水晶を取り出して地面に叩きつけた。

水晶が割れるとすぐに街の方から煙が上がり、悲鳴が聞こえてきた。

ヒルクが声を張り上げる。


「何事です!」

「街の中から突然、魔物が大量に出現しました!

魔物達は無差別に建物を壊しながら市民を襲っています!」

「何だと。一体どうやって侵入したんだ。

それにこちらは既に手一杯で援軍なんて出せないぞ」

「ちゃんと発動したな。虫ケラ共の悲鳴が心地いいぜ。

オラオラ、どうすんだ?中には俺様の側近もいるから雑魚じゃ止められないぜ」


ヒルクが頭を悩ませているとタクヤが声をかける。


「ヒルクさん、僕たちに行かせてください。僕なら相手が魔族でも戦えます」

「…。分かりました。絶対に死なないで下さい」


タクヤ達五人は街に向かって走り出した。



街に戻ると魔物が街中を暴れまわっていて悲惨な状況だった。

あちこちから悲鳴が聞こえ、通りには死体が転がっている。

俺達は魔物を倒していくが一向に数が減らない。


「きりがない、どうすれば良いんだ」

「落ち着いて、タクヤ!

さっきからちょっと気になってたんだけど、広場の方から魔力を感じるの。

おそらく転移の魔法陣だと思う。

人や獣人には無理だけど魔族なら可能な筈よ。

もしそうなら、魔法陣を破壊すれば魔物はこれ以上増えない」

「あの…。そっちに魔物の気配、一杯感じるのでエリーさんの言う通りだと思います」

「そうなのか、それじゃあ広場に向かおう!アイツらを止めるんだ!」


広場に着くと魔物がひしめき、魔法陣が輝いていた。

さらに中央にはガジル程ではないが大きくて全身鎧を剣を身につけたオーガがいた。

俺はすかさず心眼スキルを発動する。


ゾラ レベル28

オーガジェネラル 


HP7200/7200

MP600/600


スキル一覧

剣術3

体術2

強化魔法2

土魔法2

威圧1

自然治癒1


特殊スキル

混沌神カオスの加護[魔法の成長促進:小 、MP増:小]


ゾラが話しかけてきた。


「ほう、ここまで辿り着ける者がいたか。

ガジル様が前線にいらっしゃるので、強者など来ないと思っていたぞ」

「今すぐ魔法陣を止めるんだ」

「それは出来んな。もう少しで本隊が転移されてくる。

そうすれば貴様らはお終いだ」

「だったら、その前にお前を倒す!

これ以上街に被害は出させない」


タクヤが啖呵をきると戦いが始まる。

本来であれば、そんなシーンは俺を楽しませるのだがそんな余裕はなかった。


(ぎゃーー、前を見ても後ろを見ても敵だらけ。

囲まれているのでアイツら囮にしても効果が薄い。

かといって逃げ出せば、主人公君に今後助けて貰えなくなるし、その選択肢は死亡フラグにしかならない。

タクヤ君、主人公パワーで早く倒して俺を助けろ)


最近は魔物にも慣れて、出来る冒険者を演じられるようになったクロウだが、それは自分の安全が保障されているという条件付きである。

それがなくなれば、ただのビビリ。

クロウは逃げ惑って魔法と弓を四方八方に撃っている。


注釈:周りからはクロウがタクヤとゾラの一騎打ちをさせる為にわざと派手な立ち回りをして自らを囮にしてるように見られてます。


タクヤはゾラを相手に善戦してるが、完全に力負けしている上、ゾラの硬い守りに阻まれて徐々に追い詰められていく。

他の仲間達も援護しようとするが他の魔物達に阻まれて上手くいかない。

そして、とうとうタクヤは膝をついてしまった。


「なかなかにスリルのある戦いであった。

弱者を駆除するだけのつまらない任務だと思っていたが…。

お前と出会えたことに感謝しよう。

これで終わりだ。《剛力》‼︎」

「負けられない…。皆のためにも負けられないんだ!

《オーバーリミット》《乾坤一擲》‼︎」


ゾラが頭上から剣を振り下ろし、タクヤは特殊スキルと剣術スキルを併用することで、通常では考えられないくらいに攻撃力を倍増させて反撃する。

二人の剣はぶつかり合い、大きい音を立てて折れてしまう。

タクヤは斬られて血が吹き出し、よろめくも無事だ。

ゾラは「見事だ」と呟いた後、下半身と胴体が分かれて倒れ伏す。

それはまさに、主人公が全てを出し切り強敵を倒す胸熱の展開だったが俺はそれをろくに見ることが出来ずに魔物から逃げまくっていた。

他の仲間達はタクヤが生きていることを確認し、残るは魔法陣と魔物の後始末だけだと気を緩めてしまった。

そのタイミングで転移の魔法陣が輝き出す。

エリーが叫ぶ。


「しまった、間に合わない!

敵が転移してくるわよ!気をつけて!」


魔法陣から様々な魔物が出現する。

獣型の魔物、オーガ、アンデット、虫型の魔物、終いには魔族も何体かいた。

皆が疲労困憊で絶望する中、俺は別の理由でパニック状態に陥っていた。

新たな魔物中にはムカデやゴキブリを巨大化させたもの、グロい触手に牙がついたものがいたからだ。


注意力散漫になっている俺の背後からムカデ型の魔物が奇襲をかける。


「危ない!《ライトニング》」


エリーが雷魔法を唱え、直撃した魔物はその躰を四散させる。

魔物に気づき、振り返ったクロウの全身に肉片と体液が降り掛かる。


(ヒィ、ムカデの顔面が迫っ、あれ、消えた。

口になんか入った。体もベトベト…。あれ?これってもしかしてムシノナカミ………)


俺の中で何かが切れた。


「お前ら、失せろ」

「クロウさん、急にどうしたんですか?

大丈夫です、皆で協力すればきっと乗り切れます」

「邪魔だ。トム、アティ、命令だ。連れてけ」


奴隷刻印が発動し、トムとアティが二人を引きずってその場を離れる。

俺はアイテムBOXから刀とアイテムを取り出した。

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