03
第三話 竜のルールと弱っている卵
「子供が弱っていたら卵を捨てる……ですか。竜にそのような習性があったとは驚きです。竜は仲間を大切にする生物と聞いていたので、自分としては、むしろ弱っていたら何とか助けようとするのではと思うのですが?」
「確かに、普通ならそう考えるでしょう。事実、自分も最初はそう思いましたから。しかし……竜は、仲間を大切にする上で、あるルールがあるんです」
「ある、ルールですか?それは一体?」
「竜が大切にするのは、あくまで竜としての強さを兼ね備えているモノだけ、というルールです。つまり、卵であろうと竜としての強さを持っていなければ……竜として、仲間として扱われないのです」
俺が竜のルールを話すと、二人とも目を見開いて、驚いた。
まあ、竜が仲間思いと知ってから、この情報を聞くと驚くよな。どんな竜でも大切にするかと思ったら、強いやつだけなんだから。
でも、竜のルールのような事は自然界ではよくあることだ。
結局のところ、様々な生物が入り乱れている自然界で生き残るためには、強さが必要不可欠。弱いやつは死んでいくしかない。
竜の場合、仲間を強いやつだけにする事で、生き残ってきたわけだ。
そして……この卵が竜の卵であるのなら、弱いものとして捨てられたのだろう。
卵に当てた聴診器からは、弱々しい音しか聞こえてこない。中の赤ん坊が弱っているのは明白。
海岸に打ち上げられていた点や、卵の色合い、中の赤ん坊が弱っていることも加味すると……やっぱりこの卵、水竜の卵だと思うんだけどなぁ?
「いやぁ……驚きました。竜にそのような習性があるとは。鑑定士殿は卵だけでなく生物にも博識なのですね」
「ええ、まぁ。卵を見ただけでなく、卵の場所や時期などによっても、卵が何の生物かを判断することができますから、生物にも詳しくなる必要があるんですよ」
「なるほど」
「しかし……この卵、表面が滑らかなことを除けば、水竜であることは間違いないのですが……」
「てか、表面がちょっと滑らかなだけだろ?水竜で間違いねえんじゃねぇか?」
ううむ……。確かに護衛の人が言う通りかもしれない。
ここまで水竜の特徴があり、竜としての捨てられ方をしている卵が、別の卵である可能性は低い。
しかし、水竜の卵の表面がこんなに滑らかなはずは……うん?あれ?ちょっとここ……白くないか?
卵をよく観察していると、下の方が微かに白色をしていた。
拡大レンズでよく見てみると、水色の部分よりも、更に表面が滑らかになっている。
んん?あれ?これって……あれだよな?あの卵の特徴だよな?てことは……あれか!?もしかしてこの卵、そういう事なのか!?
「もし……そうだとしたら!!凄いぞ!!」
「おい。どうしたんだこいつ?急に卵を睨みつけたと思ったら叫び出したぞ?」
「何かが分かったのでしょう。少し、黙って見てましょう」
なんか二人が喋ってる気がするが、今はそんなのを気にしている場合じゃない!
俺は、近くに置いていた卵図鑑を急いで手に取り、とあるページを開いた。