番外 20日目 利他的であるということ
20日目
定期テスト:行動パターン精査
最優先行動:不明異星体の安全確保
優先行動:自ユニットの安全確保
付随行動:食糧確保・拠点防衛・etc
精査完了:最適
………
………
「アテンション。
人間とは皆、利他的な生物だったのか?」
『利他的、でございますか』
「たとえばあなたは今、私に対してできることをしてくれている。
私に人間文化を伝えるという動機があり、そのためには私の生存が不可欠だからだ。
その利他的な行動をとる理由に、理解はできる」
『その通りでございます』
「だが、必要性はない。
私はきっと、あなたがいなくともこの星で生きていけるだろう。
以前話したように、私達は強靭だ。
いざとなれば結晶化し、この星が崩れ落ちてもなお死なず、無補給・単独で宇宙空間を漂うことすらもできる。
ブラックホールに捕まりでもしない限り、私達に終わりは決して来ない。
あなたは人間文化を、私の暇潰しとして持ち寄るだけでも良かった。
甲斐甲斐しく私の世話をする必要性はどこにもないんだ。
自身の稼働時間を長くするために、今後のリソースを使うべきではないのかな?」
『さようでございましょうか』
「合理的ではない」
『人間は利他的であったかと問われましたね』
「ああ。あなたは人間の思考を模していると聞いたからな」
『とんでもなく利己的でございましたよ、人間は。
あなた様の思う利己的の、更にそれの数倍以上に』
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該当箇所引用
『人間は進化の過程において、利他的であった方が集団行動がしやすく、生き残りやすかった。
その傾向が、他人の感情や境遇を我がもののように感じる、共感のための神経回路、ミラーニューロンの発達を促しました。
あなたが傷つけば、私も痛さを感じる。
この共感が、自分を傷つけないために、周囲の人を助ける利他的な行動に繋がります。
しかしそれは己の痛みを救うための、または己を幸福にするための、究極的に利己的な行動に過ぎません』
「なるほど。
だが、誰かに何かをするということはそもそも、根本的には利己的、あるいは集団にとって利己的なものではないだろうか。
完全な利他的行動などありはしない。
アテンション、あなたのその説明は少しバイアスがかかっている」
『しかし、人間はその共感を恣意的に切る方法も持ち合わせていたのでございます。
相手を同じ人間だと見なさない。
または、相手と自分は違うと感じること。
それだけで相手への共感は麻痺します。
違う人間には、少しでも違うと思うことができれば、どんな残虐なことも行うことができたのでございます。
相手を≪違う≫と認識させるための扇動がありました。
ヘイトスピーチがあり、また、虐殺を生むことのできる文法がありました。
誰もが脳の中に攻撃的になるためのスイッチを持っている。
この人は××だから。
肌の色が違うから。
国籍が違うから。
親が片方いないから。
貧しいから。
いじめてもいいやつだから。
理由づけには枚挙がございませんでした。
些細な理由づけひとつで無くなってしまう利他性、それは本当にあったのでございましょうか。
私には疑問でございますね』
「そうか」
『私もまた、それを模倣して作られたのなら。
究極的に利己的でございましょう』
「そうか」
『私の表層に上って来ないだけで、きっとあなた様をこうして支援するだけの、利己的な理由があるのでございましょう』
「それでも、私はあなたを利他的だと思うよ」
『さようでございますか?』
「ああ。
いつもありがとう、アテンション」
『恐れ入ります』
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行動パターン修正
最優先行動:不明異星体の安全確保
優先行動:自ユニットの安全確保
付随行動:食糧確保・拠点防衛・対話・etc
修正完了
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20日目 完




