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第二話 水竜かもしれない卵
「そ、そうか……引き受けてくれるか。ありがとう」
「ええ!もちろんですとも!では早速、卵を確認して見てもいいですか?」
「ああ、よろしく頼むよ」
依頼主の男性から卵を預かり、鑑定を始めるため、目に拡大レンズを装着して、聴診器を首にかける。これで準備はOK。
さて、卵の鑑定を始めるか。
……まあ、鑑定をするまでもなく、この水色の卵……あの卵だと思うんだよな。
海岸に打ち上げられていたって言ってたし、何よりこの特徴的な色合いのタマゴは他には無いはずだし。
まあ、間違いの可能性もあるからしっかりと鑑定するがな。
カウンターに置かれた水色の卵の表面を拡大レンズで見てみる。
ん?……かなり滑らかだな。あの卵ならもう少し表面にざらつきがあると思うのだが……?
念のために、色んな場所の表面を見てみるが、どこも滑らかであり、ざらつきはあまり見られなかった。
「あれ?おかしいな……あの卵じゃないのか?」
「どうかしたのか?」
「ああ、いえ。実は卵を一目見たときから、とある卵じゃないかと予想していたのですが……それと比べると少し、表面が滑らかすぎて……」
「と、なると予想とは別の卵なのでは?」
「その可能性はあります。ただ、この独特の色合いは……どう考えても『水竜』だと……」
「なにぃ!?水竜だと!!それは本当か!?鑑定士!!」
「うわ!びっくりした!!き、急にどうしたんですか?今まで黙っていたのに……?」
卵が水竜ではないかとの予想を話したら、今まで静かに待っていた、護衛と思われる男性が急に大声をあげて、話しかけてきた。
い、いったい何なんだ?
「こら。ウォール。急にそのような大きな声で話すのではありません」
「あ、ああ……すまんラスター様」
「謝るのは僕にじゃなくて、鑑定士の彼にでしょう?」
「ああ!そうだった!いやぁ、すまなかったな鑑定士。めったに姿を見ることのできない竜の……しかも卵かもしれないと言われたら、つい興奮してしまってな……」
「ああ……いえいえ、そういう事なら」
確かに、竜の卵と言われれば興奮するのも分かる。
なにせ、竜は実際に目にする機会がほとんどない生物だ。目にすることが出来たとしても、遠方から空を飛ぶ姿をチラッと見かけるだけだろう。
まして竜の卵なんて、竜の巣で大切に育てられるため、実物を見ることはまず無い。
俺だって、実物は見たことがなく、模型や資料でしか見たことがない。
……これが水竜の卵だったら、初めて実物を見たことになるけどな。
「それにしても……その卵、水竜の卵の可能性があるのですか?海岸に打ち上がっていたんですよ?竜の卵なら、巣で大切にされるはずでは?」
「よくご存知で。確かに竜の卵は、普通であれば巣で大切に育てられます」
「普通であれば……ですか?」
「どういうことだ?サッパリ分からんぞ。」
二人ともどうやら、知らないみたいだ。
俺は、卵に聴診器を当て、卵の中の音を聞きながら、二人に教えた。
「ごく稀ですが、竜がみずから卵を捨てる場合があります。それは……卵の中の子供が、弱っている場合です」