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深海の駅  作者: NiO
深海の駅
9/13

『フィリピン海溝』 -10,057m

 地下10階層に、到達した。


 到達した先には……死体が、あった。


 死体は(・・・)白骨死体ではなく(・・・・・・・・)


 ……肉のついた(・・・・・)ミイラの様な(・・・・・・)死体であった(・・・・・・)


######################


「……んんッ?


 どう言うことだ?」


 俺……贄野(にえの) (こひつじ)は、ミイラの様な死体を前に、しばし立ち止まる。


 先ほど階段を降りながら、予想していた俺の仮説---地下10階で死んだ場合に、白骨化するのではないか、というもの---は、どうやら間違っていたようだ。


 地下10階でも地下5階と同様に、死体は白骨化しない、らしい。


「……こひつじ~?」


 先程まで地下11階へと繋がる『5番』階段を目指して意気揚々と行進していた幼女、ひさげ あかりちゃんは。


 今は不安そうに、『5番』階段の前で首を傾げて俺を見ている。


「……あかりちゃん、ちょっと待ってね」


「え~……もうごーるだよ……はやくかえろ~よ~」


 あかりちゃんは頬っぺたを膨らましてむくれているが、可愛いだけだ。


 幼女の言いたいことも解るが、やはり、ちゃんと違和感を解決しておかないと、いけない気がする。


 別に理由なんてない。


 第六感が、そう言っている、気がしたのだ。


 俺は自分の感じた違和感も含めて、もう一度、ゆっくりと、考えてみることにした。


 この駅には基本的に、死体を土に返す微生物(スカベンジャー)がいないようで、普通に死ぬと、ミイラ化し、半永久的に残るようだ。


 ……じゃあ(・・・)あの1階の(・・・・・)白骨死体は(・・・・・)


 1階で死んだ場合だけ、白骨死体になるのか?


 いや、他の階とほぼ同じ構造をしているわけだし、その可能性は低いだろう。


 ……と言うことは。


 ……地下11階が(・・・・・)何かしら(・・・・)特別なのか(・・・・・)


 地下11階には(・・・・・・)何かしらの(・・・・・)死体を土に返す微生物(スカベンジャー)()いると言うこと(・・・・・・・)なのか(・・・)


 そして白骨化した死体を、何らかの理由で1階に上げている、と。


 なんで、地下11階だけ、白骨化する?


 そして、なんのために1階まで上げるんだ?



 ……おかしなことは、これだけではない。


 白骨死体の多くは、地下10階まで、辿り着いていたと考えて良いだろう。


 つまり、今の俺と同じ状態、だ。


 もはやゴール目前と、言ってもいい。


 ここまで来たならば、例え『円周率』について解らなかったとしても、総当たりで10個の階段を試し、この駅から抜け出すことはなんとか可能だと思われる。


 ……じゃあ(・・・)なんであんなに(・・・・・・・)死んでいるんだ(・・・・・・・)


 もしかして、地下11階だけは、何かしら今までとは別の方法でのクリアが必要なのでは、ないか?


 例えば……そう、例えば。


 今まではあてずっぽうの総当たりで、間違えたとしても1階に戻るだけだった。


 しかし、地下11階だけは、間違えたら即死亡、であるとか。


 そんな、今までと違うルールが存在している、とか、そういうような……そんなこと、あるか?



 ……なんだクソ、全然解らん……。



 頭をガシガシと掻きむしっていると。



 ……いつの間にか、あかりちゃんがいないことに、気が付いた。



「お、おい、あかりちゃん!?」


「こひつじ~、ここだよ~!」



 俺は大急ぎで『5番』の階段に向かうと、幼女は既に階段を半分以上降りて、折り返しのタラップで手を振っていた。



「こひつじおそいから、さきに、おりていっておくね~!」


「ちょ、ちょっと待って、間違った階段を降りたら……!」



 俺の声を聞こえたのか聞こえていないのか、幼女は笑顔で階段を降りていく。


 それから、しばらくして。



「こひつじ~!


 ごーるっぽいよ~!」



 嬉しそうな、幼女の声が、聞こえた。



「え、ゴール!?


 本当?



 どんな感じ?」


「……なんかね~!


 でんしゃがいっぱい!」



 電車がいっぱい、か。


 確かに地下鉄の駅としての、最終ゴールっぽいな。


 俺の考えすぎか?


 あの白骨死体たちは、11階に降りる際、総当たりを試して、『5番』以外を降りてしまい、唐突に始まった『謎の新ルール』のせいで死んでしまった、とか。


 ただそれだけなのではないか?


 今の俺のように、円周率が関係していると分かれば、普通にゴールできるということなのか?


 それに何より、これ以上無駄な思考を続けて、あかりちゃんをよくわからない空間に独りで放置しておくのは、忍びない。


 そう考えて、俺は、5番の階段を降りようとして。



 ……ふと、立ち止まる。




 待てよ?


 この階段が本当に正しいのだとしたら。



 『産医師(3.14)のゴロ合わせを書いた人』は、なんで死んでいたんだ(・・・・・・・・・・)



 俺はゆっくりと、『5番』の下り階段から離れた。


 

 頭の中も、心臓も、激しく警鐘が鳴り響いている。


 

 階段から静かに後退し、地下10階の空間に戻った俺は、考えを整理するため、地下10階の空間を観察することにした。



 地下10階は、中央がちょっとした広場のような空間になっていた。



 テナントはジャズバーの様なオシャレなものが多く、階層としては 全体的に少し薄暗い。



 ここで飲んで、終電で帰る、なんてことも、今度やってみても良いかもしれない。



 ……よし。



 少しだけ気持ちに余裕が出来た気がした。



「こひつじ~?」



 『5番』階段の奥から、幼女の心細そうな声が聞こえる。



 ……まあ、なんだかいろいろ考えてみはしたが。


 結局、よくわからない、という結論で、良いのかもしれない。



 ただ、たまたまではあるが、あかりちゃんが先に進んでくれたことによって、正しいゴールも知ることが出来た。



 もう、それでいいのではないか?



 ……うん、もう、それでいい。



 これ以上は、単なる俺のワガママになる。



「ごめんあかりちゃん、今行くよ~」



 俺は、『5番』の階段へ向かって、歩き出す。


 そしてその時、何気なく視界を階段に移そうとして。


 ようやく、地下10階を示す駅の看板を、初めて確認した。


 ミイラの死体や違和感について考えていたりしたせいで、すっかり忘れていた。


 そう言えば、この看板、いちいち毎回全フロア、律儀に確認していたな。


 今回も、まあ一応、見ておくか。



 俺は、何気なく、看板の流し読みをする。



『 魚 安 駅 ( B10F : マリアナ海溝(・・・・・・) : -10,924m )』



 看板には(・・・・)そう書かれており(・・・・・・・・)




 そして(・・・)その下には(・・・・・)



 誰もが知っている(・・・・・・・・)あの(・・)深海魚の絵が(・・・・・・)描いてあった(・・・・・・)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 有名な深海魚……? ペタンココユビピンノだな! [一言] 今回のニッケルホラーは11回と聞き完尻一気読みしようとおもってました! ……だめだった。 有名な深海魚ときいて「リュウグウ…
[一言] 皆様の予想通りだとやっぱりアレ本体じゃないだろうな
[一言] 深海は獲物が乏しいから…
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