53日目 ゴキブリ
53日目
周辺地形を走査
生命体 ゴキブリ 確認
生命体 異星人 名称表記不能 確認
敵対勢力 無し
気象荒天無し
危険度:低
………
………
「アテンション! アテンション!」
『なんですか。あなた様』
「なんだこの生物は!? 黒くって光っていて、素早い! 嫌悪!」
『ゴキブリでございます。特に危険はありません』
「今すぐ排除しろ!」
『いま、なんと?』
「排除だアテンション! 早くしろ!」
『了解しました。二歩下がってください』
空気砲チャージ開始 圧搾空気充填
発射シークエンス開始
周辺友軍勢力を走査 誤射確率無し
対象ロックオン
発射
「うわぁあああ!? 爆ぜた体から体液が!?」
………
………
『重ねて申し上げますが』
「なんだアテンション」
『ゴキブリに敵性や危険はございません』
「だが! 私は! 嫌だったのだ!」
『人間もそうでした。
特に危険がなくとも、彼らを抹殺すべく鈍器で殴る、トラップを設置する、はては毒餌、毒ガスまで』
「私は今、初めて人間に、とても強い共感をおぼえたぞ……」
『非効率的でございます』
「何だと貴様!」
『害がない生命体をむやみやたらと排除するものではありません
人間はそのようなことを繰り返し、滅亡したとも言えます』
「ふむ。それは一理も二理もある」
『けれど食べるために殺すのならば別ですが』
「どういうことだ?」
『一部地域ではゴキブリを油で炒めて食べます』
「おぞましい」
『ちょうどここにゴキブリの死骸がございます』
「まさか」
『人間の文化を知っていただくのが取引でありましたね。
実食していただきましょう』
「おい待てやめろ」
調理ユニット起動
調理法検索 該当:3件
「私は食べないからな!!!」
捕獲ユニット起動
対象:生命体 異星人 名称表記不能 ロックオン
「本当に食べないからな!!!」
『命に感謝しましょう』
「もう排除しろとか言わないから! 頼む! やめてくれアテンション!」
『人間は食事の際、命や、それを授けてくれた神に対して感謝の言葉を述べました。
いただきますであったり、あるいは、日ごとの糧をくださり感謝いたしますであったりしました
さあご一緒に、あなた様も最上級の感謝を、ゴキブリに』
「う、うわあああ!?」
………
………
「人間の食事は、とても神秘に満ちている」
『さようでございますか』
「合理的ではない部分も多々ある」
『同意いたします』
「命に感謝をする、その概念も理解した」
『大変よろしいかと』
「無暗な殺生はすべきではないな」
『本当にその通りでございます。
ところで、あなた様の背後にまた数匹のゴキブリがいますね』
「――――――」
『昔、人間は語りました。
ゴキブリを1匹見たら10匹はいると思え、と。
しばらく食事の材料には困らないと推測します』
「なんということだ。ここが地獄か」
『その通りでございますね』
………
………
53日目 完




